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2026.10.02

あいさつ

大澤賢悟です。

次男と八ヶ岳の本沢温泉にある「雲上の湯」に入ってきました。硫黄岳直下、標高2,150mにある日本最高所の野天風呂で、泉質は酸性・含硫黄・カルシウム・マグネシウム-硫酸塩温泉。白く濁った硫黄の香りがする、いかにも山の温泉というお湯です。本沢温泉湯船からは硫黄岳の荒々しい山肌が目の前に見え、開放感は抜群です。温泉につかりながら、私はお酒、次男はラムネで乾杯。山の中まで歩いてきたからこそ味わえる、かなり贅沢な時間でした。一つ注意したいのが、野天風呂には脱衣所がないことです。着替える場所もほぼありません。テント泊なら、あらかじめテントで着替えてから向かうなど準備しておいた方が安心です。景色も温泉も含めて、一度は入ってみる価値のある野天風呂でした。

 

 

2026年10月から何が変わる?小さな会社の社長が知っておきたい制度改正5選

2026年10月から、企業経営に関係する制度がいくつも変わります。特に従業員数10人程度までの小さな会社でも関係するものを確認しておきましょう。

まず影響が大きいのが最低賃金の引上げです。全国加重平均は1,177円となり、愛知県では10月1日から1,140円から1,195円へ55円引き上げられます。パート・アルバイトを雇用している会社は、時給だけでなく月給者についても最低賃金を下回っていないか確認が必要です。

次に、パート・有期契約社員についての「同一労働同一賃金」のルールが明確化されます。賞与、退職金、家族手当、住宅手当、休暇などについて正社員との待遇差をより慎重に検討する必要があります。特に、継続勤務が見込まれるパート従業員について、家族手当などを正社員だけに支給している会社は要確認です。また、採用時には「正社員との待遇差について説明を求めることができる」ことの明示も必要になります。

さらに、カスタマーハラスメント対策がすべての事業主に義務化されます。「うちは5人しかいないから関係ない」という制度ではありません。顧客から従業員への暴言や過度な要求などについて、会社としての方針、相談窓口、対応方法などを決めておく必要があります。採用活動中の求職者へのセクハラ対策も同時に義務化されます。

社会保険では、いわゆる「106万円の壁」の賃金要件が撤廃されます。ただし、ここは注意が必要です。従業員50人以下の会社に10月から直ちに社会保険加入が拡大するわけではありません。企業規模要件は2027年10月から段階的に縮小され、従業員10人以下の企業まで対象となるのは2035年10月です。将来的には「週20時間以上働くパートは社会保険加入」という方向に進むため、小規模企業も今から人件費への影響を考えておくべきでしょう。

もう一つ経営上無視できないのが仕入価格の上昇です。帝国データバンクによると10月の飲食料品値上げは3,153品目、平均値上げ率は約10%。原材料、人件費、物流費、円安などが要因です。酒税も改正され、ビール系飲料の税率は350mlあたり54.25円に統一されます。飲食・小売業だけでなく、取引先から値上げを求められる会社も増えるでしょう。

今回の制度変更を見ると、「人を雇うコスト」と「物を仕入れるコスト」が同時に上がる流れが続いています。小さな会社ほど、単純に利益を削って吸収するのではなく、給与体系の確認、業務効率化、価格改定まで含めて考えることが重要になっています。

 

 

消費税1%で何が変わる?小さな会社が知っておきたい3税率への対応

政府は9月15日、飲食料品の消費税率を現在の8%から1%へ引き下げる方針を閣議決定しました。法案は10月の臨時国会に提出される予定で、成立すれば2027年4月1日から2年間の時限措置となります。対象となるのは、現在の軽減税率の対象となっている飲食料品です。

