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2025.12.01

『稲盛和夫の実学 新装版 経営と会計』

稲盛和夫(著)

日経ビジネス人文庫(2025/10/3) 990円

 

【感想】

商売人なら知らない人はいない「経営の神様」、稲盛和夫氏の著書です。京セラとKDDIを創業し、一代で世界的企業へと成長させた日本を代表する実業家です。経営の根幹には「利他の心」「動機善なりや」という哲学があり、人間として正しいことを貫く姿勢は多くの経営者に影響を与えてきました。また、経営破綻した日本航空(JAL)の再建を無報酬で引き受け、わずか2年で黒字化させた手腕は世界的にも注目されました。著書『生き方』『アメーバ経営』は今なお読み継がれ、人生観と経営観の両面で指針を示し続けています。本書は、そんな稲盛和夫氏の経営と会計に関する考えがギュッと詰まった一冊です。もし要点を一言で表すなら、まさに帯に書かれている「会計がわからんで、経営ができるか!」に尽きます。本書は貸借対照表や損益計算書の読み方を解説する会計の教科書ではありません。むしろ、稲盛氏が“会社の数字”をどのように捉え、どのように経営に活かしてきたのかという「経営者のための会計思想」が語られています。稲盛氏は、数字は会社の状態を正直に映し出す鏡だと説きます。しかし、その数字は一見具体的に見えて、実は会社の膨大な情報をぎゅっと圧縮した非常に抽象的なものでもあります。社員の動き、現場の空気、取引先との関係、設備の稼働状況……こうした膨大な具体的事実を、私たちは細かいまま全て把握することはできません。だからこそ、会計という道具を使って、抽象化された「数字」という形で全体をつかむ。経営とは、この抽象化された数字を読み解き、未来に向けた判断をしていく営みだと強調します。本書が優れているのは、会計を単なる記録ではなく“経営の武器”として扱っている点です。数字の裏にある現場の実態や経営者の姿勢までを見ることが重要であり、曖昧な数字は必ず経営判断を狂わせる——そんな稲盛哲学が随所に込められています。

 

 

【以下、引用】

われわれを取り巻く世界は、一見複雑に見えるが、本来原理原則にもとづいたシンプルなものが投影されて複雑に映し出されているものでしかない。これは企業経営でも同じである。会計の分野では、複雑そうに見える会社経営の実態を数字によって極めて単純に表現することによって、その本当の姿を映し出そうとしている。

もし、経営を飛行機の操縦に例えるならば、会計データは経営のコックピットにある計器盤に現れる数字に相当する。計器は経営者たる機長に、刻々と変わる機体の高度、速度、姿勢、方向を正確かつ即時に示すことができなくてはならない。そのような計器盤がなければ、今どこを飛んでいるのかわからないわけだから、まとまな操縦などできるはずがない。

だから、会計というものは、経営の結果をあとから追いかけるだけのものであってはならない。いかに正確な決算処理がなされたとしても、遅すぎては何の手も打てなくなる。会計データは現在の経営状態をシンプルにまたリアルタイムで伝えるものでなければ、経営者にとっては何の意味もないのである。

そのためには、経営者自身がまず会計というものをよく理解しなければならない。計器盤に表示される数字の意味するところを手に取るように理解できるようにならなければ、本当の経営者とは言えない。経理が準備する決算書を見て、たとえば伸び悩む収益のうめき声や、やせた自己資本が泣いている声を聞きとれる経営者にならなければならないのである。

 

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2025.12.01

あいさつ

大澤賢悟です。先日、子供たちと一緒にモリコロパークのスケート場へ行ってきました。スケートなんて最後に行ったのは10年以上前。正直、「いつだったっけ?」と思い出せないほど久しぶりです。リンクの入り口には、ヘルメットとプロテクターの貸し出しコーナーがあり、まずは子供たちに装備をつけて先に滑りに行かせました。すると目の前に一枚の紙。

