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2025.10.20

5-1 必要な要素をAIにどう伝えるか

「AIで求人票を作れるらしい」と聞いて、いざ試してみたものの、「なんかイマイチ」「どこか他人事のような文章しか出てこない」と感じたことはありませんか?その原因の多くは、「プロンプト」、つまりAIへの指示の出し方にあります。AIは、指示されたことに対して最もらしい答えを出してくれる便利なツールです。しかし、指示が曖昧だったり、情報が足りなかったりすると、AIは推測で埋めるしかありません。すると、どこか他人事のような、テンプレート的な表現になってしまうのです。逆に言えば、必要な情報をしっかり渡し、AIの得意な形で質問することで、まるでコピーライターが作ったような魅力的な求人文が返ってくるのです。

AIに渡すべき情報は、大きく分けて次の4つです。

  1. 会社情報(事業内容・価値観・雰囲気など)

  2. 求人対象者(求める人物像・経験・年齢層)

  3. 業務内容(具体的な仕事内容や一日の流れ)

  4. 特徴・魅力(他社と違う点・伝えたい想い)

これらをまとめて一気に書くのは難しいかもしれませんが、心配はいりません。小分けにして順番に伝えるだけで、AIはしっかり組み立ててくれます。 たとえば次のように順序立てたプロンプトを用意します。

実際のプロンプト例(分割式)

【前提】
以下は、私の会社で募集したい正社員の求人票を作るための情報です。順番にお伝えしますので、それをもとに文章を考えてください。

【1. 会社概要】
会社名:株式会社〇〇〇〇
所在地:愛知県〇〇市
事業内容:住宅リフォーム業。地域密着型で創業25年。お客様との信頼関係を大切にしています。
雰囲気:少人数で社長に言いたいことは言える職場。20代~50代のスタッフが在籍。毎朝10分のミーティングで情報共有。

【2. 求める人材】
募集職種:営業職
年齢層:30~40代を想定
経験:未経験OK。ただし、対人コミュニケーションが苦手でない方。
理想像:聞き上手で、相手のニーズに寄り添える人。

【3. 業務内容】
一般住宅のお客様宅へ訪問し、リフォームのご提案。飛び込み営業なし。完全反響型。見積作成、施工管理のサポートまで一貫して担当。

【4. 魅力・特徴】
地元のお客様からの紹介が多く、無理な営業なし。残業月10時間以内。毎月社員が自分の意見を出せる「改善会議」がある。

【お願い】
上記情報をもとに、「職場の雰囲気が伝わるような自然な文章」を作ってください。長すぎないようにしてください。

よくある失敗例として、「うちの営業の仕事内容を書いて」とだけ伝えるケースがあります。これではAIは、一般的な営業のテンプレートを書くしかありません。しかし「午前中は顧客訪問、午後は事務所で見積作成。夕方には現場監督と打ち合わせ」など、実際の一日の流れや“場面”を描写すると、AIは臨場感ある文章を返してくれます。

「とにかく魅力的に書いて」これもよくあるプロンプトですが、「魅力的に」だけでは主観的すぎて、AIはどう書けばいいかわかりません。その結果、「働きやすい環境です」「アットホームな職場です」といった、他社と同じような表現になってしまうのです。

魅力を伝えるには、「なぜ魅力的と感じているのか」を明文化する必要があります。たとえば、「お客様から“親切な対応でした”と感謝されることが多い」など、実際のエピソードや事実がAIにとっての「魅力の材料」になるのです。

AIとのやりとりは、いわば“共同作業”です。情報があいまいだと、相手(AI)も手探りでしか答えられません。

・一文で指示を完結させようとしない
・情報を順序立てて伝える
・曖昧な表現を避け、場面やエピソードを含める

これらの工夫をするだけで、「まるでプロが書いたかのような求人票」ができあがるのです。プロンプトは魔法の言葉ではありませんが、“設計図”としてAIの力を最大限引き出すカギになります。

 

5-2 業務内容・職場環境・求める人物像などの文章生成

求人票において、最も読まれるのは「タイトル」だと言われます。しかし、実際に応募を後押しするかどうかを左右するのは、その本文――特に「どんな仕事か」「どんな人が働いているのか」「自分に合いそうか」など、応募者が自分の姿を重ねられるパートです。

つまり、タイトルが“目を引くキャッチコピー”なら、本文は“商品説明”にあたります。この本文こそ、AIを活用して丁寧に作り込む価値がある部分です。

AIに文章を作ってもらうには、いきなり「良い感じの文章をください」と頼むのではなく、素材をしっかりと渡すことが重要です。たとえば以下のような情報を、3つのカテゴリに分けて整理してみましょう。

【業務内容(仕事内容)】

  • 具体的な作業内容(例:一般住宅の外壁塗装、顧客との打ち合わせ、見積作成など)

