『論語』
齋藤 孝 (翻訳)
ちくま文庫(2016/10/6) 1,100円
【感想】
1960年静岡生まれ。明治大学文学部教授。東京大学法学部卒。同大学院教育学研究科博士課程を経て現職。『身体感覚を取り戻す』で新潮学芸賞受賞。『声に出して読みたい日本語』がシリーズ260万部のベストセラーになり日本語ブームをつくった。著書に『読書力』『コミュニケーション力』『古典力』『理想の国語教科書』『質問力』『現代語訳学問のすすめ』『雑談力が上がる話し方』等多数。TBSテレビ「情報7days ニュースキャスター」等テレビ出演多数。NHK Eテレ「にほんごであそぼ」総合指導。そんな著者が1年半の時間をかけて解釈をしたのが本書です。
論語にはさまざまな解釈があり、正解は存在しません。だからこそ、自分なりの解釈を見つけることが大切です。そのためには、複数の書籍を読み比べ、さまざまな解釈に触れたり、孔子が生きた時代背景を理解したりする姿勢が求められます。そして、やはり大切なのは、
「学びて思わざれば則ち罔し。思いて学ばざれば則ち殆し。」
という教えです。孔子は「敏ならんと欲す」とも語っており、現代の経営者にとっては、この“学びと思考”に加えて、“行動”を重ねることが肝心です。細井平洲の言う「学思行相まって良となす」という姿勢こそ、実践に結びつく本質的な学びだと思います。さらに高みを目指すならば、
「之を知る者は之を好む者に如かず。之を好む者は之を楽しむ者に如かず」
という言葉に示されています。日本語で言うところの「好きこそものの上手なれ」に通ずるところがあります。
【以下、引用】
『論語』は、現代日本でまさに「今」読まれるべき本です。現代日本では、さまざまな問題が山積みになっています。しかし、その根本の原因は、と考えると、それは精神的なより所がない、というところにあると思います。心がゆらぎやすく、折れやすくなっている。心がゆらぐのは、まだいいのです。ゆらぎには、柔軟性と言う一面もありますから。けれども、「折れる」のはまずい。「精神の基準」がなくなってーなくなってというか、液状化してしまってーその帰結として、経済状況の悪化などと言う事態が出てくる。逆に言えば、精神の基準があって、それを軸に前を向いて学んでいけば、たとえば国際競争力だって、これはむしろ高まらざるをえないくらいのものです。
では、その精神を培う基準というものをどこに求めるか。そのひとつが、『論語』だろうと思います。
・・・
ところで、『論語』を「精神の基準」とするときに、いちばん核になる考え方と言うのはなんでしょうか。私は、それは「学ぶことを中心として人生を作り上げていること」だと思います。今回、『論語』を訳していて、いちばん共感したのも、まず、この点でした