「大人こそヘルメットを!」

たしかに久しぶりのスケートですし、頭は守らないとなぁ……とヘルメットを手に取りました。ただ周りを見ると——大人は誰もヘルメットを着けていない。「恥ずかしい」とか「見た目が…」とか、そういうことなんでしょうか。私はというと、そういう見栄はゼロなので、迷わず装着。いざ、10年ぶりの氷の上へ。めちゃくちゃ怖いですね。氷ってこんなにつるつるでしたっけ?初めの数周はとにかく慎重に、そろそろ〜っと滑り続けました。そして何周かしたその瞬間——思いっきり転びました。派手に。ものすごい音を立てて。ぱかーーんと。近くにいた見知らぬ女性が、スタッフかと思うくらい急いで駆け寄って「大丈夫ですか!?」と声をかけてくれるほど。頭を氷にガツンと打ちつけていました。……でも、ヘルメットが守ってくれました。もし着けていなかったら、救急車を呼んでたかもしれません。腰もかなり痛めましたが、それ以上に「ヘルメット、偉大すぎる」と実感。周りの目を気にしてやらないより、やるべきことはちゃんとやった方がいいですね。ちなみに、公園で子供とインラインスケートをするときも、私はプロテクターとヘルメットをフル装備で滑っています。怪我したら楽しめませんからね。

 

今年もふるさと納税でお得に節税!

いよいよ12月に入り、本格的に年末を感じるようになりました。この時期になると毎年話題に上がるのが「ふるさと納税」。今年もいよいよ今月が最後のチャンスです。制度変更でポイントが付かなくなったとはいえ、自己負担2,000円で返礼品がもらえる仕組みそのものは変わっていません。どうせ買う日用品や食材などを返礼品として選べば、まだまだ十分に“得”な制度ですし、うまく使えば家計の助けにもなります。 ただ、ここで注意しておきたいのが、張り切りすぎると本当に寄付になるということです。ふるさと納税は上限額が決まっていて、その範囲内だからこそ「実質2,000円」で済む。ところが年末で盛り上がって気が大きくなり、「あれもこれも」と申し込んでいくと、気付けば上限を超えてしまい、寄付した分が控除されない……という悲しい結末になってしまいます。とくに自営業の方は上限が最後まではっきりしないので、余裕を持ちながら調整しておくのがおすすめです。

そしてもうひとつ、意外と盲点なのが「ふるさと納税の話は年収をバラす」という点です。ふるさと納税の上限額は、年収から計算できる仕組みになっています。つまり、「今年は12万円分やったよ」と軽い気持ちで話してしまうと、聞いている相手は「この人はこのぐらいの年収だな……」と推測できてしまうわけです。ちなみに「○○をもらいました」も、お米とか水とか、それほど高くないものを1つ2つ話す程度なら良いですが、高額なものだったり、もらったものを全部伝えてしまうのもタブー。おおむね金額が想定できてしまいます。会話で、無意識のうちに踏み込んだ情報を渡してしまっている可能性もあるので、具体的な金額の話は控えめのほうが安心です。

ふるさと納税はやれば確実にできる節税です。積極的に活用してください。

 

 

今年の冬はもしかしたら“大雪”になるかもしれない、そんな発表がありました。原因として言われているのが「極渦(きょくうず)」と呼ばれる、北極上空の成層圏にある巨大な寒気の渦です。本来この極渦は、強いときは寒気を北極の中に閉じ込める力があります。しかし今年はその極渦が弱まってきており、閉じ込められていた寒気が蛇行しながら南へ流れ込みやすくなる可能性があるとのことです。その結果、普段よりも寒波が南に降りてきて、日本でも大雪を降らせるかもしれない、というわけです。夏は記録的な暑さで「こんなに暑いのか…」と驚いたばかりなのに、今度は冬に向けて「大雪&厳しい寒さ」が来るかもしれません。気温の振れ幅が年々極端になってきているようにも感じます。暖房の準備やスタッドレスタイヤなど、早めに冬支度をしておいた方が良さそうですね。

 

 

家計が1,000/月、楽になる!・・・って政策、どう思います?

