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ブログBlog

2025.03.01

『メタバースは死んだのか?』

今井翔太

徳間書店 (2024/11/29) 1,760円

 

【感想】

著者は、2014年、Epic Games Japanに入社し、Unreal Engineのエヴァンジェリストとして活動。さらにゲーム「Fortnite(フォートナイト)」のコミュニティマーケティングも担当。ゲーム系インフルエンサーたちからの信頼が厚く「エピック今井」の名で親しまれた。現在は株式会社UP HASH代表取締役。様々な企業のエヴァンジェリストとして活動中。メタバース黎明期からメタバース業界に携わるエンジニアとしての視点からメタバースについて書かれた一冊です。

最も成功しているメタバースの一つであるフォートナイトのエヴァンジェリストが、「メタバースは技術的な空間ではなく、人と人の心が通じ合う空間である」という視点を持っているのが興味深い。確かに、3D技術や仮想空間、NFTなどは手段であり、それ自体を活用することが目的なのではなく、それを使って何をするかが重要です。現在のWeb2.0環境がSNSを中心に回っているのは、文字通り「ソーシャル」だから。LINEのように現実世界の人間関係をインターネット上に投影した濃密なつながりもあれば、Xのように非常にライトな関係も存在します。その中で、さまざまなグループが生まれ、ユーザーは出入りを繰り返す。使い方は人それぞれだけど、目的は何らかの形で他者とつながることです。この視点から見ると、SNSも一種のライトなメタバースと捉えることができます。では、そこに新しい技術を投入することで、どのような人間関係が生まれるのか?また、AIが加わることで、疑似的な人間関係がどのように形成されるのか?こうした点に、新たなビジネスチャンスが潜んでいそうです。本書は、技術主導になりがちなメタバースの議論に、新しい視点を加えています。

 

【以下、引用】

メタバースの本質は「人と人との心が通じ合う空間」だ。重要なのは技術そのものではなく、コミュニケーションを取り合うことで生まれる人と人のつながりである。

メタバースはオンライン上の仮想空間だ。だから国境を越えて、いつでもだれでも入ることができる。となると、民族、言語、文化に関係なく、共通の興味や目的を持つ人々で新たなコミュニティが作られていく。つまりメタバースはゲームにかぎらず、ビジネス、教育、そのほかさまざまな社会活動に空前の変革をもたらす可能性があるわけだ。私たちのあらたな生活空間を切り開く決定的なテクノロジーだと言える。

VRデバイスがなければメタバースは成立しないのかと言えば、そんなことはない。NFTも同じだ。…VRやNFT関連のビジネスで利益を上げたい人たちがメタバースという言葉を濫用した結果、それらがメタバースに必須であるかのような印象になってしまった。それはメタバースの本質ではない。大きな誤解を招いているのである。

現実と違う世界に没入できて、その世界に不特定多数が参加できるコミュニケーション機能があるのなら、それはメタバースと言っていい。

 

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2025.02.01

『生成AI時代の「超」仕事術大全』

保科学世, アクセンチュアAIセンター

東洋経済新報社 (2023/11/1) 1,980円

 

 

【感想】

著者は、アクセンチュアにてAI・アナリティクス部門の日本統括、およびデジタル変革の知見や技術を結集した拠点「アクセンチュア・イノベーション・ハブ東京」の共同統括を務める。AI HUBプラットフォームや、業務領域ごとに体系化したAIサービス群「AI POWERED サービス」、需要予測・在庫補充最適化サービスなどの開発を手がけるとともに、アナリティクスやAI技術を活用した業務改革を数多く実現。厚生労働省保健医療分野AI開発加速コンソーシアム構成員などを歴任。一般社団法人サーキュラーエコノミー推進機構理事。大局的な将来のAI時代を予測する一冊です。

アクセンチュアの分析によると、全労働時間の40%がLLM(大規模言語モデル)の影響を大きく受けるとされています。業種による違いはありますが、事務作業においては63%が強い影響を受け、さらに小さな影響を含めるとその割合は77%に達します。一方で、法務では強い影響を受ける割合は44%にとどまるものの、小さな影響を含めると100%に及びます。このように、LLMだけでも影響の範囲は少なくありません。さらに、その他のAI技術が加われば、影響の範囲はさらに広がるでしょう。また、近年ではAIが物理的な環境とのインターフェース(例えばロボットアーム)を持つようになり、AIが業務に与える影響は想定以上に広がる可能性があります。こうした背景を踏まえると、AIを業務に取り込むだけでなく、AIと対立するのではなく活用する新たなビジネスモデルへの変革が必要です。それは未来の課題ではなく、まさに今取り組むべき重要な課題であると感じられます。

 

