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2026.07.01

『宗教は地理から学べ』

宮路秀作(著)

SBクリエイティブ(2025/3/27) 1,870円

 

【感想】

著者は代々木ゼミナールで地理講座を担当する名物講師です。「なぜそうなるのか」を読み解く独自の授業で高い支持を集めています。日本地理学会企画専門委員会委員。著書に『経済は地理から学べ!』『現代世界は地理から学べ』『宗教は地理から学べ』など多数。単著25冊、累計発行部数31万部超。2017年度日本地理学会賞(社会貢献部門)受賞。Yahoo!ニュースオーサーとしても活動し、地理学の視点から国際情勢や経済をわかりやすく解説しています。本書はそんな著者が2025年に地理の視点から宗教にフォーカスを当てた書籍です。

近年、地政学という言葉を耳にする機会が増えました。政治や経済が地理の影響を受けるのは当然ですが、本書を読むと、宗教もまた地理的条件に大きく左右されてきたことが分かります。

例えば、過酷な砂漠地帯だからこそ唯一絶対の神を求める一神教(ユダヤ教・キリスト教・イスラム教)が発達したという見方や、生き物にあふれた地域だからこそ輪廻転生の思想(ヒンドゥー教・仏教)が生まれたという考え方は非常に興味深いものでした。もちろん、その後の宗教の発展には地理だけでなく政治的要因も大きく関わっています。しかし、「なぜその地域でその宗教が広まったのか」という視点を持つことで、歴史や国際情勢の見え方は大きく変わります。

現在の中東情勢を見ても、宗教的背景を理解せずに本質を捉えることは難しいでしょう。その意味で本書は、世界の主要な宗教を地理という切り口から俯瞰し、地理・歴史・政治を結び付けて考えるための優れた入門書だと感じました。

宗教の解説書というよりも、世界情勢や国際政治を理解するための教養書として読む価値のある一冊です。今後の世界経済やビジネス環境を考えるうえでも、宗教と地理の関係を知っておく意義は大きいと思います。

 

【以下、引用】

現代では、宗教法人である神社本庁が全国の神社を管理しています。各都道府県には神社庁が置かれ、神社庁単位でYoutubeチャンネルを開設するなど、意外と「ナウい」運営がされています。

信仰を深めるかどうかは各自が選ぶことですが、日本の分化を理解するために、神道を学ぶことは不可欠であるように思えます。…「信仰していないけど神頼みする」というのも良いですが、漫画「シャーマンキング」(武井宏之著)に出てくる主人公の、「神頼みじゃなくて、自分に誓いを立てること」という初詣に対する考え方が粋な現実解に思えます。

初めのほうは血縁がつながっているかボヤっとしているとはいえ、今上天皇で126代という、人間の寿命では気が遠くなるくらい永い年月をかけて、先人たちが神道という日本の文化的な遺産を守ってきました。

これをもって「愛国心がどうの」というつもりはありませんが、タイムマシンで歴史を改ざんするくらいでないと他の国が真似できない天皇という存在と皇室制度が、日本ではいまだに続いています。少なくともこれは日本固有の価値であり、強みであると思います。ビジネス用語で表現するなら、これは明らかに日本のコアコンピタンスの一つです。この価値を理解して将来の日本へつないでいくことは、昨今叫ばれるグローバル社会の中で、日本の生存戦略の一つとしてかなり有望ではないでしょうか。

 

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2026.07.01

あいさつ

大澤賢悟です。

少し前までは水不足の話も出ていましたが、今年は梅雨がきちんと梅雨をしており、

台風も来て雨が多い状況です。そのため、7月後半の梅雨明けが見えてくるまでは、

なかなか山の予定が立てにくくて、個人的には困っています。

さて山の予定といえば、今年から山小屋の予約方法も少し変わってきました。ネット予約、

事前決済、キャンセル料の設定などを導入する小屋が増えています。山小屋も当然ビジネスなので、予約だけ押さえられて直前キャンセルされると困るという事情は理解できます。食材、人員、ヘリ輸送などを考えれば、キャンセル料を取る方向になるのは自然だと思います。

人気の山域で人気の時期がすぐ埋まることは相変わらずですが、例年よりは予約が埋まるまでに少し時間がかかっている印象です。また、キャンセル料が発生する時期が前倒しされているため、従来より早い段階で予約の空きが出る可能性が高そうです。キャンセルについては、台風などの天候不良は考慮されるかもしれませんが、体調不良などの自己都合ではキャンセル料なしにならないケースが多くなっています。