今回の改正で注意したいのは、消費税率が単純に「8%から1%になる」わけではないことです。現在、軽減税率8%の対象には、酒類や外食を除く飲食料品のほか、一定の定期購読新聞があります。このうち1%になるのは飲食料品で、新聞については8%が残る予定です。そのため、制度が予定どおり実施されれば、消費税は1%、8%、10%の3つの税率が存在することになります。

例えば、スーパーで購入する食品やノンアルコールビールは1%となる一方、酒類や外食、医薬品などは10%のままです。また、一定の定期購読新聞は8%が残ります。さらに同じような商品でも、食品に分類されるエナジードリンクは1%、医薬部外品に分類される栄養ドリンクは10%となるなど、商品区分によって税率に大きな差が出ることになります。現在でも8%と10%の区分がありますが、今後は1%と10%で9ポイントの差が生じるため、商品によっては税込価格にもかなり大きな差が出てきます。医薬品や医薬部外品は、現行制度でも軽減税率の対象となる「食品」には含まれていません。

小さな会社にとって問題になるのは、税率が下がることよりも、経理処理が複雑になることかもしれません。小売業や飲食店では、レジや販売管理システムの商品マスターを1%、8%、10%に対応させる必要があります。会計処理についても、売上と仕入れを税率ごとに区分して消費税額を計算する必要があります。

特に飲食店では、同じ料理でもテイクアウトであれば飲食料品として1%、店内で飲食すれば外食として10%となることが想定されます。現在も8%と10%の違いはありますが、その差が9ポイントまで広がるため、税込価格を同じにするのか、税率に合わせて価格を変えるのかという判断も必要になります。

また、食品を販売していない会社でも無関係ではありません。会社で購入する飲料、菓子、贈答品、新聞などについて、1%、8%、10%を区分して経理する場面が出てきます。経理担当者にとっては、現在よりも税率判定が一段複雑になります。

さらに今回の1%税率は2年間限定です。予定どおりであれば2027年4月にシステムを変更し、2029年4月には再び変更することになります。零細企業にとっては、制度変更そのものより、レジや会計ソフト、請求書、価格表示などを短期間で何度も変更する負担の方が大きい場合もあります。

まだ法案成立前ですが、飲食料品を扱う会社では、成立してから慌てるのではなく、自社のレジや販売管理ソフトが3税率に対応できるかを確認しておいた方がよいでしょう。今回の改正は、単なる「食品の消費税減税」ではなく、実務上は1%・8%・10%という3税率への対応が必要になる改正と考えておいた方がよさそうです。

 

 

中小企業でもAIへの関心はかなり高まっています。中小企業実態調査では、AI活用への理解は進んでいる一方、実際に業務で使っている会社はまだ4割弱でした。AIは勉強してから使うものではなく、まず議事録作成、文章作成、資料整理、メール文案の作成など、一つの仕事を任せてみるのが一番早いと思います。特に小さな会社では、採用が難しく人件費も上がっているため、「人を増やす」以外の方法で仕事を回すことが重要になっています。

弊社でもAIを活用した業務改善を進めていますが、今後は東京での研修で得た知識も参考にしながら、さらに改善を強化しています。来月号では、弊社で実際にどのようにAIを利用しているかをご紹介します。

 

 

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2026.09.04

あいさつ

大澤賢悟です。

次男の「末娘と山へ行きたい!」という声で、3人で木曽駒ヶ岳へ行ってきました。

木曽駒ヶ岳はアルプスの景観を楽しめる一方、比較的初心者でも挑戦しやすい山です。

末娘のペースに合わせて休みながら登りましたが、思った以上に頑張ってくれ、無事に山頂へ。途中では雷鳥の群れやヒナにも出会え、鳥好きの末娘も大喜びでした。

下山では足の痛みと疲れが出ましたが、宝剣山荘のソフトクリームを目標に最後まで頑張って歩き切りました。最終的には「また違う山へ行きたい」と言ってくれて一安心。次男も妹が山を嫌いにならないよう声をかけ続けており、その姿に成長を感じました。家族それぞれにとって、思い出に残る登山になりました。.

