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ブログBlog

2025.05.07

『論語』

齋藤 孝 (翻訳)

ちくま文庫(2016/10/6) 1,100円

 

【感想】

1960年静岡生まれ。明治大学文学部教授。東京大学法学部卒。同大学院教育学研究科博士課程を経て現職。『身体感覚を取り戻す』で新潮学芸賞受賞。『声に出して読みたい日本語』がシリーズ260万部のベストセラーになり日本語ブームをつくった。著書に『読書力』『コミュニケーション力』『古典力』『理想の国語教科書』『質問力』『現代語訳学問のすすめ』『雑談力が上がる話し方』等多数。TBSテレビ「情報7days ニュースキャスター」等テレビ出演多数。NHK Eテレ「にほんごであそぼ」総合指導。そんな著者が1年半の時間をかけて解釈をしたのが本書です。

論語にはさまざまな解釈があり、正解は存在しません。だからこそ、自分なりの解釈を見つけることが大切です。そのためには、複数の書籍を読み比べ、さまざまな解釈に触れたり、孔子が生きた時代背景を理解したりする姿勢が求められます。そして、やはり大切なのは、

「学びて思わざれば則ち罔し。思いて学ばざれば則ち殆し。」

という教えです。孔子は「敏ならんと欲す」とも語っており、現代の経営者にとっては、この“学びと思考”に加えて、“行動”を重ねることが肝心です。細井平洲の言う「学思行相まって良となす」という姿勢こそ、実践に結びつく本質的な学びだと思います。さらに高みを目指すならば、

「之を知る者は之を好む者に如かず。之を好む者は之を楽しむ者に如かず」

という言葉に示されています。日本語で言うところの「好きこそものの上手なれ」に通ずるところがあります。

 

【以下、引用】

『論語』は、現代日本でまさに「今」読まれるべき本です。現代日本では、さまざまな問題が山積みになっています。しかし、その根本の原因は、と考えると、それは精神的なより所がない、というところにあると思います。心がゆらぎやすく、折れやすくなっている。心がゆらぐのは、まだいいのです。ゆらぎには、柔軟性と言う一面もありますから。けれども、「折れる」のはまずい。「精神の基準」がなくなってーなくなってというか、液状化してしまってーその帰結として、経済状況の悪化などと言う事態が出てくる。逆に言えば、精神の基準があって、それを軸に前を向いて学んでいけば、たとえば国際競争力だって、これはむしろ高まらざるをえないくらいのものです。

では、その精神を培う基準というものをどこに求めるか。そのひとつが、『論語』だろうと思います。

・・・

ところで、『論語』を「精神の基準」とするときに、いちばん核になる考え方と言うのはなんでしょうか。私は、それは「学ぶことを中心として人生を作り上げていること」だと思います。今回、『論語』を訳していて、いちばん共感したのも、まず、この点でした

 

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2025.04.01

『知能とはなにか』

田口善弘

講談社(2025/1/23) 1,012円

 

【感想】

著者は、1961年東京生まれ。中央大学理工学部教授。1995年『砂時計の七不思議』で講談社科学出版賞受賞。以降、機械学習を活用したバイオインフォマティクス研究に従事し、2021〜2024年に「世界で最も影響力のある研究者」トップ2%に選出。近年はテンソル分解研究に注力し、2019年に英語の専門書を出版。著書に『生命はデジタルでできている』『はじめての機械学習』『学び直し高校物理』などがある。そんな物理学者が生成系AIの本質をもとに生成系AIと知能について書いた一冊です。

生成系AIはChatGPT以降、「なにかすごい存在」として捉えられがちです。ところが実際には、物理学者たちが20世紀末に盛んに研究していた「非線形・非平衡・多自由度系」を用いた、いわば“世界シミュレーター”に過ぎないのだと言います。しかも、その中身―たとえばLLM(大規模言語モデル)であれば―は、単に「言語と言語の距離をマッピングしている」にすぎません。生成系AIとは、人間とは構造の異なる世界シミュレーターである以上、人間のような「自我」を持つことはない、と著者は指摘します。とはいえ個人的には、「もしこのマッピングが限界を超えるほどに拡大されたら(実際には利用可能な情報が不足する)、人間とは異なる形で“自我”のようなものが生まれることはないのだろうか?」という疑問が湧きますが。そうした想像はさておき、本書は「生成系AIが実際に何ができて、どこまでできるのか」を、誇張も過小評価もせず、リアルに捉えるきっかけを与えてくれます。そして大切なのは、その現実を冷静に受け止めたうえで、これからの生活や仕事にどうAIを活かしていくかを考えることです。未来に振り回されるのではなく、AIを道具として上手に使いこなす――そのための第一歩になる一冊だと思います。

 