もし政府から「月1,000円、家庭が楽になります!」と言われたら、みなさんどうでしょうか?おそらく、多くの家庭では「え、それだけ?」という反応になるんじゃないかと思います。実は、ガソリンの暫定税率を廃止するという話も、聞こえだけは大きいのですが、実際どれほど家計に影響があるか元の数字を見てみると、思ったほどのインパクトはありません。たとえば令和4年のデータを見ると、1世帯あたりのガソリン年間利用額は約6.8万円。これを1Lあたり170円で計算すると、年間400L使っている計算になります。では暫定税率(消費税込み27.5円/L)を廃止するとどれくらい安くなるのか。答えは年間約11,000円ほど。つまり、月にすると1,000円にも満たない程度です。「ガソリン税がなくなると家計が助かる!」と言われている割には、数字にすると実はそこまで劇的ではありません。むしろ、携帯電話を3大キャリアからMVNOに変えた方が、何倍も節約効果が出るぐらいです。さらに言えば、暫定税率が廃止されると、それに伴って今出ているガソリンの補助金も無くなるため、国民の実質負担は以降タイミングでは変わらない可能性があります。しかも今は、暫定税率に代わる新しい税金を作ろうという議論まで出ていますから、結局のところ家計にとってマイナスになるかもしれません。政策の発表はどうしても大きく聞こえますが、こういうときこそ元のデータに戻って、「実際にどれくらいのインパクトがあるのか?」を冷静に見ておきたいですね。言葉の勢いや雰囲気に流されず、しっかり数字で考えることが大事だなぁと改めて感じます。

 

 

飲み屋レシートのインボイス番号が増えた気がする

あくまで個人的な感覚ですが、最近、経理をしていて感じるのは、飲食店のレシートや領収書にインボイス番号が記載されているケースが明らかに増えてきたということです。会社の飲み会などで利用される際に、「インボイス番号がないお店は経費で処理しづらい」という理由もあるのかもしれません。とはいえ、インボイス番号を付けていない飲食店というのは、ある意味で「税務調査候補です」と自らアピールしているようなものだとも感じます。実際、そうした店舗を対象に税務調査が行われたのではないか、と想像しています。

お店の規模や単価にもよりますが、ある程度の立地で営業していれば、年間売上が1,000万円を超えるケースは珍しくありません。原則として、売上が1,000万円を超える事業者は消費税の課税事業者となり、消費税を申告・納付する義務があります。そう考えると、インボイス登録をすることにはメリットがあり、登録しない理由はあまり見当たりません。あえて登録していないとなると、「なぜだろう?」と疑問を持たれても仕方がないでしょう。

なお、税務署は非常に多くのデータを保有しています。店舗の客単価・席数・回転率・立地条件などから、おおよその売上規模を容易に推定できるため、数字の不自然さはすぐに把握されます。

 

 

やればできる品川区

これまでふるさと納税の返礼品競争には距離を置き、「うちは参加しない」という姿勢だった品川区が、ここにきて動きました。2025年度の寄附見込み額は2.7億円。前年比16倍です。同じく品川区からの流出額である59.6億円と比べれば、遠い金額です。それでも、これまで積極的に取り組んでこなかった自治体がこれだけ伸ばした、という事実そのものに価値があります。今回の成果の背景には、操縦体験やeスポーツといった独自の返礼品である体験コンテンツの充実にあると考えられています。つまり「他と同じことをやる」のではなく、自分たちの持つ強みやコンテンツを見つめ直し、それを磨いて返礼品として出した結果、全国の寄附者の関心をつかんだということです。地域も企業も同じで、「何がうちの強みか?」を丁寧に見つめ直し、それを価値として伝えられれば結果はついてくるという良い例だなと感じます。

 

 

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2025.11.11

月末、銀行の通帳を見て「よし、今月も残高はプラスだ」と一息つく。経営者なら誰しも経験がある光景ではないでしょうか。しかし、後から税理士が作成した試算表(会社の成績表のようなもの)を見て、「あれ?利益は赤字になっている…」と首をかしげたことはありませんか?

手元のお金(銀行残高)と帳簿上の利益が一致しない。この「ズレ」こそが、会社の健康状態を教えてくれる重要なサインです。会計に苦手意識がある方でも大丈夫。今日はこのズレの意味を解き明かし、明日からの経営判断に活かす方法をお伝えします。

なぜズレは起きる?犯人は「取引のタイムラグ」

結論から言うと、このズレの主な原因は、会計のルールである「発生主義」にあります。
発生主義とは、ざっくり言うと「お金が動いたタイミング」ではなく、「取引が確定したタイミング」で売上や費用を記録するルールのことです。