 

マーケティングは、まずは30点で良いので始めることが大事

多くの中小企業では、広告やマーケティングがほとんど行われていません。本来であれば、ターゲットを明確にし、コンテンツを作り、SNSや広告を活用し、効果測定をしながら改善するような「80点のマーケティング」ができれば理想です。しかし、中小企業では時間もお金も人も限られています。そのため、きちんと取り組もうとすると負担が大きく、「そこまでできないから何もしない」という状態になりがちです。80点を目指した結果、実際には0点のままという会社も少なくありません。

そこで重要なのが、「まずAIを使って0点を30点にする」という考え方です。当事務所でもXへの毎日の投稿を自動化しました。AIに投稿記事を作成させ、人間が内容をチェックし、承認したものを決められた時間に自動投稿しています。ゼロから毎日文章を考えて投稿する方法と比べると、作業時間は約95%削減できました。もちろん、これだけで80点のマーケティングになるわけではありません。しかし、何も発信していない0点と、毎日継続して情報発信している30点には大きな差があります。

AIの価値は、いきなり高度なマーケティングを実現することではなく、これまでコストの問題でできなかったことを、低コストで継続できるようにすることにあります。中小企業のAI活用は、まず「0点を30点にする」ところから始めるのが現実的ではないでしょうか。

 

 

生活道路は時速30キロへ!夜中の山道も対象に?

2026年9月1日から、生活道路における自動車の法定速度が、これまでの時速60キロから30キロへ引き下げられます。対象となるのは、主に中央線や車両通行帯がない一般道路です。一方、中央線がある道路などは原則60キロのままで、速度標識がある場合には、その指定速度が優先されます。

住宅街の狭い道では、歩行者や自転車との事故を防ぐ意味でも納得しやすい改正です。ただし、「生活道路」という名前とは裏腹に、条件に該当すれば中央線のない山道なども30キロ規制の対象になり得ます。夜中、民家もない真っ暗な山道を30キロで走る場面も出てくるかもしれません。そこで突然、道路脇を歩いている人を見つけたら――熊が出るより怖いかもしれませんが…。

 

 

KSK2稼働で中小企業の税務調査はどう変わるのか

2026年9月24日、国税庁の新しい基幹システム「KSK2(国税総合管理システム2)」が稼働する予定です。中小企業にとって、「税務署のシステムが新しくなるだけ」と考えるのは少し危険です。KSK2の導入によって、今後の税務調査では、申告内容の不自然な点や数字の食い違いが、これまで以上に把握されやすくなる可能性があります。

現在利用されているKSKは、法人税や消費税などの申告内容、納税状況、各種資料情報を国税当局が管理し、税務調査や滞納整理などに利用するためのシステムです。さらにAIやデータ分析も利用し、申告漏れの可能性が高い納税者を効率的に抽出する取組みを進めています。つまり、税務調査はすでに「たまたま選ばれる」というものではなくなりつつあります。国税当局が保有するさまざまな情報を比較し、その中から調査の必要性が高い会社を選ぶ方向へ変化しています。

KSK2では、この流れがさらに進みます。大きな特徴の一つが、これまで税目ごとに分かれていたデータベースやシステムを統合していくことです。法人税だけ、消費税だけを見るのではなく、さまざまな情報を横断的に利用しやすい仕組みになります。中小企業で特に注意したいのは、申告書同士の「つじつま」です。例えば、法人税申告書の売上高と消費税申告書の数字、給与や外注費と源泉所得税・法定調書の内容、会社から社長や親族への資金移動など、一つひとつを見れば目立たなくても、複数の情報を突き合わせることで不自然さが見えてくることがあります。

