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ブログBlog

2025.04.01

『知能とはなにか』

田口善弘

講談社(2025/1/23) 1,012円

 

【感想】

著者は、1961年東京生まれ。中央大学理工学部教授。1995年『砂時計の七不思議』で講談社科学出版賞受賞。以降、機械学習を活用したバイオインフォマティクス研究に従事し、2021〜2024年に「世界で最も影響力のある研究者」トップ2%に選出。近年はテンソル分解研究に注力し、2019年に英語の専門書を出版。著書に『生命はデジタルでできている』『はじめての機械学習』『学び直し高校物理』などがある。そんな物理学者が生成系AIの本質をもとに生成系AIと知能について書いた一冊です。

生成系AIはChatGPT以降、「なにかすごい存在」として捉えられがちです。ところが実際には、物理学者たちが20世紀末に盛んに研究していた「非線形・非平衡・多自由度系」を用いた、いわば“世界シミュレーター”に過ぎないのだと言います。しかも、その中身―たとえばLLM(大規模言語モデル)であれば―は、単に「言語と言語の距離をマッピングしている」にすぎません。生成系AIとは、人間とは構造の異なる世界シミュレーターである以上、人間のような「自我」を持つことはない、と著者は指摘します。とはいえ個人的には、「もしこのマッピングが限界を超えるほどに拡大されたら(実際には利用可能な情報が不足する)、人間とは異なる形で“自我”のようなものが生まれることはないのだろうか?」という疑問が湧きますが。そうした想像はさておき、本書は「生成系AIが実際に何ができて、どこまでできるのか」を、誇張も過小評価もせず、リアルに捉えるきっかけを与えてくれます。そして大切なのは、その現実を冷静に受け止めたうえで、これからの生活や仕事にどうAIを活かしていくかを考えることです。未来に振り回されるのではなく、AIを道具として上手に使いこなす――そのための第一歩になる一冊だと思います。

 

【以下、引用】

生成AIがロボットにもたらしたインパクトはいろいろあるが、その一つはなんと言っても視覚の獲得だろう。・・・工業用ロボットはかなり前から実用化されていて製造ラインのオートメーション化に大きく貢献してきた。だが、そこにはある大きな限界があった。ほぼ定型の同じ作業しかできないということだ。・・・それはなぜかと言えば、ロボットが教えられていたのはカメラの画像がこうなったら手を伸ばしてつかめ、というルールだけであって、それが「ラインを流れてきた部品だ」と認識する世界モデルに基づいた行動ではなかったからだ。

・・・

だが、よい世界シミュレーターである生成AIは、入力された画像データをもとに特定の物体を選び出したり、的確な3次元配置をロボットに教えるみたいなことが可能になった。このため、ロボットは、全く未知の状況でも世界を認識して行動ができるようになった。

 

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2025.04.01

あいさつ

大澤賢悟です。 2月の登山の影響か両手の指先にしびれが出ました。確定申告期の忙しさも重なることを考慮し、健康維持のためにお灸を始めました。とはいえ専門的なことはわからないので、万能のツボとされる合谷と足三里に毎日すえています。ただ、徐々に良くなったもののお灸の効果か自然治癒かはわかりません。それでも1個10〜20円なので、経済的にもおすすめの健康法です。

 

 

税務調査がAIで効率的に

令和8年9月24日から、国税庁の基幹システムである国税総合管理システム(KSK)が「KSK2」へとバージョンアップされます。​この新システムでは、従来の税目別・事務系統別に分かれていたデータベースやアプリケーションが統合され、納税者情報が一元的に管理されるようになります。​さらに、外部データの取り込み機能も強化されます。SNSなどの外部情報源から自動的にデータを収集する可能性があります。そうなれば、申告内容と外部情報との整合性を確認し、申告漏れや不正の可能性をより的確に把握できるようになります。また、AIを活用した分析ツールの導入により、税務調査対象者の選定や調査の効率化が進められています。​これまでに蓄積された情報を基に、AIが申告漏れの可能性が高い納税者を判定し、調査官の判断をサポートすることで、より精度の高い税務行政になりそうです。今までのような逃げ得は難しそうですね。

 

 

AIエージェントの時代へ

2月3日、ChatGPTに新機能「Deep Research」が追加されました。この機能は、複雑なリサーチ作業を自律的に行うAIエージェントです。AIエージェントとは、他のAIやプログラムと連携しながら、自ら判断して問題を解決する高度な自立型AIを指します。ユーザーが指定したトピックについて、ウェブ上の複数の情報源を5〜30分かけて調査し、引用付きの詳細なレポートを自動生成します。OpenAIの最新モデル「o3」を基盤にしており、テキスト・画像・PDFなど多様な形式の情報を解析可能です。金融・科学・政策・エンジニアリングなど、専門性の高い分野での活用が想定されています。この流れはChatGPTに限らず、Google Geminiなど他のAIにも広がりつつあります。ChatGPTのリリースからわずか2年で、ここまでAIのリサーチ能力が進化したことは驚きです。今後、生産性の差は「AIを使いこなせるかどうか」で決まる時代が訪れるでしょう。