  • 一日の流れ(例:朝はチームでの朝礼、午前は現場確認、午後は事務作業)

  • 対応する相手(例:法人か個人か、新規か既存か)

  • チーム体制(1人で動くのか、複数名か)

【職場環境】

  • 社員数、男女比、年齢層(例:20代3名、30代5名、50代1名)

  • 働く雰囲気(例:落ち着いた雰囲気、にぎやか、相談しやすい)

  • 残業や休日(例:残業月平均5時間、有給取得率80%)

  • 教育体制(例:研修制度あり、先輩同行からスタート)

【求める人物像】

  • 経験や資格の有無(例:未経験可、普通自動車免許必須)

  • 大事にしたい性格(例:素直な人、聞き上手な人)

  • 逆に避けたい傾向(例:ルールを守れない人、チームで動けない人)

これらを用意できれば、AIは求人広告のプロ顔負けの文章を作ることが可能です。では、上記をもとにAIへどう指示を出すか?例を見てみましょう。

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以下の情報をもとに、求職者がイメージしやすく、読みやすい求人本文を作成してください。やわらかい口調で、20代後半~30代前半の方が「ちょっと応募してみようかな」と思えるような雰囲気にしてください。
【業務内容】
地域の一般住宅に訪問し、外壁や屋根のリフォーム提案。営業未経験でも、まずは先輩社員と一緒にお客様を訪問して仕事を覚えていくスタイル。無理な営業なし。
【職場環境】
社員は全部で8名。20代3名、30代4名、50代1名。男女半々。チームで動くことが多く、事務所ではよく雑談が飛び交う。水曜と日曜が休み、残業は月10時間以内。
【求める人物像】
経験は不要だが、相手の話をしっかり聞ける方。あいさつや報告がきちんとできる方。チームワークを大事にできる方。

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このように指示を出すことで、AIは以下のような“読まれる求人文”を生成します。

——————————————————-

【仕事内容】
地域の一般住宅を対象に、お住まいの外壁や屋根のリフォームをご提案するお仕事です。飛び込み営業などは一切なく、興味を持っていただいたお客様への対応が中心。最初は先輩社員と一緒に現場に同行して、仕事の流れをじっくり覚えていけるので、営業未経験の方でも安心です。

【職場の雰囲気】
現在活躍しているスタッフは20代~50代まで幅広く、年齢に関係なく意見を出し合える雰囲気です。少人数だからこそ、チームワークもバッチリ。お昼休憩にはよく雑談が飛び交っており、事務所は明るくにぎやかです。

【こんな方に来てほしい】
特別な経験やスキルは不要です。人の話をしっかり聞ける方、チームで動くことが好きな方なら大歓迎。あいさつや報告など、基本的なマナーを大切にできる方をお待ちしています!

——————————————————-

人が書くと、どうしても「これでいいのかな…」と迷ってしまい、曖昧な表現になりがちです。しかしAIは、与えられた情報をもとに、読者視点で整理された構成にしてくれるのが強みです。たとえば、「先輩が同行するから未経験でも安心」「飛び込みがないから提案に集中できる」といった、応募者の不安を先回りして和らげるような工夫も自然に加えてくれます。

もちろん、AIの文章は100%そのまま使えるとは限りませんが、「伝えるべきこと」「並べ方」「言い回し」の骨組みを短時間で作ってくれるのは非常に効率的です。「0から1」の作業ではなく、「1を5に育てる」作業へと、人間の役割を移すことができます。

 

5-3 ありきたりな言葉を避ける工夫

求人票をAIで作成するときに最も注意したい落とし穴のひとつが、「ありきたりな表現」です。AIは過去の文書を学習しているため、一般的に多く使われるフレーズを好んで生成します。そのため、プロンプトを工夫しないと「アットホームな職場」「やりがいのある仕事です」「社員は仲が良い」といった、どこにでもある表現が並んでしまうのです。これでは応募者に「他社と何が違うのか?」が伝わりません。せっかくAIを使うなら、差別化ポイントを自然に盛り込み、“読んでみたい”と思わせる文章を作ることを意識しましょう。

求人を探す求職者の立場に立ってみましょう。スマホの画面に並んだ数十件の求人票。その多くに「未経験でも安心」「アットホームな職場」「やりがいがあります」と書かれていたらどう感じるでしょうか。最初の数件ならまだしも、同じ言葉が続くと「どこも同じじゃないか」「実際は大変なのを隠してるのでは?」という不信感につながります。特に最近はSNSや口コミサイトで情報を集める人も増えており、曖昧な表現や空虚なキャッチコピーはむしろ逆効果になりやすいのです。