これまでは税務調査に入られなかったから問題ない、という考え方も通用しにくくなるでしょう。KSK2の目的は単純に調査件数を増やすことではありません。むしろ、調査すべき会社をより効率的に絞り込み、問題がありそうな案件へ人員を集中させる方向と考えられます。その結果、中小企業から見れば、税務調査は「来る会社には、より理由があって来る」時代になっていきます。いったん調査対象になれば、最初から確認したいポイントをある程度絞ったうえで調査が行われるケースも増えていく可能性があります。だからこそ重要なのは、税務調査が来てから説明を考えるのではなく、申告する段階で「なぜこの処理をしたのか」を説明できる状態にしておくことです。特に、役員への貸付金や仮払金、会社と社長個人との取引、親族への給与、外注費、多額の経費、資産売買、消費税の特殊な処理などは、後から説明を求められやすい項目です。判断が難しい処理について「去年も同じだったから」「他社もやっているから」と安易に処理するのは危険です。

KSK2の稼働によって、税務署が突然すべてを把握できるようになるわけではありません。しかし、税務行政がデータを使って「怪しいところを探す力」を高めていることは間違いありません。これからは、正しく申告するだけでなく、その申告内容を資料と根拠を示して説明できることが重要になります。少しでも判断に迷う取引や金額の大きな取引については、申告後に問題になる前に税理士などの専門家へ確認しておくことをおすすめします。「今まで何も言われなかったから大丈夫」という考え方が、これからの税務調査では最も危険なのかもしれません。

 

 

今年は台風が多いと感じます。気象庁によると、8月末時点ですでに23個が発生。さらに台風15号は、1951年の統計開始以来初めて茨城県に上陸し、その後は東から西へ進むという珍しい動きを見せました。

背景の一つとして考えられるのがエルニーニョ現象です。エルニーニョ時は台風の発生位置が南東へずれ、寿命も長くなる傾向があります。ただし、個々の進路は高気圧や上空の風などにも左右されるため、すべてをエルニーニョだけで説明することはできません。

最近は、これまで「異常」と呼ばれていた気象が珍しくなくなりつつあります。過去の常識だけで判断せず、台風や大雨、猛暑などに普段から備えておくことが、これまで以上に大切になりそうです。

 

 

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2026.08.03

『フィジカルAIの衝撃』

田中道昭(著)

朝日新聞出版(2026/5/20) 1,980円

 

【感想】

日本工業大学大学院技術経営研究科教授。シカゴ大学ブース・スクール・オブ・ビジネスMBA。企業戦略・マーケティング戦略、ミッション・マネジメント、リーダーシップを専門とし、大学での研究・教育に加え、上場企業の取締役や経営コンサルタントとしても活動。金融機関での実務経験を経て、デジタルプラットフォームやGAFA研究にも取り組み、学会での基調講演や論文発表を多数行う。テレビ東京「WBS」コメンテーター、公正取引委員会関連委員などを歴任。著書に『GAFA×BATH』『2025年のデジタル資本主義』『「ミッション」は武器になる』ほか多数。そんな著者がイメージした近未来のフィジカルAIの姿です。

フィジカルAIとは何かと聞かれたら、多くの人は「AIで動くロボット」を思い浮かべるのではないでしょうか。私もそのような認識を持っていました。しかし、本書ではそれはフィジカルAIの一部に過ぎないと説明されています。

本書でいうフィジカルAIとは、ロボットそのものではなく、「空間」をAIの観察・最適化の対象とする考え方です。現実世界をデジタル空間上に再現したデジタルツインを構築し、その中で膨大なシミュレーションを繰り返すことで、工場や倉庫、街などの空間全体を最適化していきます。つまり、AIが最適化する対象は機械ではなく、その機械が動く環境そのものという点が従来のイメージとは大きく異なります。

この考え方を理解すると、フィジカルAIの本質は「ロボットの進化」ではなく、「対象となる空間をデータ化し、最適化する技術」であることが分かります。今後は製造業や物流だけでなく、建設、医療、オフィスなど、あらゆる現場で活用が進む可能性があります。フィジカルAIをロボット技術として捉えている人ほど、新たな視点を得られる一冊だと感じました。

 

