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ブログBlog

2026.02.03

『名古屋商科大学ビジネススクール

ケースメソッドMBA実況中継 01

経営戦略とマーケティング』

牧田幸裕(著)

ディスカヴァー・トゥエンティワン(2020/3/20) 2,750円 – (現在はKindle版のみ)

 

 

【感想】

著者は経営戦略・マーケティング分野を専門とする研究者・実務家です。京都大学経済学部を卒業後、同大学大学院経済学研究科を修了。ハーバード大学経営大学院エグゼクティブ・プログラム(GCPCL)も修了しています。アクセンチュア戦略グループ、サイエント、ICGなど外資系コンサルティング企業においてディレクター、ヴァイスプレジデントを歴任し、企業の成長戦略や営業改革に携わりました。2003年に日本IBMへ移籍し、エレクトロニクス業界や消費財業界を中心にクライアント・パートナーとして活躍。複数の大学院で教育・研究に従事。実務と理論を架橋する視点から、戦略思考やマーケティングの重要性を発信し続けています。

本書は、私の母校である名古屋商科大学ビジネススクールが発刊した書籍であり、経営戦略とマーケティングの原理原則を、ケースメソッドという体験型の手法を通じて伝える一冊です。実際の授業では、この本の何倍もの緊張感があり、次に何を問われるかわからない状況の中で、頭から汗が噴き出るような思考を強いられます。正直、かなりしんどいです。一方で本書は、紙面から緊張感は伝わってくるものの、腰を据えて冷静に読むことができ、自分なりに考える余白も残されています。

本書の特徴はケースメソッドによる疑似体験にありますが、それ以上に価値があるのは、経営戦略とマーケティングにおける原理原則を徹底して扱っている点です。経営書の多くが「今すぐ使えるHow to」に傾きがちな中、本書に書かれている内容は、読んですぐに成果が出る類のものではありません。しかし、ここで示される考え方を理解し、日々の経営判断に粘り強く落とし込んでいくことで、時間をかけながらも確実に会社を強くしていく道筋が描かれています。本書の内容を日々の経営に活用してみてはいかがでしょうか?

 

【以下、引用】

3Cとは、市場、競合、自社である。その分析の手順は、「市場、競合、自社の順番で分析する」だ。

・・・・・・・

3C分析の目的は大きく分けると2つある。

ひとつは…「市場の変化に対応している競合企業を見習い、自社の改善ポイントを明らかにする」ことである。もうひとつは、「市場の変化や競合の対応を見たうえでビジネスチャンスを見つけ出し、いち早くそのチャンスをつかみ自社を成長させる」こと。言い換えれば、「自社が突き抜けるにはどうしたら良いのかを考える」ことである。

・・・・・・・

3C分析で明らかにしたいことは以下の通りだ。

1.市場の変化を明らかにし、その市場での成功要因を明らかにする

2.市場の変化と成功要因に対する競合の対応を明らかにし、競合企業の成功のキモを明らかにする

3.競合企業を見習い自社の改善ポイントを明らかにする

 

 

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2026.01.07

『シン読解力:学力と人生を決めるもうひとつの読み方』

新井紀子(著)

東洋経済新報社 (2025/2/11) 1,980円

 

【感想】

新井紀子さんは、日本を代表する数学者であり、AIと教育の関係に警鐘を鳴らし続けてきた研究者です。数理論理学を専門とし、国立情報学研究所教授として最先端の人工知能研究を牽引してきました。一部の人には東大合格を目指すAI「東ロボくん」プロジェクトの責任者として有名かもしれません。その成果は「AIは何ができ、何ができないのか」を社会に明確に示しました。その過程で彼女が突き当たったのは、AIの限界ではなく、人間の読解力低下という現実でした。計算や暗記ではAIに勝てない時代に、人間は何を学ぶべきなのか。本書は、データと実証に基づき、教育と社会の根本を問い直す一冊です。