「うちにしかない強み」と言われると難しく感じるかもしれませんが、差別化ポイントは大きなものばかりではありません。むしろ、日常の中にある“小さな特徴”こそ応募者に響くのです。

  • 働き方
    例:残業が少ない(月平均5時間以下)、週2日在宅勤務OK

  • 教育・育成
    例:入社1年目は必ず先輩がつく、マニュアルが整備されている

  • 社内の雰囲気
    例:休憩室にコーヒーマシンがある、週1回は雑談を兼ねたランチ会(会社負担)

  • キャリア
    例:未経験入社から3年でリーダー昇格した社員がいる

  • 顧客層
    例:地元顧客が9割、紹介での受注が多い

こうした具体的な要素をリストアップしてAIに渡すことで、自然と他社との差別化が文章に反映されます。

AIに「魅力的に書いて」と指示すると、どうしてもテンプレ的な言葉に頼ってしまいます。そこで、プロンプトには以下のような工夫を盛り込みましょう。

  • 「『アットホーム』『やりがい』といった抽象的な表現は避け、具体的なエピソードを入れてください」

  • 「実際に働いている社員が感じている小さなメリットを紹介する形で」

  • 「求職者が“自分の生活に重ねやすい”ような描写をしてください」

こうした条件を付けるだけで、AIは曖昧なフレーズを避け、よりリアリティのある表現を生成してくれます。

実際の改善例

【AIが最初に出した文章】
「当社はアットホームな職場で、社員同士仲が良く、やりがいを持って働けます。」

【改善後の文章(差別化ポイントを盛り込んだ例)】
「事務所は10名ほどの少人数で、年齢も20代から50代まで幅広く在籍。お昼休憩には自然に雑談が生まれる雰囲気です。週に1回は持ち寄りランチ会(会社負担)があり、仕事以外の話で盛り上がることも。そんな安心できる環境だからこそ、未経験からスタートした社員も長く働き続けています。」

同じ「雰囲気の良さ」を伝えるにしても、ありきたりな言葉ではなく実際の場面を描写するだけで、説得力と親近感が増すのです。

求人票でありがちな「アットホーム」「やりがい」といったフレーズは避けるべきです。その代わりに、日常の具体的な特徴やエピソードを差別化ポイントとして盛り込むことが、応募者に響く文章をつくる近道です。AIは素材を与えれば、文章に整えてくれる頼もしい存在です。だからこそ、「何を素材として渡すか」が勝負です。

5-4 AI文章を人間が仕上げる方法

いまや求人票の作成においてもAIは強力な味方ですが、その力を最大限に活かすためには、AIに「丸投げ」するのではなく、人間が仕上げる工程が不可欠です。たしかに、AIによって生成される文章は、誤字脱字も少なく、文法も整っていて、ぱっと見には「これでいいのでは?」と思えるクオリティに仕上がっています。しかし、これはあくまで“下書き”にすぎません。なぜなら、AIが書くのは「誰にでも通じる」一般的な表現であり、御社ならではの価値や、職場の雰囲気、社員の人間味など、個別具体的なニュアンスは反映されにくいからです。つまり、AIは全体の8割まで仕上げてくれるが、残り2割の「らしさ」や「温度感」は、人間にしか書けないということ。完成度を高めるには、この最後の2割をどう仕上げるかが鍵になります。

AIの文章は一定の完成度がある一方で、「誰が書いても同じように見える」という弱点があります。これを補うには、自社の“声”を吹き込むことが重要です。たとえば、社員のエピソードを一つ加えるだけでも、文章は大きく変わります。

「3ヶ月に1回、全員で意見を出し合うミーティングを開いています。新しいアイデアが実際に制度に反映された例もあります。」

といった一文を添えるだけで、会社の雰囲気や文化がぐっと身近に感じられるはずです。また、トーンの調整も重要です。たとえば、堅すぎる表現を少し和らげる、あるいはフレンドリーすぎる文章をビジネスライクに整えるなど、自社の採用スタンスに合った文体に整えることで、違和感のない文章になります。

もう一つ、人間の手を加える意味として大切なのが、「読まれるかどうか」です。AIは論理的で整った文章を作りますが、時としてそれは“情報の羅列”に終始し、読み手の注意を引きません。求人票は一種のマーケティング文書です。だからこそ、最初の一文や見出し、言葉の選び方が読者の関心を惹きつけるよう工夫する必要があります。同じ内容でも、

「私たちは、地域密着で〇〇サービスを展開しています。」

と書くより、

「『〇〇のことならここ』と言ってもらえる。そんな会社を一緒に育てませんか?」

と書いた方が、求職者の心に響くこともあります。“書きたいことを書く”のではなく、“読みたくなるように書く”。これはAIには難しい、人間ならではの調整作業です。

これからの求人票づくりにおいて、AIは単なるツールではなく、共に文章を作る「共著者」として捉えるべき存在です。AIに書かせた原稿を、まるで“相方”のように受け取り、「よし、ここから整えるか」と一呼吸おいて読み直す。そんな感覚が大切です。たとえば、「この言い回し、うちっぽくないな」「この文、ちょっと長いかも」といった直感的な判断ができるのは、やはり人間です。