【以下、引用】

フィジカルAIの本質が「現場を学習し続ける場所に変えること」にある以上、その変化が向上や物流だけにとどまる理由はない。むしろ、工場や物流で確立された構造は、そのままの形で、より身近で、より複雑な現場へと拡張していく。店舗、オフィス、医療や介護、そして私たちの自宅。人が集い、動き、判断し、生活を営む場所である限り、その空間はすべてフィジカルAIの射程に入る。

…

フィジカルAIとは、「現実世界の現場を、学習し続け、改善し続ける場所に変える仕組み」である。この定義の中で、最も重要なのは「AI」ではない。「現場」という言葉である。・・・現場で起きている出来事そのものがデータとして蓄積され、その因果関係が時間をかけて学習され、次の改善として現場に戻ってくる。…フィジカルAIとは、学習が起きる構造が現場に組み込まれることによって、現場そのものの性質が変わっていく現象だと捉えるべきだろう。AIは主役ではない。主役はあくまで現場であり、AIはその現場が学び続けるための仕組みとして存在しているに過ぎない。この点を誤解すると、フィジカルAIはすぐに「ロボットの話」や「自動化技術の話」に回収されてしまう。確かに、ヒューマノイドやAGV、デジタルツインといった技術は、フィジカルAIを構成する重要な要素である。しかし、それらはすべて手段であって、目的ではない。ロボットは現場で判断を実行するための体であり、…デジタルツインは試行錯誤を行うための場に過ぎない。

 

※ブックレビューは、2026年8月号をもちまして終了いたします。

 

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2026.08.03

あいさつ

大澤賢悟です。

富士山が7月1日開山しました。今年も観光客でごった返しそうです。しばらく話題に

なっていた「閉山期間中の登山禁止」の議論も、とりあえず一休みになったようです。

私は前々から冬の富士山に登りたかったので、この話題が出始めた2025年1月1日に

登ってきました。勘違いされがちですが、閉山期間は登山禁止期間ではありません。あくまで山小屋等が閉まる期間です。環境省、山梨県、静岡県により構成された富士山オフィシャルサイトでも、閉山期間中は「登ってはいけない」ではなく、必要な要件を守って登ってください、とされています。かなり雑に言えば、「素人はやめてください」という話です。

個人的には救助費用の有料化には賛成です。ただし、救助費用を有料化するのであれば、徴収・回収・現場判断まで含めて制度設計すべきです。取りやすい人からだけ取って、支払わない人や外国人観光客は逃げ得になるのであれば、それは制度というより「お金を取りやすいところから取っているだけ」に見えてしまいます。制度を作るなら、取れる人から取る仕組みではなく、逃げ得を許さない仕組みにしていただきたいです。

 

 

電子帳簿保存法は緩和された。だからこそ、電子データの保存義務はますます高まった

電子帳簿保存法というと、「すべての電子データをダウンロードして保存しなければならない」「ファイル名は日付・金額・取引先を入れないと違法」といった話を耳にすることがあります。しかし、令和6年以降の国税庁Q&Aを見ると、実際の運用はかなり整理されています。

例えば、AmazonなどのECサイトでは、保存期間中いつでも領収書等を確認できる状態であり、電子帳簿保存法の要件を満たしていれば、必ずしもダウンロードして保存する必要はありません。また、ETC利用証明書についても、すべての利用分を取得・保存する必要はなく、取得した利用証明書のみが保存対象となります。売上高5,000万円以下の事業者では、検索機能の要件も大幅に緩和されており、以前ほど複雑な運用は求められていません。

一方で、誤解してはいけないのは、「電子データの保存義務がなくなった」ということでは決してないという点です。上記のように要件は緩和されましたが、電子取引データを会社が適切に保存するという基本は、まったく変わっていません。税務行政は今後もデジタル化を強力に推進していく方針であり、電子帳簿保存法への対応は、これからの標準的な経理事務になります。制度開始からすでに相当の期間が経過しており、「まだ対応できていない」「私は知らない」という理由が通用する時代ではなく、むしろ保存義務は強くなりました。