その結果、「せっかく予約したから」「キャンセル料がもったいないから」という理由で、無理に登る人が増える可能性はあります。ただ、それで遭難した場合に山小屋のせいにするのは違うと思います。登るか、やめるかを判断するのは最終的には登山者本人です。山小屋の予約制度に影響を受ける面はあっても、無理をして登った責任まで山小屋に負わせるべきではないと思います。夏になって山小屋が叩かれることがないことを願っています。

 

 

AI議事録作成機器「Plaud Note Pro」の利用について

当事務所では、これまで面談内容について担当者によるメモをもとに記録を作成しておりましたが、今後は面談内容をより正確に記録し、お客様への提案内容の充実を図るため、8月ごろよりAI議事録作成機器「Plaud Note Pro」を活用した議事録の作成を予定しております。

面談内容は「Plaud Note Pro」を利用して文字データ化し、AIを活用した議事録の作成、ご相談内容の整理及び提案事項の検討に利用いたします。

税務・相続・経営に関するご相談では、面談時には重要性が高くないと思われた事項が、その後の検討において有効な提案や対策につながる場合があります。また、複数の制度や選択肢が関係する案件では、担当者だけでは見落としてしまう論点が存在する可能性もあります。

そのため、作成した議事録をもとにAIを活用した論点整理や検討事項の抽出を行い、人だけでは気付きにくい選択肢や留意点についても確認することで、より良い提案につなげたいと考えております。なお、最終的な検討及び提案については担当者が内容を確認したうえで実施いたします。

文字起こし及び分析に利用するAIサービスについては、入力された情報がAIの学習データとして利用されない契約及び仕組みを採用しております。そのため、お客様との面談内容が外部のAIモデルの学習に利用されることはなく、情報が外部へ漏洩することもありません。

また、議事録作成の過程で生成されるデータについては、当事務所の業務遂行のためにのみ利用し、法令及び当事務所の情報管理方針に基づき適切に管理いたします。

当事務所では、AIを活用しながらも、最終的な判断及びご提案については必ず担当者が責任をもって確認したうえで実施しております。お客様に対して、より質の高いご提案及びサービスの提供につなげるため、何卒ご理解、ご協力のほどよろしくお願い申し上げます。

 

 

働く親が払う保育料は必要経費?

税法でなかなか面白い訴訟が行われています。内容は、個人事業主の弁護士が、保育料を所得税の必要経費として認めるべきだとして国を訴えています。従来の実務では、保育料は育児のための支出であり、事業と直接関係しない家事費とされてきました。これに対して原告側は、保育料は仕事をする時間を確保するための費用であり、業務を行うために必要な支出だと主張しています。

理屈としては十分に検討価値があります。特に、所得税法に「直接関連性」という要件が明確に書かれていないにもかかわらず、実務上その要件で経費性を否定している点は、税務訴訟としても面白い論点です。

ただし、現実的には勝つためのハードルは相当高いです。現在は東京地方裁判所で争っていますが、税務訴訟で実務を大きく変えるには、最終的には最高裁で勝つ必要があります。しかし、本訴訟は仮に納税者が勝つと影響が大きすぎるため、従来の見解が踏襲され、勝つ可能性はかなり低いです。なお、仮に勝ったとしても、サラリーマンには給与所得控除があるため、一般の会社員に影響が出ることはまずないでしょう。

 

 

消費税1%への迷走をチャンスに

高市政権が、食料品の消費税を2年間だけ1%にする方向で進んでいます。これに対して農水省や自民党内からは、農家の収入減を懸念する声が出ています。

ただ、この話は少し違和感があります。小規模農家の多くは売上1,000万円以下の免税事業者であり、消費税を受け取っても納税する必要がありません。さらにJA経由の一定の取引では、いわゆる農協特例により、農家がインボイスを出さなくても、買い手側は仕入税額控除を受けられます。つまり、農家側は免税のメリットを受けつつ、取引先側の控除も守られやすい仕組みになっています。

そのうえで、食料品の税率が下がるから収入が減る、だから補助金で埋めるべきだ、という話になると、それはどうなのかと思います。もともと特例で守られている部分があるにもかかわらず、さらに補助で補填するのか、という問題です。