ピンと来ないかもしれませんね。町の小さな部品工場を例に考えてみましょう。

  • 3月10日: 得意先A社に部品100万円分を納品した。

  • 5月31日: A社から部品代100万円が振り込まれた。

この場合、会計帳簿(損益計算書)には、3月の売上として100万円が記録されます。しかし、実際に銀行口座の残高が増えるのは5月31日です。つまり、3月と4月の間、帳簿上は100万円の売上があるのに、通帳の残高は1円も増えていない、という状況が生まれるのです。これが「ズレ」の正体です。

仕入れも同じです。4月に仕入れた材料費50万円の支払いが6月末なら、帳簿上は4月の費用として計上されますが、お金が減るのは6月。このように、売上の入金や経費の支払いに時間差(タイムラグ)があることで、手元のお金と帳簿上の数字はズレていくのです。

「ズレ」から会社の健康状態を読み解く方法

この「ズレ」は、ただ気持ちが悪いだけではありません。放置すると、いわゆる「黒字倒産」という最悪の事態を招きかねない、危険なサインでもあります。だからこそ、私たちはこのズレから会社の状態を読み解く必要があります。

ここで見ていただきたいのが、貸借対照表の**「売掛金」**という項目です。売掛金とは、先ほどの例で言う「A社から後でもらえる100万円」のこと。つまり、まだ現金化されていない売上です。

例えば、あなたの会社の年間売上が1,200万円だとします。そして、貸借対照表の売掛金が常に200万円前後あるとしましょう。これを簡単な計算式に当てはめてみます。

売掛金回転期間 = 売掛金 ÷ (年間売上 ÷ 12ヶ月)
2ヶ月 = 200万円 ÷ (1,200万円 ÷ 12ヶ月)

この「2ヶ月」という数字が何を意味するか。
これは、「あなたの会社は、商品を納品してから現金を手にするまでに、平均して2ヶ月かかっていますよ」ということを示しています。

この2ヶ月間、従業員の給料や家賃、仕入代金の支払いは待ってくれません。損益計算書で利益が出ていても、この2ヶ月を乗り切る現金が手元になければ、支払いが滞ってしまいます。これが黒字倒産のメカニズムです。

自分の会社の売掛金回転期間が、業界の平均と比べて長すぎないか?取引先との入金サイトを見直す必要はないか?この「ズレ」の数字は、そうした具体的な経営改善のアクションを考えるきっかけを与えてくれるのです。

銀行と税務署は「ズレ」をこう見ている

このズレを正しく把握し、説明できることは、金融機関や税務署との付き合いにおいても非常に重要です。

銀行に融資を申し込むと、決算書の提出を求められます。銀行の担当者は、損益計算書の利益額だけを見ているわけではありません。「なぜこれだけ利益が出ているのに、預金残高が増えていないのですか?」と必ず質問してきます。この時、「売掛金の回収に時間がかかっていまして…」と数字の裏付けをもってきちんと説明できる経営者は、資金繰りをしっかり管理できていると評価され、信頼を得られます。

一方、税務調査では、調査官はあなたの会社の預金通帳と会計帳簿を徹底的に照合します。説明のつかない入金があれば「売上を隠していませんか?」と疑われ、理由の不明な出金があれば「架空の経費ではないですか?」と追及されます。日々の記帳を正確に行い、残高のズレを常に把握しておくことが、いざという時に会社を守る盾になるのです。

通帳の残高だけを見て一喜一憂するのは、もうやめにしませんか。
月に一度で構いません。試算表と預金通帳を並べて、その「ズレ」と向き合ってみてください。そこに、あなたの会社をより強く、たくましく成長させるためのヒントが隠されているはずです。

2025.11.10
「先生、結局のところ、手元に現金はいくらあれば安心なんでしょうか?」

これは、私が多くの経営者の方から受ける質問ナンバーワンかもしれません。よく「月商の3か月分」なんて言われますよね。でも、本当にそうでしょうか?月商500万円の飲食店と、同じく月商500万円の町工場。この2社で「安心できる現金の額」が同じはずがありません。

なぜなら、お金の出入りするスピードが全く違うからです。
今回は、巷で言われる「月商〇か月分」という目安に頼らず、あなたの会社にとっての「本当に安心できる現金の額」を見つけ出す方法を、財務諸表の数字を使いながら、分かりやすく解説していきます。会計が苦手な社長こそ、読んでみてください。会社の体力測定、一緒にやってみましょう。