【以下、引用】

生成AIがロボットにもたらしたインパクトはいろいろあるが、その一つはなんと言っても視覚の獲得だろう。・・・工業用ロボットはかなり前から実用化されていて製造ラインのオートメーション化に大きく貢献してきた。だが、そこにはある大きな限界があった。ほぼ定型の同じ作業しかできないということだ。・・・それはなぜかと言えば、ロボットが教えられていたのはカメラの画像がこうなったら手を伸ばしてつかめ、というルールだけであって、それが「ラインを流れてきた部品だ」と認識する世界モデルに基づいた行動ではなかったからだ。

・・・

だが、よい世界シミュレーターである生成AIは、入力された画像データをもとに特定の物体を選び出したり、的確な3次元配置をロボットに教えるみたいなことが可能になった。このため、ロボットは、全く未知の状況でも世界を認識して行動ができるようになった。

 

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2025.03.01

『メタバースは死んだのか?』

今井翔太

徳間書店 (2024/11/29) 1,760円

 

【感想】

著者は、2014年、Epic Games Japanに入社し、Unreal Engineのエヴァンジェリストとして活動。さらにゲーム「Fortnite(フォートナイト)」のコミュニティマーケティングも担当。ゲーム系インフルエンサーたちからの信頼が厚く「エピック今井」の名で親しまれた。現在は株式会社UP HASH代表取締役。様々な企業のエヴァンジェリストとして活動中。メタバース黎明期からメタバース業界に携わるエンジニアとしての視点からメタバースについて書かれた一冊です。

最も成功しているメタバースの一つであるフォートナイトのエヴァンジェリストが、「メタバースは技術的な空間ではなく、人と人の心が通じ合う空間である」という視点を持っているのが興味深い。確かに、3D技術や仮想空間、NFTなどは手段であり、それ自体を活用することが目的なのではなく、それを使って何をするかが重要です。現在のWeb2.0環境がSNSを中心に回っているのは、文字通り「ソーシャル」だから。LINEのように現実世界の人間関係をインターネット上に投影した濃密なつながりもあれば、Xのように非常にライトな関係も存在します。その中で、さまざまなグループが生まれ、ユーザーは出入りを繰り返す。使い方は人それぞれだけど、目的は何らかの形で他者とつながることです。この視点から見ると、SNSも一種のライトなメタバースと捉えることができます。では、そこに新しい技術を投入することで、どのような人間関係が生まれるのか?また、AIが加わることで、疑似的な人間関係がどのように形成されるのか?こうした点に、新たなビジネスチャンスが潜んでいそうです。本書は、技術主導になりがちなメタバースの議論に、新しい視点を加えています。

 

【以下、引用】

メタバースの本質は「人と人との心が通じ合う空間」だ。重要なのは技術そのものではなく、コミュニケーションを取り合うことで生まれる人と人のつながりである。

メタバースはオンライン上の仮想空間だ。だから国境を越えて、いつでもだれでも入ることができる。となると、民族、言語、文化に関係なく、共通の興味や目的を持つ人々で新たなコミュニティが作られていく。つまりメタバースはゲームにかぎらず、ビジネス、教育、そのほかさまざまな社会活動に空前の変革をもたらす可能性があるわけだ。私たちのあらたな生活空間を切り開く決定的なテクノロジーだと言える。

VRデバイスがなければメタバースは成立しないのかと言えば、そんなことはない。NFTも同じだ。…VRやNFT関連のビジネスで利益を上げたい人たちがメタバースという言葉を濫用した結果、それらがメタバースに必須であるかのような印象になってしまった。それはメタバースの本質ではない。大きな誤解を招いているのである。

現実と違う世界に没入できて、その世界に不特定多数が参加できるコミュニケーション機能があるのなら、それはメタバースと言っていい。

 

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2025.02.01

『生成AI時代の「超」仕事術大全』

保科学世, アクセンチュアAIセンター

東洋経済新報社 (2023/11/1) 1,980円

 

 

【感想】

著者は、アクセンチュアにてAI・アナリティクス部門の日本統括、およびデジタル変革の知見や技術を結集した拠点「アクセンチュア・イノベーション・ハブ東京」の共同統括を務める。AI HUBプラットフォームや、業務領域ごとに体系化したAIサービス群「AI POWERED サービス」、需要予測・在庫補充最適化サービスなどの開発を手がけるとともに、アナリティクスやAI技術を活用した業務改革を数多く実現。厚生労働省保健医療分野AI開発加速コンソーシアム構成員などを歴任。一般社団法人サーキュラーエコノミー推進機構理事。大局的な将来のAI時代を予測する一冊です。