一方で、飲食店が厳しくなるので対応すべきだという意見もあります。ただ、テイクアウトも同じく1%になるのであれば、消費者が単純に自炊だけへ流れるとは限りません。むしろ、外食ではなく持ち帰りを選ぶ層が増える可能性もあります。制度変更が突然行われるわけではなく、事前に一定の時間がある以上、飲食店側も「厳しくなる」で止まるのではなく、ビジネスとして対応策を検討すべきだと思います。価格設定、テイクアウト商品の設計、原価率、販売導線を早めに見直し、減税を逆に集客や客単価向上につなげる準備をしておく必要があります。

現時点では、大まかな方向性だけが先行しており、制度の詳細がどうなるのかはまだはっきりしていません。そのため、当事者にとっては非常に悩ましい状況だと思います。しかし、経営者である以上、制度が固まってから動くのでは手遅れです。先に起こり得る変化を想定し、早めに手を打つ必要があります。環境変化をただのピンチとして受け止めるのではなく、価格設計や商品構成、販売方法を見直すきっかけとして、むしろチャンスに変えてほしいですね。

 

 

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2026.06.02

『現役東大生が書いた

地頭を鍛えるフェルミ推定ノート』

東大ケーススタディ研究会(著)

東洋経済新報社(2009/9/18) 1,547円

 

【感想】

エンリコ・フェルミは、ノーベル物理学賞を受賞し、世界初の原子炉を実現したことで知られる物理学者です。彼の名前が付いた「フェルミ推定」は、正確なデータがなくても、手元にある情報から大まかな答えを導き出す考え方です。名前の由来には、フェルミ自身が概算の達人だったことや、学生にこのような問題を出すのを好んでいたことなどが挙げられます。

有名な問題として、「シカゴにピアノ調律師は何人いるか」があります。人口や世帯数、ピアノ保有率などの仮説を積み上げながら答えを推定していきます。目的は厳密な正解を求めることではなく、限られた情報から全体像を把握することにあります。

経営も同じです。すべての情報が揃うまで待つのではなく、手元の情報から仮説を立て、意思決定していかなければなりません。その姿勢こそがフェルミ推定の本質です。数字に強い人ほど、実は概算力を大切にしています。

本書は、フェルミ推定を身につけるための入門書です。やや細かい部分まで解説されていますが、「何から考えればよいのか分からない」「発想の糸口が見つからない」という人には非常に役立ちます。本書で基本を学んだ後は、ローレンス・ワインシュタイン、ジョン・A・アダム著『フェルミ推定力養成ドリル』(草思社文庫)に取り組んでみてください。

概算力が身につくと、経営の現場でもとても役立ちます。経営者に求められるのは、細かな数字を扱うことではなく、売上や利益、市場規模、競合の動向などを上1桁から2桁程度の精度で把握し、大きな流れをつかむことです。市場や競合の状況を素早く概観し、自社の立ち位置を考え、次の一手につなげる。フェルミ推定はそのための武器になります。

 

【以下、引用】

フェルミ推定は、基本的に次の5つのステップで進めていきます。ここでは「日本に鞄はいくつあるか?」という問題を例にステップを順に解説します。

①前提確認

鞄をどのように定義するか(定義)、どのような鞄を数えるのか(範囲の限定)。

ボストンバッグからポーチまで種類は多様。所有者別にみても、お店に飾ってある法人が所有する鞄や、中高生が学校にもっていく個人が所有する鞄がある。

②アプローチ設定

基本的な指揮を設定します。

日本における鞄の数=日本の人口×鞄の平均所有数

③モデル化

上記の式の日本の人口や鞄の平均所有数を分解するもの。

日本における鞄の数= (男女×各世代)×(各セグメントの鞄の平均所有数)

④計算実行

⑤現実性検証

①~④のステップで自分が設定した計算式の正しさや数の性格さをチェックする

 

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2026.06.02

あいさつ

大澤賢悟です。

今年は暑いですね。5月にもかかわらず、すでに30度を超える日が続いています。

このペースでいくと、7月や8月には40度を超える日が出ても不思議ではありません。

長男はラグビーをやっています。先日も試合を見に行きましたが、ラグビー場にはほとんど

日よけがありません。選手たちは炎天下の中で全力疾走し、激しくぶつかり合い、何度も立ち上がっては走り続けます。見ているだけでも体力を消耗しそうな環境です。試合が終わった後の姿を見ると、その過酷さがよく分かります。さすがに疲労困憊です。それでも、しっかり食べて水分を補給し、十分に休むと回復するので、若さはすごいなあと感じます。

しかし、我々はそうはいきません。暑さでバテてしまうと、なかなか回復しません。特に経営者が倒れると、中小企業は大きな影響を受けます。場合によっては会社そのものの存続にも関わります。無理をせず、しっかり食べて、しっかり休む。今年の夏も暑くなりそうです。体調管理を徹底し、無事に乗り切しょう。

 

 

人手不足は本当に続くのか?