【以下、引用】

MELDASフレームワーク

マインドセット:従来とは根本的に異なるアプローチを考え、あるべき業務プロセスを想像する

エクスペリメント:従来通りの業務プロセスだと生成AIによる効果の果実を最大限に得ることができない

リーダーシップ:人間とAIの協働を促進し、AIの責任ある使用にコミットする

データ:最新の注意を払ってデータを取り扱う

スキル:人間とAIが融合するスキルを開発する

ホワイトカラーの仕事はデスクワークからフィールドワークにシフトするだろう。調査やレポート作成といったデスクワークは、生成AIの力を借りてできるだけ効率化し最小限にし、それよりは現場に出て課題を五感で拾うべきである。世の中のトレンドや社会課題に対するアンテナの高さ、精度の高い五感センサーとしての洞察力や、討議や周知のためのコミュニケーション能力、人を動かすリーダーシップ、物事を動かす情熱、最終判断・意思決定に必要となる倫理性、それらは人間しか持っていないものであり、そういったことにより多くの時間を費やす。課題を設定するのは人である。そして、生成AIと共同して“知”の融合・開発が起こることにより、高い生産性・創造性で様々な社会課題を解決していけるだろう。

 

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2025.01.06

『知らないと恥をかく 世界の大問題1~15』

池上彰

角川新書(2009/11/1~2024/6/10:続刊予定) 1,056円(第15巻)

 

2025年の新たな時代を迎えるにあたって

2024年を終え、世界では様々な問題が続いています。来年2025年にはアメリカでドナルド・トランプ氏が再び大統領に就任する予定となっており、これが世界情勢にどのような影響を及ぼすのか、多くの注目を集めています。このような不安定な時代において、経営者やビジネスリーダーにとって、世界の動きを正確に把握し、その背景を理解することは、ますます重要なスキルとなっています。

ここで、国際問題をわかりやすく、楽しく学ぶ方法として、池上彰氏の『知らないと恥をかく世界の大問題』シリーズをご紹介します。このシリーズは2009年の初刊行以来、リーマン・ショックやアラブの春、米中対立、ウクライナ戦争、新型コロナウイルスのパンデミックといった現代史の転換点を取り上げ、多くの読者に支持されています。それぞれの問題について、単なる出来事の説明に留まらず、その背景や各国の思惑、さらにはこれからの動向まで解説しています。例えば、ウクライナ戦争やイスラエルとパレスチナの紛争についても詳細に触れられており、これらの問題を通じて現代世界が抱える緊張や不安定さを理解することができます。

このシリーズの特徴は、池上氏の親しみやすい解説スタイルです。複雑な国際問題を誰にでも分かりやすい言葉で解説し、その背景にある歴史的要因や文化的文脈にも触れることで、単なる知識の習得にとどまらず、読者の「考える力」を育む内容となっています。例えば、パレスチナ問題では、イスラエルとハマスの対立だけでなく、それが周辺国や大国にどのような影響を与えるのかについても説明されています。こうした情報により、ニュースの断片的な報道だけでは見えない全体像を掴むことが可能になります。

さらに、このシリーズは時事的なテーマだけでなく、経営者にとっても実践的な洞察を提供します。グローバル経済の動向や国際的な政治情勢が企業活動にどのような影響を与えるのかを理解することで、より効果的なビジネス戦略を構築するためのヒントを得ることができます。また、日本国内の政治や社会問題についても取り上げており、国内外の視点を統合して考える力を養うことができます。このように、シリーズは「ニュースの教養本」として、日々のニュースを深く理解するためのツールとなります。

経営者やリーダーとして、世界情勢を正確に把握し、社会の動きを見極める力は、今後さらに重要になることでしょう。『知らないと恥をかく世界の大問題』シリーズは、その第一歩となる学びを提供してくれる内容です。この本を通じて国際的な視野を広げ、変化する時代に対応するための知識と洞察を身につけることができるはずです。

2025年という新たな時代に備え、ぜひこのシリーズを手に取ってみてください。世界の大問題を深く、楽しく学ぶ絶好の機会となるでしょう。今こそ、行動を起こす時です。時代の波に乗り遅れないためにも、早めの準備を進めていきましょう!

 

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2024.12.01

『デジタル人材がいない中小企業のためのDX入門』

長尾 一洋(著)

KADOKAWA (2022/10/20) 1,650円

 

【感想】

著者は、株式会社NIコンサルティングを設立し、経営戦略や人事制度のコンサルティングを展開する中で、日報を活用した組織改革と人材育成に着目しました。「日報コンサルティング」を開始し、自己啓発研修をはじめ、管理職向け研修や日報型SFA(営業支援システム)を開発。多くの企業で営業力強化と組織風土改革を支援しています。また、ITを活用した業務改善にも取り組み、CRMや可視化経営システムの導入を推進。多数の著書があり、実務的かつ実践的なアプローチで高い評価を得ています。講演活動も積極的に行い、企業の成長を支える営業管理や情報活用のノウハウを提供している著者が、中小企業のDXについてまとめた一冊です。