特に重要なのは、原始記録となる電子データを会社で適切に保存しておくことです。税務調査では、会社で管理しているシステムやクラウドサービス等に保存された電子データの提示を求められます。原始記録が保存されていなければ、「資料が存在しない」と判断される可能性もあります。また、会計事務所に資料を渡すだけで、電子データを会社で自主的に保存・管理していない等、会社の意思が不十分であることが調査の際に露見すると、その保存状況や関連する取引について、調査官がそこが盲点だと考え、より厳しい指摘を受ける可能性が高くなります。

税理士へお渡しいただくデータは、会計帳簿や申告書を作成するための資料であり、会社が保存すべき原始記録そのものをお預かりして管理するものではありません。税務調査への対応は、会社が主体となって、自社で管理するシステムやクラウドサービス等に原始記録を適切に保存しておくことが原則となります。電子帳簿保存法は以前より運用しやすくなっていますが、だからこそ「原始記録を確実に保存する」という基本だけは、各会社が責任を持って実践しなさいという国税庁からの意思表示です。会計事務所に資料を送っていれば大丈夫という安易な考えは非常に危険です。ご注意ください。

 

 

A5和牛の供給過多に見る、「価値」の賞味期限

和牛の最高ランクとされるA5が増えすぎています。以前はA5であること自体に高い価値がありましたが、生産技術の向上や品種改良によってA5を作る参入障壁が下がれば、当然その価値も下がります。実際、A5の出荷比率は8割近くまで上がり、A4との価格差も縮小しています。

ここで重要なのは、「価値が高い」という基準は固定ではないということです。顧客ニーズや市場環境が変われば、求められる商品も変わります。物価高で消費者や飲食店が価格を重視するなら、脂の多いA5よりも、A4の方がコスパが良いと評価される可能性があります。

むしろ、この事例では、あえて価値が低いとされてきたA4を低コストで安定的に作る方法を考えてもよいと思います。さらに言えば、A3を低コストで作り、「脂が少なくヘルシーな和牛」として売り出す方法もあります。ちなみにA5のAは肉がよく取れる歩留まり、5は脂肪の入り具合などの肉質評価であり、A5だから必ず美味しいというわけではないようです。

 

 

「暗号資産=危ない」で止まっていると、経営判断が遅れます

先日、丸井が若者向けに暗号資産を活用し始めたという記事を紹介しましたが、今回のステーブルコインの記事は、より法人向けの実務に近い話だと思います。ステーブルコインとは、ドルや円などの法定通貨に価値が連動するように設計された暗号資産の一種です。価格変動が大きいビットコインなどとは異なり、決済や送金に使いやすい特徴があります。

米サークルと野村HDは、日本企業向けに外貨の即時決済を始めるとのことです。これまで大規模な為替取引には半日程度かかる場合がありましたが、ステーブルコインを使えば瞬時に外貨へ替え、送金や投資に使える可能性があります。

法人にとって大きいのは、スピードだけではなく手数料や待機資金の削減です。海外送金が必要な企業や、外貨決済が多い事業者には非常に相性がよい仕組みです。消費者としては、普及してから後追いで使えば十分かもしれません。しかし、経営者としては違います。金融・決済・海外取引のコスト構造が変わる可能性がある以上、最低限ウォッチしておく必要がある分野だと思います。

 

「バイトで乙ですね」が煽りに聞こえた話

源泉所得税の話をしていたときのことです。アルバイトとして働いている人について、何気なく「○○さん、バイトなので乙ですね」と説明しました。

ここでいう「乙」とは、源泉徴収税額表の乙欄のことです。扶養控除等申告書を提出している主な勤務先以外から給与を受け取る場合などに使われます。

その人との話が終わった直後、近くで聞いていた人から「なんでそんなに煽っているの?」と横から言われました。意味が分からず聞き返すと、「乙」がネットスラングの「お疲れ」「残念だったね」という表現に聞こえたとのこと。