現在は少子化による人材不足で、学生優位の「売り手市場」が続いています。企業は初任給を引き上げ、人材確保競争を繰り広げています。しかし、経済産業省は2040年に大卒・院卒の文系人材が約80万人余るとの試算を公表しました。一方で、AIやロボットを活用する理系人材は不足すると予測されています。

ただ、私はもう少し長い目で見る必要があると思います。現在は理系人材不足が話題になっていますが、その理系人材が担う仕事そのものがAIによって効率化・自動化される可能性があります。実際、プログラミング、データ分析、設計、資料作成などは生成AIによって急速に生産性が向上しています。今は不足している理系人材も、10年後、20年後には「余る側」に回る可能性がないとは言えません。

また、「ブルーカラーは安泰でホワイトカラーが危ない」という見方もあります。確かに現時点では、現場作業はAIより人間の方が得意です。しかし、一部の代替されにくいブルーカラー職を除けば、フィジカルAIやロボット技術が進化すれば状況は変わります。工場の多能工、物流倉庫の作業員、建設現場の一部業務なども徐々に機械化される可能性があります。すべてが置き換えられるわけではないですが、20%、30%と置き換えられた場合、大きな影響が出ます。

そう考えると、文系か理系か、ホワイトカラーかブルーカラーかという区分そのものが、将来的にはあまり意味を持たなくなるかもしれません。重要なのは「AIやロボットを使う側に回れるか」「AIでは代替しにくい付加価値を生み出せるか」という点です。

経営者の立場から見ると、さらに別の視点も必要です。人口減少はほぼ確実であり、「人が採れない」という前提で経営を考えなければなりません。従来のように人材採用だけで人手不足を解決するのではなく、AIや自動化ツールを活用しながら少人数で高い成果を出す組織づくりが求められます。

私自身、税理士・経営コンサルタントとして生成AIを活用していますが、以前は数時間かかっていた作業が数十分で終わることも珍しくありません。人材不足を嘆く前に、「この仕事は本当に人がやる必要があるのか」を見直すことも重要です。

人手不足だから安心、理系だから安泰という時代ではなくなりつつあります。これからは個人も企業も、AIを脅威として見るのではなく、使いこなす前提で成長戦略を考えることがますます重要になるのではないでしょうか。

 

 

農地もマッチングの時代へ 地図で見つける買い手・借り手

愛知県で面白い取り組みが始まっています。

航空測量会社の中測技研(名古屋市)が開発した「未来の農地マップ」は、農地を売りたい人・貸したい人と、農地を買いたい人・借りたい人を地図上で結び付けるマッチングサービスです。

農地所有者は、自分の農地を地図上で選び、耕作状況や希望価格などを登録します。一方で、農地を探している人は、希望する農地を選び、耕作経験や栽培予定作物などを入力して申請します。その後、自治体が間に入り、条件が合えば当事者同士で契約を進める仕組みです。

現在は愛知県南部の田原市、豊橋市など4市町で導入されており、すでに成約事例も出ています。利用者からは「探しやすい」「手続きが簡単になった」と好評とのことです。

高齢化や担い手不足により、農地を維持することが難しくなる中、このサービスは農地の流動化を促し、耕作放棄地の防止につながる可能性があります。今後はアプリ化や収益シミュレーション機能の追加も検討されているそうです。このサービスを活用することで、様々なメリットがあります。例えば、次のような事例です。

【活用例①】

農業を始めたい人が、自宅近くの農地や条件の良い農地を地図から探し、購入や賃借の申し込みを行います。従来よりも効率的に農地を探せるため、新規就農を早く進めることができます。

【活用例②】

相続で農地を取得したものの、自身では耕作する予定がなく管理にも困っている場合、未来の農地マップを活用して買い手や借り手を探すことができます。農地は一般の不動産と異なり売却先が限られます。マッチングサービスで農地の有効活用や処分方法の選択肢の一つになるかもしれません。

相続税の相談でも、「農地を相続したが今後どうしたらよいか」という話はよく出てきます。農地を持ち続けるだけでなく、「貸す」「売る」という出口戦略を考える上で、一度チェックしてみる価値のあるサービスだと思います。

※農地の売買・賃貸には農地法上の許可や要件が必要なため、実際に契約できるかどうかは自治体や農業委員会の審査によります。サービスに登録したから必ず売買・賃貸が成立するわけではありません。

 

 

完全養殖ウナギの試験販売開始!