仕事や学校で「読めばわかる」とよく言われますが、本書が突きつける現実は真逆です。読んでも、わかっていない。しかも、そのことに自分自身が気づいていない。 この事実が、データと具体例によってこれでもかと示されます。著者は、東大合格を目指すAI「東ロボくん」の研究を通じて、AIの限界よりも人間側の読解力の脆さに直面しました。文章を読んでいる“つもり”でも、条件を落とし、文脈を取り違え、意味を勝手に補ってしまう。計算や暗記はできても、問題文の意味そのものは理解できていない――これは子どもだけでなく、大人にも当てはまります。

この読解不全は、教育現場に限りません。マニュアルを読んだのにミスが起きる。契約書を読んだのに認識がズレる。議事録を共有しても話が噛み合わない。こうした「静かな事故」の背景には、文章を正確に読む力が前提として共有されていない現実があります。さらに重要なのは、AIを活用するには、AIの出す答えをきちんと理解する能力が必要だという点です。 出力を読めなければ、AIは便利な道具ではなく、誤解を量産する装置になりかねません。

 

【以下、引用】

生成AIを相棒として生産性を向上させようと思ったら、少なくとも生成AIの出力を読み、それを裏付ける資料や文章を読みこなす能力は必須になります。・・・それらを自力で読み解くことができないと、生成AIを使うことで生産性がかえって下がる懸念さえあります。

・・・・・・・・・

Q 次の文を読みなさい

資金が不足している経済主体と、資金に余裕がある経済主体との間で資金を貸し借りするのが金融である。金融は資金の貸し手と借り手が直接に資金を融通しあう直接金融と、銀行などの金融機関を介して資金の貸し借りを行う間接金融に大別される。

直接金融を利用している主体(人や会社)として当てはまるものを以下の選択肢からすべて選びなさい。

①A銀行に預金している中学生

②祖父母からお年玉をもらったBさん

③C銀行に勤めている人

④D大学から奨学金を借りた人

 

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2025.12.01

『稲盛和夫の実学 新装版 経営と会計』

稲盛和夫(著)

日経ビジネス人文庫(2025/10/3) 990円

 

【感想】

商売人なら知らない人はいない「経営の神様」、稲盛和夫氏の著書です。京セラとKDDIを創業し、一代で世界的企業へと成長させた日本を代表する実業家です。経営の根幹には「利他の心」「動機善なりや」という哲学があり、人間として正しいことを貫く姿勢は多くの経営者に影響を与えてきました。また、経営破綻した日本航空(JAL)の再建を無報酬で引き受け、わずか2年で黒字化させた手腕は世界的にも注目されました。著書『生き方』『アメーバ経営』は今なお読み継がれ、人生観と経営観の両面で指針を示し続けています。本書は、そんな稲盛和夫氏の経営と会計に関する考えがギュッと詰まった一冊です。もし要点を一言で表すなら、まさに帯に書かれている「会計がわからんで、経営ができるか!」に尽きます。本書は貸借対照表や損益計算書の読み方を解説する会計の教科書ではありません。むしろ、稲盛氏が“会社の数字”をどのように捉え、どのように経営に活かしてきたのかという「経営者のための会計思想」が語られています。稲盛氏は、数字は会社の状態を正直に映し出す鏡だと説きます。しかし、その数字は一見具体的に見えて、実は会社の膨大な情報をぎゅっと圧縮した非常に抽象的なものでもあります。社員の動き、現場の空気、取引先との関係、設備の稼働状況……こうした膨大な具体的事実を、私たちは細かいまま全て把握することはできません。だからこそ、会計という道具を使って、抽象化された「数字」という形で全体をつかむ。経営とは、この抽象化された数字を読み解き、未来に向けた判断をしていく営みだと強調します。本書が優れているのは、会計を単なる記録ではなく“経営の武器”として扱っている点です。数字の裏にある現場の実態や経営者の姿勢までを見ることが重要であり、曖昧な数字は必ず経営判断を狂わせる——そんな稲盛哲学が随所に込められています。

