『メタバースは死んだのか?』
今井翔太
徳間書店 (2024/11/29) 1,760円
【感想】
著者は、2014年、Epic Games Japanに入社し、Unreal Engineのエヴァンジェリストとして活動。さらにゲーム「Fortnite(フォートナイト)」のコミュニティマーケティングも担当。ゲーム系インフルエンサーたちからの信頼が厚く「エピック今井」の名で親しまれた。現在は株式会社UP HASH代表取締役。様々な企業のエヴァンジェリストとして活動中。メタバース黎明期からメタバース業界に携わるエンジニアとしての視点からメタバースについて書かれた一冊です。
最も成功しているメタバースの一つであるフォートナイトのエヴァンジェリストが、「メタバースは技術的な空間ではなく、人と人の心が通じ合う空間である」という視点を持っているのが興味深い。確かに、3D技術や仮想空間、NFTなどは手段であり、それ自体を活用することが目的なのではなく、それを使って何をするかが重要です。現在のWeb2.0環境がSNSを中心に回っているのは、文字通り「ソーシャル」だから。LINEのように現実世界の人間関係をインターネット上に投影した濃密なつながりもあれば、Xのように非常にライトな関係も存在します。その中で、さまざまなグループが生まれ、ユーザーは出入りを繰り返す。使い方は人それぞれだけど、目的は何らかの形で他者とつながることです。この視点から見ると、SNSも一種のライトなメタバースと捉えることができます。では、そこに新しい技術を投入することで、どのような人間関係が生まれるのか?また、AIが加わることで、疑似的な人間関係がどのように形成されるのか?こうした点に、新たなビジネスチャンスが潜んでいそうです。本書は、技術主導になりがちなメタバースの議論に、新しい視点を加えています。
【以下、引用】
メタバースの本質は「人と人との心が通じ合う空間」だ。重要なのは技術そのものではなく、コミュニケーションを取り合うことで生まれる人と人のつながりである。
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メタバースはオンライン上の仮想空間だ。だから国境を越えて、いつでもだれでも入ることができる。となると、民族、言語、文化に関係なく、共通の興味や目的を持つ人々で新たなコミュニティが作られていく。つまりメタバースはゲームにかぎらず、ビジネス、教育、そのほかさまざまな社会活動に空前の変革をもたらす可能性があるわけだ。私たちのあらたな生活空間を切り開く決定的なテクノロジーだと言える。
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VRデバイスがなければメタバースは成立しないのかと言えば、そんなことはない。NFTも同じだ。…VRやNFT関連のビジネスで利益を上げたい人たちがメタバースという言葉を濫用した結果、それらがメタバースに必須であるかのような印象になってしまった。それはメタバースの本質ではない。大きな誤解を招いているのである。
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現実と違う世界に没入できて、その世界に不特定多数が参加できるコミュニケーション機能があるのなら、それはメタバースと言っていい。