世界で初めて、完全養殖ウナギの試験販売が始まりました。ウナギは稚魚(シラスウナギ)の不漁が続き、ニホンウナギは絶滅危惧種にも指定されています。このままでは将来、今のように気軽にウナギを食べられなくなる可能性もありました。

そのような中で、卵からふ化させて成魚まで育てる「完全養殖」の商業化は大きな前進と言えます。最近では、ニホンウナギをワシントン条約の規制対象に加える議論もありました。結果的に規制は見送られましたが、天然資源に依存しない生産体制を構築することの重要性を改めて感じます。

とはいえ、今回の試験販売は2尾で9,720円と高額です。この価格のままでは普及は難しいでしょう。一般家庭でも気軽に購入できる価格帯になることを期待したいところです。

 

 

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2026.05.01

『日本の田舎は宝の山』

曽根原 久司(著)

日本経済新聞出版(2019/7/2) 880円

 

【感想】

著者は企業経営のコンサルタントを経るなかで日本の未来に危機を感じ、その改善を行うため山梨へ移住しました。その後、都市と農村の共生をすすめるビジネスをおこなうためNPO法人えがおつなげてを設立します。本書は、そんなえおつなげてを通じて、耕作放棄地の復活、農村観光ツアー、6次産業化による農村ビジネス等、様々な事業に取り組んだ実践がまとめられた一冊です。原著は2011年10月に刊行され、改訂・文庫化され本書が刊行されました。

少子高齢化と人口減少が進み、限界集落は増え、地方の活力は年々失われています。さらに近年は、海外要因の影響も受けて物価上昇が続いており、この流れは一時的なものではなく、今後もじわじわと私たちの生活や経営に重くのしかかってきます。長年「地方創生」という言葉が掲げられてきました。しかし、正直に言えば成功事例はほとんどありません。国が投じてきた多額の予算が無意味な事業に姿を変えてしまったものも少なくありません。地域活性化の象徴のように各地で整備された道の駅も、実際には赤字を抱え、場合によっては地域経済の重荷になっているケースすらあります。

本書では様々な挑戦をしています。えがおつなげてのHPと比較すれば、「挑戦した結果として何が残り、何が消えていったのか」がリアルに伝わってきます。

今のような混迷の時だからこそ、地方には可能性があるのではないかと思います。インフレが進むこれからの時代、眠っている資源、人とのつながり、地域ならではの強み――そうした日本の地方に目を向けることが、新たなビジネスの可能性につながる。そんなことを考えさせられる一冊でした。

 

【以下、引用】

都市と農村のニーズをつなぐためには、まず農村資源を把握することが重要です。農村資源にはいったいどういったものがあるのか。私はそれらを四つに体系化し、分類してみました。

①場所 / ②モノ / ③ヒト / ④無形資産

次に、農村資源の特徴づけを行います。農村資源の特徴がはっきりすれば、地域で最も有効な資源を探し出し、特徴を活かして事業の設定をすることができます。農村資源の特徴を把握する上では、次の三つの視点が重要です。

①数値化する

②ミクロとマクロの両面から押さえる

③多様な資源の価値を考える

なぜ数値化が重要かというと、農村資源というのは数値化されていないことが非常に多いからです。数値が無ければ事業規模がわからず、適切な事業設計ができません。たとえば、山梨県にはゆずの遊休果樹園があります。この遊休果樹園はどのぐらいの面積なのか、果樹園からはどのくらいの収穫量が見込めるのか、10アール当たり、または1ヘクタール当たりどのくらいか、ゆず1本からどのくらいの収穫があるのかを把握します。

全国を訪ねていると「うちの米は日本一うまいんだ」という農家にしばしばお目にかかります。でも、そのお米が本当に日本一おいしいかどうかはわかりません。当事者の思いやこだわりだけではない客観的な情報を把握する必要があります。

 

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