『中小企業の財務の強化書』
古田土満(著), 川名徹(著)
日経BP (2024/12/28) 1,980円
【感想】
著者は、監査法人勤務を経て1983年に独立。税理士法人古田土会計および株式会社古田土経営を設立し、現在は会長を務める。中小企業の経営支援に特化し、数字を“見せる”ことで経営改善を促す「古田土式月次決算書」や「経営計画書」の活用を推進。36期連続増収、年商20億円超を達成するなど、会計事務所経営の成功モデルとして注目されている。著書も多数あり、実践的な内容が経営者から高く評価されている。2024年には長年の中小企業支援の功績により「旭日単光章」を受章。数字に強い社長を育てることを使命に、今も現場での支援を続けている。そんな著者が中小企業経営者向けに書いた一冊です。
今から10年以上前、私がこの業界に入ったばかりの頃、勝手に「師匠」と仰ぎ、中小企業の経営分析の手法を学んだのが古田土満先生でした。当時から、税理士業をはじめとした士業は、長期的にはAIに代替される可能性が高いと考えており、その中で「どのような価値を新たに創造していくか」が起業時の課題でした。そんな中で出会った古田土先生の手法は、机上の空論ではなく、現場に根ざした非常に実践的なものであり、中小企業にとって本当に役立つ内容でした。私はこのアプローチを取り入れ、さらに中小企業診断士としての視点から経営改善手法である「ビジネスモデルキャンバス」(※先月のブックレビュー参照)と連携させることで、“経営”を見せる、より実効性の高い支援方法へと発展させていきました。中小企業経営者にとって本当に基本になる考え方です。ぜひ読んでいただきたい1冊です。
【以下、引用】
初めてお会いした経営者には、必ず「月次決算」をお勧めしています。「経営のかじを取るために、毎月、損益計算書や貸借対照表、キャッシュフロー計算書を出して月次決算をしましょう。
なぜ売上原価と販管費ではなく、変動費と固定費に分けるべきかというと、ほとんどの会社では当月の売上高や利益しか見ていないからです。経営に必要な情報は、売上高の増減や粗利益率の増減により経常利益がいくら増減するか、何%増減するかなのです。
経営のかじ取りをするために、いま事業がどうなっているのかを見るのが月次損益計算書、会社の財務状況はどうなっているかを把握するのが月次貸借対照表、さらに手元にある現預金とその出入りがどうなっているかを知るのが月次キャッシュフロー計算書です。
損益計算書の目的とは利益です。…利益計画の利益と実績を毎月チェックし、一致させることです。当月の実額値だけでなく「計画値との違い」も見て原因を探り、問題があれば対策を打つのです。
貸借対照表は会社の財務体質を表す健康診断書です。常にチェックして体質改善に努めていく、会社の財務状態を健康にしていくことは経営者の大事な仕事です。