なぜ「月商」基準では危ないのか?見るべきは「お金のサイクル」

まず、なぜ「月商」を基準にするのが危ないのか。答えは、あなたの会社の**貸借対照表(B/S)**に隠されています。

例えば、ラーメン屋さんのような飲食店。カード払いも多くなりましたが、お客様は現金でその場で支払ってくれるケースも、まだまだあります。材料の仕入れ代金の支払いは月末締め翌月末払いだったりします。つまり、現金で受け取るとお金が先に入ってきて、支払いは後。こういう商売は、比較的お金が回りやすいと言えます。

一方で、部品を作る町工場はどうでしょう。材料を先に仕入れて、製品を作り、納品します。請求書を送り、入金があるのは早くて翌月末、場合によっては翌々月末なんてこともザラです。最近はだいぶ減ってきましたが、手形というやり方もあり、3か月後、6か月後なんてこともあります。この間、従業員の給料や工場の家賃は待ってくれません。先にお金が出ていき、入ってくるのはずっと後。

この「売った代金が、現金として入ってくるまでの期間」を測るのが**「売上債権回転期間」**です。難しく聞こえますが、要は「ツケ」がどれくらい溜まっているか、ということです。貸借対照表の「売掛金」を月商で割ってみてください。

`売上債権回転期間(簡易版) = 売掛金 ÷ 月商`

この数字が「2.0」なら、売上から入金まで平均2か月かかる、ということです。この期間が長い会社ほど、多くの手元資金が必要になります。あなたの会社は何か月でしたか?「月商3か月分」という一つのモノサシで全業種を測るのが、いかに乱暴かお分かりいただけると思います。

自社の「安心ライン」を見つける、たった2つのステップ

では、どうやって自社に合った現金の額を見つけるのか。難しくありません。必要なのは**損益計算書(P/L)貸借対照表(B/S)**です。

ステップ1:毎月必ず出ていく「固定費」を把握する

まずは、あなたの会社の「呼吸しているだけでかかるコスト」を計算します。これは、たとえ売上がゼロになっても支払わなければならないお金のこと。損益計算書を見て、以下の項目を抜き出して合計してみてください。

  • 人件費(給料、社会保険料)

  • 地代家賃

  • リース料

  • 水道光熱費や通信費の基本料金など

例えば、これが合計で毎月150万円だったとします。これがあなたの会社が生き延びるために最低限必要なコストです。

ステップ2:「耐える期間」を掛け算する

次に、コロナ禍や急なトラブルで売上が激減した時、何カ月間なら耐えれるかを決めます。これは社長の決断です。ひとまず「3か月」で考えてみましょう。

`固定費 150万円 × 3か月 = 450万円`

これが、あなたの会社にとっての**「最低限のセーフティライン」**です。
もし、もう少し余裕を持ちたい、銀行からの信頼も得たいと考えるなら「6か月」を目指しましょう。

`固定費 150万円 × 6か月 = 900万円`

これが**「安心ライン」**の一つの目安です。どうでしょう?「月商の〇か月分」より、ずっと具体的で、自社の実態に合っていると思いませんか?先ほどの「売上債権回転期間」が長い会社は、この安心ラインに、さらに運転資金(売掛金+在庫-買掛金)の1~2か月分を上乗せしておくと、より盤石になります。

その「現金」、銀行はこう見ている

こうして確保した手元現金は、単なるお守りではありません。金融機関との付き合いにおいても、強力な武器になります。

金融機関(銀行)に対しては、最高の交渉材料です。
銀行が融資の際に何より気にするのは「この会社は、ちゃんと返済できる体力があるか?」という点です。貸借対照表の「現預金」の残高は、その最も分かりやすい指標。
「うちは突発的な事態に備えて、固定費の6か月分の現金を常に確保しています」と、その数字の根拠を説明できればどうでしょう。「この社長は、きちんと数字で経営を考えているな」と、信頼度は格段に上がります。これは、いざという時の融資交渉で非常に有利に働きます。

中小零細企業は各会社の個性が強くでます。それは商売を反映するお金にも言えます。ですので、「月商の〇か月分」という一般論から卒業し、自社の損益計算書と貸借対照表を眺めてみてください。そこには、あなたの会社だけに必要な「安心できる現金の額」の答えが必ず書かれています。数字は、あなたの経営の羅針盤です。まずは固定費の把握から、ぜひ始めてみてください。