アクセンチュアの分析によると、全労働時間の40%がLLM(大規模言語モデル)の影響を大きく受けるとされています。業種による違いはありますが、事務作業においては63%が強い影響を受け、さらに小さな影響を含めるとその割合は77%に達します。一方で、法務では強い影響を受ける割合は44%にとどまるものの、小さな影響を含めると100%に及びます。このように、LLMだけでも影響の範囲は少なくありません。さらに、その他のAI技術が加われば、影響の範囲はさらに広がるでしょう。また、近年ではAIが物理的な環境とのインターフェース(例えばロボットアーム)を持つようになり、AIが業務に与える影響は想定以上に広がる可能性があります。こうした背景を踏まえると、AIを業務に取り込むだけでなく、AIと対立するのではなく活用する新たなビジネスモデルへの変革が必要です。それは未来の課題ではなく、まさに今取り組むべき重要な課題であると感じられます。

 

【以下、引用】

MELDASフレームワーク

マインドセット:従来とは根本的に異なるアプローチを考え、あるべき業務プロセスを想像する

エクスペリメント:従来通りの業務プロセスだと生成AIによる効果の果実を最大限に得ることができない

リーダーシップ:人間とAIの協働を促進し、AIの責任ある使用にコミットする

データ:最新の注意を払ってデータを取り扱う

スキル:人間とAIが融合するスキルを開発する

ホワイトカラーの仕事はデスクワークからフィールドワークにシフトするだろう。調査やレポート作成といったデスクワークは、生成AIの力を借りてできるだけ効率化し最小限にし、それよりは現場に出て課題を五感で拾うべきである。世の中のトレンドや社会課題に対するアンテナの高さ、精度の高い五感センサーとしての洞察力や、討議や周知のためのコミュニケーション能力、人を動かすリーダーシップ、物事を動かす情熱、最終判断・意思決定に必要となる倫理性、それらは人間しか持っていないものであり、そういったことにより多くの時間を費やす。課題を設定するのは人である。そして、生成AIと共同して“知”の融合・開発が起こることにより、高い生産性・創造性で様々な社会課題を解決していけるだろう。

 

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2025.01.06

『知らないと恥をかく 世界の大問題1~15』

池上彰

角川新書(2009/11/1~2024/6/10:続刊予定) 1,056円(第15巻)

 

2025年の新たな時代を迎えるにあたって

2024年を終え、世界では様々な問題が続いています。来年2025年にはアメリカでドナルド・トランプ氏が再び大統領に就任する予定となっており、これが世界情勢にどのような影響を及ぼすのか、多くの注目を集めています。このような不安定な時代において、経営者やビジネスリーダーにとって、世界の動きを正確に把握し、その背景を理解することは、ますます重要なスキルとなっています。

ここで、国際問題をわかりやすく、楽しく学ぶ方法として、池上彰氏の『知らないと恥をかく世界の大問題』シリーズをご紹介します。このシリーズは2009年の初刊行以来、リーマン・ショックやアラブの春、米中対立、ウクライナ戦争、新型コロナウイルスのパンデミックといった現代史の転換点を取り上げ、多くの読者に支持されています。それぞれの問題について、単なる出来事の説明に留まらず、その背景や各国の思惑、さらにはこれからの動向まで解説しています。例えば、ウクライナ戦争やイスラエルとパレスチナの紛争についても詳細に触れられており、これらの問題を通じて現代世界が抱える緊張や不安定さを理解することができます。

このシリーズの特徴は、池上氏の親しみやすい解説スタイルです。複雑な国際問題を誰にでも分かりやすい言葉で解説し、その背景にある歴史的要因や文化的文脈にも触れることで、単なる知識の習得にとどまらず、読者の「考える力」を育む内容となっています。例えば、パレスチナ問題では、イスラエルとハマスの対立だけでなく、それが周辺国や大国にどのような影響を与えるのかについても説明されています。こうした情報により、ニュースの断片的な報道だけでは見えない全体像を掴むことが可能になります。

さらに、このシリーズは時事的なテーマだけでなく、経営者にとっても実践的な洞察を提供します。グローバル経済の動向や国際的な政治情勢が企業活動にどのような影響を与えるのかを理解することで、より効果的なビジネス戦略を構築するためのヒントを得ることができます。また、日本国内の政治や社会問題についても取り上げており、国内外の視点を統合して考える力を養うことができます。このように、シリーズは「ニュースの教養本」として、日々のニュースを深く理解するためのツールとなります。

経営者やリーダーとして、世界情勢を正確に把握し、社会の動きを見極める力は、今後さらに重要になることでしょう。『知らないと恥をかく世界の大問題』シリーズは、その第一歩となる学びを提供してくれる内容です。この本を通じて国際的な視野を広げ、変化する時代に対応するための知識と洞察を身につけることができるはずです。

2025年という新たな時代に備え、ぜひこのシリーズを手に取ってみてください。世界の大問題を深く、楽しく学ぶ絶好の機会となるでしょう。今こそ、行動を起こす時です。時代の波に乗り遅れないためにも、早めの準備を進めていきましょう!

 

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