ただし、AIの出力結果には誤情報が含まれる可能性もあるため、内容の検証は引き続き重要です。

 

 

電子帳簿保存法の要件が緩和されても現実的な運用には注意

電子帳簿保存法では、電子取引により授受した請求書や領収書などのを、原則として電子的に保存することが義務付けられています。ただし、税務署長が「やむを得ない事情」があると認めた場合には、紙での保存が一時的に認められる猶予措置も設けられています。さらに、最近ではAmazonなどのECサイトやETC利用時の領収書・請求書の保存要件が一部緩和されるなど、現場の実情に配慮した運用も見られます。しかし、国税庁の基本方針は「電子化の推進」です。将来的には、制度が厳格に適用される可能性が高いと考えられます。したがって、今はまだ猶予があるからと安心せず、制度の本格運用に備えて、事前の準備を怠らないようにしてくださいね。

 

 

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2025.03.01

『メタバースは死んだのか?』

今井翔太

徳間書店 (2024/11/29) 1,760円

 

【感想】

著者は、2014年、Epic Games Japanに入社し、Unreal Engineのエヴァンジェリストとして活動。さらにゲーム「Fortnite(フォートナイト)」のコミュニティマーケティングも担当。ゲーム系インフルエンサーたちからの信頼が厚く「エピック今井」の名で親しまれた。現在は株式会社UP HASH代表取締役。様々な企業のエヴァンジェリストとして活動中。メタバース黎明期からメタバース業界に携わるエンジニアとしての視点からメタバースについて書かれた一冊です。

最も成功しているメタバースの一つであるフォートナイトのエヴァンジェリストが、「メタバースは技術的な空間ではなく、人と人の心が通じ合う空間である」という視点を持っているのが興味深い。確かに、3D技術や仮想空間、NFTなどは手段であり、それ自体を活用することが目的なのではなく、それを使って何をするかが重要です。現在のWeb2.0環境がSNSを中心に回っているのは、文字通り「ソーシャル」だから。LINEのように現実世界の人間関係をインターネット上に投影した濃密なつながりもあれば、Xのように非常にライトな関係も存在します。その中で、さまざまなグループが生まれ、ユーザーは出入りを繰り返す。使い方は人それぞれだけど、目的は何らかの形で他者とつながることです。この視点から見ると、SNSも一種のライトなメタバースと捉えることができます。では、そこに新しい技術を投入することで、どのような人間関係が生まれるのか?また、AIが加わることで、疑似的な人間関係がどのように形成されるのか?こうした点に、新たなビジネスチャンスが潜んでいそうです。本書は、技術主導になりがちなメタバースの議論に、新しい視点を加えています。

 

【以下、引用】

メタバースの本質は「人と人との心が通じ合う空間」だ。重要なのは技術そのものではなく、コミュニケーションを取り合うことで生まれる人と人のつながりである。

メタバースはオンライン上の仮想空間だ。だから国境を越えて、いつでもだれでも入ることができる。となると、民族、言語、文化に関係なく、共通の興味や目的を持つ人々で新たなコミュニティが作られていく。つまりメタバースはゲームにかぎらず、ビジネス、教育、そのほかさまざまな社会活動に空前の変革をもたらす可能性があるわけだ。私たちのあらたな生活空間を切り開く決定的なテクノロジーだと言える。

VRデバイスがなければメタバースは成立しないのかと言えば、そんなことはない。NFTも同じだ。…VRやNFT関連のビジネスで利益を上げたい人たちがメタバースという言葉を濫用した結果、それらがメタバースに必須であるかのような印象になってしまった。それはメタバースの本質ではない。大きな誤解を招いているのである。

現実と違う世界に没入できて、その世界に不特定多数が参加できるコミュニケーション機能があるのなら、それはメタバースと言っていい。

 

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2025.03.01

あいさつ

大澤賢悟です。「10年に一度の寒波」と聞くたびに、子供の頃の冬を思い出します。あの頃は池が凍ったり、雪が積もったりするのが当たり前でした。しかし最近は、寒いとはいえ昔ほどの厳しさを感じません。気象庁のデータによると平均気温は約1度上昇していますが、それ以上に暖かくなったように感じます。とはいえ、思いがけず冷え込む日もあるため、体調管理は気を付けたいですね!

 

トランプ再選がもたらす仮想通貨市場の変動と今後の展望

トランプ大統領の再選で仮想通貨市場がにぎわっています。選挙後、ビットコインの価格は急騰し、2024年12月には初めて10万ドルを超えました。急上昇した背景には、トランプ氏の仮想通貨に対する前向きな姿勢があります。規制の緩和を推進する意向を示し、米証券取引委員会のトップに仮想通貨推進派の人材を任命しました。この政策の影響により、投資家の期待が高まり、市場全体の流動性が向上。さらに、独自の仮想通貨「TRUMPを発行したことも話題となり、市場の活性化を後押ししています。仮想通貨に対する肯定的な政策が打ち出されることで、新たな投資資金が流入し、価格の上昇を支えています。一方で、トランプ政権の仮想通貨推進策にはリスクもあります。規制緩和が進めば、市場のボラティリティが高まり、価格の急変動が起こる可能性があります。今後の規制の行方や市場環境の変化を見極め、持続的な価値を提供することが重要です。