 

 

【以下、引用】

われわれを取り巻く世界は、一見複雑に見えるが、本来原理原則にもとづいたシンプルなものが投影されて複雑に映し出されているものでしかない。これは企業経営でも同じである。会計の分野では、複雑そうに見える会社経営の実態を数字によって極めて単純に表現することによって、その本当の姿を映し出そうとしている。

もし、経営を飛行機の操縦に例えるならば、会計データは経営のコックピットにある計器盤に現れる数字に相当する。計器は経営者たる機長に、刻々と変わる機体の高度、速度、姿勢、方向を正確かつ即時に示すことができなくてはならない。そのような計器盤がなければ、今どこを飛んでいるのかわからないわけだから、まとまな操縦などできるはずがない。

だから、会計というものは、経営の結果をあとから追いかけるだけのものであってはならない。いかに正確な決算処理がなされたとしても、遅すぎては何の手も打てなくなる。会計データは現在の経営状態をシンプルにまたリアルタイムで伝えるものでなければ、経営者にとっては何の意味もないのである。

そのためには、経営者自身がまず会計というものをよく理解しなければならない。計器盤に表示される数字の意味するところを手に取るように理解できるようにならなければ、本当の経営者とは言えない。経理が準備する決算書を見て、たとえば伸び悩む収益のうめき声や、やせた自己資本が泣いている声を聞きとれる経営者にならなければならないのである。

 

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2025.11.04

『WHYから始めよ!』

サイモン・シネック(著)

日本経済新聞出版(2012/1/25) 1,760円

 

【感想】

サイモン・シネックは、アメリカの著作家であり、リーダーシップや組織文化に関する世界的な講演家です。広告代理店での経験を経て独立し、企業やリーダーに「なぜ(Why)」から始める重要性を説いた本書で注目を集めました。彼のTEDトーク「優れたリーダーはどうやって行動を促すか」は史上最も視聴された講演の一つとして知られています。その後も『リーダーは最後に食べる』や『無限ゲーム』など、組織と人間の可能性を探求する著作を多数発表。現在は「The Optimism Company」を設立し、より良い社会を築くための教育・発信活動を続けています。

本書は、一般的なビジネス書に多い「How to」ではなく、物事の“原点”を静かに問いかける一冊です。著者は「人は“何をするか”ではなく、“なぜそれをするか”に共感して動く」と語り、この考えをもとに「WHY→HOW→WHAT」という“ゴールデンサークル”理論を提示します。Appleやマーティン・ルーサー・キングといった、強い信念を持つリーダーたちの行動原理を通じて、成果を生み出す組織や人に共通する核心を明らかにしています。私自身もそうですが、日々の業務や判断の中で「なぜそれをやるのか」という問いを置き去りにしてしまうことがあります。本書は、その当たり前の問いを思い出させてくれる本です。目的を明確にすることで、人も組織もエネルギーの方向が揃い、長期的な成果へとつながる。その大切さをあらためて感じました。特に、日々迷いや停滞の中で経営判断を重ねる零細企業の経営者にとって、本書は答えを与える本ではありませんが、“考えるきっかけ”を与えてくれる一冊です。本書を読んで、自分の「なぜ」を探してみませんか?

 

【以下、引用】

顧客が顧客でありつづけている理由、あるいは社員が社員であり続けている理由を、大半の企業がきちんと把握していないのであれば、就職希望者を増やす方法や社員の忠誠心を育てる方法など、わかるはずがない。実際のところ、大半の企業は自社のビジネスを駆り立てているものの正体がわからないまま、不完全な前提や、もっと悪いことに完全に誤った前提に基づいて決断を下している。