税務では当たり前の言葉でも、一般の人には別の意味に聞こえる。専門用語には説明が必要だと感じた出来事でした。

 

 

今年の夏は暑すぎますね。気温がいきなり40度を超えたため、最高気温が33度程度と聞くと、涼しく感じてしまいます。暑さに負けず、夏を最後まで元気に乗り切りたいものです。

 

 

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2026.07.01

『宗教は地理から学べ』

宮路秀作(著)

SBクリエイティブ(2025/3/27) 1,870円

 

【感想】

著者は代々木ゼミナールで地理講座を担当する名物講師です。「なぜそうなるのか」を読み解く独自の授業で高い支持を集めています。日本地理学会企画専門委員会委員。著書に『経済は地理から学べ!』『現代世界は地理から学べ』『宗教は地理から学べ』など多数。単著25冊、累計発行部数31万部超。2017年度日本地理学会賞(社会貢献部門)受賞。Yahoo!ニュースオーサーとしても活動し、地理学の視点から国際情勢や経済をわかりやすく解説しています。本書はそんな著者が2025年に地理の視点から宗教にフォーカスを当てた書籍です。

近年、地政学という言葉を耳にする機会が増えました。政治や経済が地理の影響を受けるのは当然ですが、本書を読むと、宗教もまた地理的条件に大きく左右されてきたことが分かります。

例えば、過酷な砂漠地帯だからこそ唯一絶対の神を求める一神教(ユダヤ教・キリスト教・イスラム教)が発達したという見方や、生き物にあふれた地域だからこそ輪廻転生の思想(ヒンドゥー教・仏教)が生まれたという考え方は非常に興味深いものでした。もちろん、その後の宗教の発展には地理だけでなく政治的要因も大きく関わっています。しかし、「なぜその地域でその宗教が広まったのか」という視点を持つことで、歴史や国際情勢の見え方は大きく変わります。

現在の中東情勢を見ても、宗教的背景を理解せずに本質を捉えることは難しいでしょう。その意味で本書は、世界の主要な宗教を地理という切り口から俯瞰し、地理・歴史・政治を結び付けて考えるための優れた入門書だと感じました。

宗教の解説書というよりも、世界情勢や国際政治を理解するための教養書として読む価値のある一冊です。今後の世界経済やビジネス環境を考えるうえでも、宗教と地理の関係を知っておく意義は大きいと思います。

 

【以下、引用】

現代では、宗教法人である神社本庁が全国の神社を管理しています。各都道府県には神社庁が置かれ、神社庁単位でYoutubeチャンネルを開設するなど、意外と「ナウい」運営がされています。

信仰を深めるかどうかは各自が選ぶことですが、日本の分化を理解するために、神道を学ぶことは不可欠であるように思えます。…「信仰していないけど神頼みする」というのも良いですが、漫画「シャーマンキング」(武井宏之著)に出てくる主人公の、「神頼みじゃなくて、自分に誓いを立てること」という初詣に対する考え方が粋な現実解に思えます。

初めのほうは血縁がつながっているかボヤっとしているとはいえ、今上天皇で126代という、人間の寿命では気が遠くなるくらい永い年月をかけて、先人たちが神道という日本の文化的な遺産を守ってきました。

これをもって「愛国心がどうの」というつもりはありませんが、タイムマシンで歴史を改ざんするくらいでないと他の国が真似できない天皇という存在と皇室制度が、日本ではいまだに続いています。少なくともこれは日本固有の価値であり、強みであると思います。ビジネス用語で表現するなら、これは明らかに日本のコアコンピタンスの一つです。この価値を理解して将来の日本へつないでいくことは、昨今叫ばれるグローバル社会の中で、日本の生存戦略の一つとしてかなり有望ではないでしょうか。

 

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