 

 

差別化とは1,000円のすき焼きに勝つ商品・サービスを考えること

すべての業種において競争で勝つためには、価格以外の差別化が不可欠です。中小企業は低価格競争をすることができません。価格で勝負してしまうと利益率が低下し、事業の持続性を損なう危険性があります。差別化とは、簡単に言えば1,000円のすき焼きに勝つ方法を考えることです。競争激しい飲食業では1000円未満で提供される牛丼チェーンのすき焼きがあり、高級店の味には及ばないものの、牛肉という高価な素材を用いて十分な美味しさを実現しています。このように、大企業は持ち前の仕入れ力を活かし、価格と品質のバランスを工夫し、手軽さを提供することが多くの顧客に支持されています。どの業種でも、単なる価格競争から脱却し、素材の選定や技術力、サービスの質、さらにはブランドのストーリー性など、多角的な価値を提供することが重要です。顧客に「この価格を支払う価値がある」と感じさせる工夫を重ねることで、今までよりも少しでも高い付加価値を生み出し、客単価を向上させ、持続的な成長と競争優位を確立していく必要があります。

 

 

 

儲かってきたら投資話に要注意!

事業が軌道に乗ると、「高利回り」「元本保証」と甘い言葉で投資話を持ちかける人が増えます。未公開株、海外不動産、暗号資産など、実態不明な案件が多く、「社長なら当然」「他の経営者もやっている」 などとプライドをくすぐり、即決を迫るのが特徴です。特に「顧問税理士には相談しない方がいい」と言われたら要警戒。対策として、即決せず、専門家に相談し、本業に再投資する ことが重要です。さらに、投資話が本当に合法かどうか、金融庁の登録業者かを確認するのも有効です。確実に儲かる投資話は存在しません。経営者として冷静な判断をし、詐欺に巻き込まれないよう注意しましょう!

 

 

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2025.02.01

『生成AI時代の「超」仕事術大全』

保科学世, アクセンチュアAIセンター

東洋経済新報社 (2023/11/1) 1,980円

 

 

【感想】

著者は、アクセンチュアにてAI・アナリティクス部門の日本統括、およびデジタル変革の知見や技術を結集した拠点「アクセンチュア・イノベーション・ハブ東京」の共同統括を務める。AI HUBプラットフォームや、業務領域ごとに体系化したAIサービス群「AI POWERED サービス」、需要予測・在庫補充最適化サービスなどの開発を手がけるとともに、アナリティクスやAI技術を活用した業務改革を数多く実現。厚生労働省保健医療分野AI開発加速コンソーシアム構成員などを歴任。一般社団法人サーキュラーエコノミー推進機構理事。大局的な将来のAI時代を予測する一冊です。

アクセンチュアの分析によると、全労働時間の40%がLLM(大規模言語モデル)の影響を大きく受けるとされています。業種による違いはありますが、事務作業においては63%が強い影響を受け、さらに小さな影響を含めるとその割合は77%に達します。一方で、法務では強い影響を受ける割合は44%にとどまるものの、小さな影響を含めると100%に及びます。このように、LLMだけでも影響の範囲は少なくありません。さらに、その他のAI技術が加われば、影響の範囲はさらに広がるでしょう。また、近年ではAIが物理的な環境とのインターフェース(例えばロボットアーム)を持つようになり、AIが業務に与える影響は想定以上に広がる可能性があります。こうした背景を踏まえると、AIを業務に取り込むだけでなく、AIと対立するのではなく活用する新たなビジネスモデルへの変革が必要です。それは未来の課題ではなく、まさに今取り組むべき重要な課題であると感じられます。

 

【以下、引用】

MELDASフレームワーク

マインドセット:従来とは根本的に異なるアプローチを考え、あるべき業務プロセスを想像する

エクスペリメント:従来通りの業務プロセスだと生成AIによる効果の果実を最大限に得ることができない

リーダーシップ:人間とAIの協働を促進し、AIの責任ある使用にコミットする

データ:最新の注意を払ってデータを取り扱う

スキル:人間とAIが融合するスキルを開発する

ホワイトカラーの仕事はデスクワークからフィールドワークにシフトするだろう。調査やレポート作成といったデスクワークは、生成AIの力を借りてできるだけ効率化し最小限にし、それよりは現場に出て課題を五感で拾うべきである。世の中のトレンドや社会課題に対するアンテナの高さ、精度の高い五感センサーとしての洞察力や、討議や周知のためのコミュニケーション能力、人を動かすリーダーシップ、物事を動かす情熱、最終判断・意思決定に必要となる倫理性、それらは人間しか持っていないものであり、そういったことにより多くの時間を費やす。課題を設定するのは人である。そして、生成AIと共同して“知”の融合・開発が起こることにより、高い生産性・創造性で様々な社会課題を解決していけるだろう。

 

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