深刻化する人材不足と賃金の上昇は、企業経営に大きな影響を及ぼしています。人件費の負担増加は企業の収益性を圧迫し、持続的な成長の妨げとなる可能性があります。こうした環境下では、規模の大小を問わず、すべての企業が省人化経営への転換を迫られています。そのため、中小企業においても、テクノロジーを活用した業務効率化は避けては通れない課題となっています。RPAやAIなどのデジタル技術を導入し、定型業務の自動化や業務プロセスの最適化を進めることで、少ない人員での効率的な運営が可能となります。まずはできるところから始め、着実に取り組みを重ねていくことが重要です。DXを進める過程で、社内人材、IT人材、外部人材の適切な活用方法も明確になってきます。これらを踏まえ、来年度は自動化と外部リソースの活用を重要な経営課題として推進していこうと思います。

 

【以下、引用】

わからないことを理由に、外部の業者(ベンダー)に丸投げしてはいけません。企業としての知見がストックできず、ベンダー依存から抜け出すこともできなくなってしまいます。何をするにもベンダーに聞かないとわからない。頼めば、その都度費用が掛かってしまうから頼むのをためらう。そんな状況では、DXを進めていくことはできません。

DXで大事なことはデジタル活用を習慣化し、継続していくことです。ベンダー依存、特に丸投げすればいいという意識からはきっぱりと脱却してください。自分自身で試行錯誤しながら進める、それが一番大事なのです。

IT企業でもなく、大企業でもなく、わざわざ中小企業を選んで転職してくれる都合のよいデジタル人材はいないと考えるべきです。中小企業には優秀なデジタル人材は来ない、もし来たとしても長く居続けてはくれないという事実をまずは受け入れましょう。

中小企業のDX人材に必要なのは、会社をより良くするために、当事者意識を持ち戦略を建てられるかどうか。デジタル化推進の先頭に立ち、業務に取り組めるかどうかです。

 

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2024.11.01

『メタバース未来戦略』

久保田 瞬 , 石村尚也

日経BP (2022/6/16) 1,550円

 

【感想】

慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、環境省入省。2015年にVRやAR、メタバースの専門メディア『Mogura VR』を立ち上げ、株式会社Moguraを創業した久保田瞬さんと、東京大学で経営学・金融政策を専攻し、日本政策投資銀行で、金融商品運用・日米マクロ経済分析・日米ベンチャー企業分析に従事。現在は、日本政策投資銀行でデジタル戦略を、DBJキャピタルでスタートアップ投資を担当する石村尚也さんの共著。

メタバースは大きな注目を集めたものの、現状では期待されたほどの普及を見せていません。主要な事業者やプラットフォーマーが様々な取り組みを展開していますが、一般社会への浸透は限定的です。ただ、現在のメタバースとWeb3の状況は、インターネット黎明期と多くの類似点を感じます。日本でインターネットが一般に普及し始めた2000年頃、そのコンテンツの大半は文字主体のホームページで、オンラインショッピングやチャットサービスがわずかに使われる程度でした。それから約25年を経て、今ではスマートフォンやタブレットを通じて、いつでもどこでもインターネットにアクセスできる環境「ユビキタス」が実現しています。現在のメタバースとWeb3は、ちょうどインターネット黎明期にあるように感じます。今後の発展速度を正確に予測することは難しいですが、10年から20年後には、これらの技術が新たな社会基盤として普及している可能性があります。インターネットが現代の重要なビジネスプラットフォームへと成長したように、メタバースとWeb3への早期参入は、将来的な競争優位性を確保する上で重要な意味を持つと考えています。

 

【以下、引用】

企業がメタバースにかかわると言ったときに、多くの企業担当者がまず思い浮かべるのは「メタバースで何かをする」ことだろう。メタバースがどういうものなのか情報を集め、既存のプラットフォームを比較し、何をやるか企画を考え、実施する。

これら一連の流れはメタバースに限らず、DXの実践やAI活用など、あらゆるテーマで散々繰り返されてきたことだろう。では、メタバースは同じやり方で通用するのだろうか。正直、成功率は低い。

・・・・・

歴史的なゲームチェンジが起こると考えたプレーヤーたちは、「仕込み」に入ったのである。Metaのように新たなプラットフォームづくりやメタバースを支える仕組みの開発に動き始めたり、・・・あらたな世界であるメタバースで自社のビジネスをさらに拡大できるときが将来やってくるのではないかと備えに動いている。

・・・・・

この仕込みの時期に企業がメタバースにかかわろうと考えたとき、「メタバースで何かをする」は間違いではないが、メタバースで短期的にビジネスを成功させるのはあまりに難しいだろう。・・・来るべくメタバース時代に向けて、「どんな産業変化が起こり得るのか」、その中で「将来、自社は何をするべきか」と思考実験を繰り返しながら、中長期の視点で腰を据えたチャレンジを始めてほしい。

 

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