人間の行動に影響を及ぼす方法は、ふたつしかない。操作(マニピュレイト)するか、鼓舞(インスパイア)するか、だ。…操作はごくありふれた策略だ。なにしろ私たちはたいてい、子供の頃から操作を経験してきている。例えば、「きみの親友になるよ」という約束は、その見返りに望みのものを仲間からせしめようと、何世代もの子どもたちが利用してきた有効な交渉術だ。親友になって欲しいと思い、相手に飴を手渡した経験のある子どもならだれでも、こう証言するはずだ。効果あり、と。

ビジネスから政治まで、あるいはセールスからマーケティングまで、どんな世界でも操作がはびこっている。・・・自社の顧客がずっと顧客でありつづけている理由を明確に把握していない場合、企業は望みのものを手に入れようとむやみやたらに操作をおこなう。操作にすっかり依存してしまうのだ。無理もない。操作には効果があるからだ。・・・・・・こんにちの世界では、操作が標準になっている。これが、現実。

だが、べつの選択肢もある。

 

 

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2025.09.02

『努力革命 ラクをするから結果が出る!アフターGPTの成長術』

尾原 和啓 (著), 伊藤 羊一 (著)

幻冬舎 (2024/5/22) 1,650円

 

【感想】

尾原氏は京都大学大学院修了後、マッキンゼー在職中、ドコモの「iモード」立ち上げを支援。その後リクルート、KLab、Google、楽天など数々の企業で要職を歴任。内閣府AI戦略検討委員や経産省委員も務める。TEDやBurning Japanに関わるなど活動領域は広く、DXやメタバース、ChatGPT解説でも知られる。伊藤氏は東京大学経済学部卒。日本興業銀行で営業・事業再生に携わった後、プラス株式会社にて物流やマーケティングを統括。2015年よりヤフー株式会社で次世代リーダー育成を担う「Yahoo!アカデミア」責任者に就任。各種アクセラレーターでメンターも務め、幅広い分野で人材育成・事業支援に取り組む。そんなお二人が共著として仕上げた、ChatGPT後の世界を渡っていくための実践の書です。

ChatGPT以降の実務をテーマにした書籍は数多くありますが、その中でも本書は非常にバランスが良く、かつ実践的な一冊といえます。本書は細部にとらわれず、「ChatGPTという道具を今後どのように捉えるべきか」という本質的な視点から語られている点が際立っています。近年では「ChatGPTは意外と使えないのでは」という失望の声も聞かれるようになりましたが、それは過度に高い期待を抱いた反動にすぎません。ChatGPTはあくまでも人間を補助する道具であり、万能の魔法の杖ではありません。本書はその現実を踏まえたうえで、「では実際にどこまで頼ることができるのか」「どう活用すれば成果につながるのか」という道しるべを、無理のない現実的な形で提示しています。

ChatGPT時代を超え、アフターGPTと呼ばれる新しいフェーズをどう生き抜くか。そのための成長術を知りたい方にこそ、ぜひ一読いただきたい一冊です。

 

【以下、引用】

1 「80点」が合格ラインでなくスタート地点になる

プレゼン資料の叩き台まで作ってくれます。僕たちがやることは、AIが作った叩き台から良いものを選び・・・。いわば100点満点中、80点までの仕事は、どんどんAIが先回りしてやってくれる。

2 あらゆる物事は「個別化」していく

学習の進みぐらいや興味に合わせて、ChatGPTが一人ひとりにカスタマイズした幅の階段を作ってくれるので、誰もが階段を上がりやすくなります。ビジネスの現場でも、たとえば「100人の能力や適性に合わせて100通りのマニュアルを作ってください」と言えば、あっという間に作ってくれるようになるでしょう。

3 正解主義から修正主義へ

これまで僕たちは「物事には正解がある」という前提のもとに生きてきました。しかし、…もはや正解を出す力だけでは勝負できません。そうなると、いかに修正を繰り返しながら、より良いもの、みんなが納得するものを作れるかが鍵になります。・・・不完全でもいいから数を打って、その中で軌道修正しながら正解を見つけていける人のほうが、有利なのです。

 

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