2025.11.06

本書では、ChatGPTをはじめとする生成AIを活用して、求人専用ページ(LP)をHTMLで直接作成する方法を紹介してきました。画像ファイルと求人情報を用意し、AIに「HTML構造で出力して」と依頼すれば、かなり実用的な求人ページが生成されます。とくに、求職者に「職場のリアルな空気感」を伝えるには、テキストと写真を自社で用意し、それらを活かした構成で丁寧にページを組み立てることが重要です。

こうした作業は、従来であれば専門のWeb制作会社に依頼するか、HTML/CSSの知識を持つスタッフが社内にいなければ難しいものでした。しかし今では、AIを活用することで、ゼロから自力で作ることも十分に現実的な選択肢となりました。

■ AIエージェントは「頼れるけど、全部はやってくれない」

最近では、AIエージェント(Agent)と呼ばれる仕組みも登場しています。これは、ユーザーの指示を受けて「調査 → 要約 →文書化」など一連のタスクを自動でこなす、まさに“秘書のようなAI”です。今後、HTML編集や画像生成、サイトの公開作業までもAIが一括で担う未来が来るかもしれません。

しかし、本稿執筆時点では、AIエージェントがノーコードツールと連携して、自動的にクラウド上にページを公開したり、デザインを操作したりすることは難しいのが現状です。まだ「素材を作る」「構成案を出す」までが中心で、実際にページを仕上げて公開する作業は、人間側の手作業が必要になります。

■ 自分で作るなら「ペライチ」や「Wix」も有効な選択肢

そのようなときに役立つのが、ペライチ、Wix、STUDIO、Jimdoなどに代表されるクラウド型ノーコードツールです。これらは、ドラッグ&ドロップの操作で美しい求人ページを作成できるサービスで、特にWeb制作の知識がない人にとっては強力な味方です。

テンプレートを選んで、写真や文章を差し替えるだけで、プロが作ったようなページが完成するのは大きな魅力です。スマホ対応もデフォルトで備わっており、フォーム機能やSNS連携などもワンクリックで追加できます。クラウド上で完結するため、サーバーやFTPの知識も不要で、公開までも非常にスムーズです。

ターゲットが若年層の場合や、ビジュアル面の印象が強く影響する業種(美容・アパレル・飲食など)では、「見た目の美しさ」も採用活動の成否に直結することがあります。そうした場合は、ペライチやWixのようなノーコードツールを活用するのは非常に理にかなった戦略と言えるでしょう。

■ でも、一番大事なのはやっぱり「中身」

ただし、どれだけスタイリッシュなページを作っても、「内容」が薄ければ、応募者の心には届きません。求職者は、数ある求人の中から「自分に合った職場」を探しています。おしゃれなレイアウトやきれいな配色よりも、「自分がここで働く姿を想像できるかどうか」が判断基準になるのです。

そのためには、やはり中身――つまり、「写真」「社員の声」「仕事内容」「理念や価値観」など、自社のリアルな情報が不可欠です。本書で紹介したように、ChatGPTを活用して構成を整えたり、社員にアンケートをとってインタビュー記事を作ったり、日常のスナップ写真を活用したりすることが何より大切です。

ノーコードツールは、そうして準備した“中身”をより魅力的に「見せる」ための手段にすぎません。順序を間違えてはいけません。まずは伝えるべき情報をしっかり用意し、それを最適な形で届けるためにツールを選ぶ――この順番を守ることが、採用LPづくりの基本です。

■ 最後に:中小企業にとっての現実解として

特に中小企業や小規模事業者にとって、時間もお金も人手も限られています。その中で「なるべく費用を抑えつつ、応募者にしっかり伝える求人ページを作りたい」と考えるなら、「AIで中身を作り、ノーコードツールで仕上げる」という組み合わせは、現実的かつ効果的な方法です。

理想を言えば、プロのデザイナーに外注したり、撮影チームを呼んだりするのが一番かもしれません。しかし、限られたリソースで採用を成功させるには、「中身を自分で作り、見せ方を工夫する」という姿勢が必要です。そのための道具として、生成AIとノーコードツールは、これ以上ないパートナーになってくれるはずです。

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