また、応募者に伝わる表現になっているか、誰に向けた文章なのかを最終的に確認し、整えるのも人の役目です。“読者との距離感”を調整するのは、最後は人の仕事なのです。AIの導入により、求人票の作成は格段に効率化されました。しかし、それはあくまで「始まり」にすぎません。最終的に文章の質を左右するのは、やはり“人間の手”による仕上げの力です。

手をかけた分だけ、読み手に伝わり、応募につながる確率は確実に上がります。AIに頼りながらも、人間の温度を宿す求人票を、ぜひ目指してみてください。

5-5 ターゲット別に文体や表現を変える

求人票は「書いたら終わり」ではありません。本当に伝えたい相手に届いて、読まれて、応募につながってこそ意味があります。ところが、多くの求人票は「誰にでも通じる」ことを重視するあまり、結果的に「誰の心にも刺さらない」文章になってしまうことが少なくありません。だからこそ重要なのが、「読み手によって表現を変える」という視点です。読む人が違えば、響く言葉も、共感するポイントも変わります。この章では、若手層・主婦層・シニア層を例に、それぞれに適した文体や伝え方の工夫を紹介します。

新卒や20代前半など、若年層をターゲットにする場合は、共感と未来志向をキーワードに文章を構成するのがおすすめです。彼らはまだ「社会人としてのキャリア」を模索している段階であり、会社選びの基準も「どんな成長ができるか」「どんな雰囲気か」「先輩たちは楽しそうか」といったソフトな要素に比重があります。このため、文体もややカジュアルに、親しみやすくまとめると効果的です。たとえば、

「先輩たちもほとんどが未経験スタート。わからないことがあっても、すぐに先輩に聞いているので安心です。」

のように、仲間意識を醸し出す言葉選びや、「大丈夫」「安心」といったワードを使うと心のハードルが下がります。また、「頑張り次第でどんどん活躍できる」「あなたのアイデアが会社を変えるかもしれない」といったポジティブな成長ストーリーも有効です。

家庭や育児と両立しながら働きたいと考える主婦層に響くのは、具体的な制度や柔軟性の提示です。「時短OK」「急なお休みに対応」「子育て中のスタッフも在籍中」といった情報が、応募を後押しします。ここでは文体は落ち着いていて良いですが、親しみと共感を含む言葉づかいが有効です。

「お子さんの急な発熱などにも、チームでカバーできる体制を整えています。」

のような具体的なエピソードがあると、「ここなら働けそう」と感じてもらいやすくなります。また、「家事と両立して働いているスタッフも多数在籍」「家庭優先で働きたい方、大歓迎」といった表現で、後ろめたさを感じさせないメッセージを意識することも大切です。

定年退職後の再就職や60歳以上の人材を対象にする場合、文体は敬意と丁寧さを込めた落ち着いたトーンが適しています。「体力的にきつい仕事ではありません」「週2日から無理なく働けます」といった安心材料に加え、「これまでの経験を活かして、若手への指導役として活躍していただいています」など、誇りを感じられる役割提示がポイントです。また、「〇〇業界での経験がある方は特に歓迎」「丁寧に仕事に取り組んでいただける方を求めています」といった、“人生の先輩”としての尊重を伝える表現が、応募意欲を高めます。

「この言葉、自分に向けられてる気がする」と感じてもらえたとき、初めてその求人票は“刺さる”ものになります。そのためには、「どんな人に読んでほしいか」を明確にし、その人の生活背景や気持ちを想像して書くことが必要です。文章の内容だけでなく、語尾のトーン(ですます調/である調)、言葉のやわらかさ、強調するポイントなど、「目線合わせ」の要素はたくさんあります。

たとえば、同じ条件でも、

  • 「未経験でも大歓迎!先輩が優しく教えます♪」は若年層向け。

  • 「未経験の方も安心してご応募ください。研修制度が充実しています。」は主婦・シニア層向け。

のように、“伝える内容は同じでも、表現を変えるだけで印象はガラリと変わる”のです。

求人票における文体や表現は、単なる文章の「装飾」ではありません。それは、「誰に届けたいか」という想いをカタチにする、最初の接点です。ターゲットごとに、使う言葉や伝え方を少しずつ変えていくことで、「あ、これは私のための求人だ」と感じてもらえる確率が大きく上がります。AIを使って文章を作る際も、この“読み手の眼鏡”を通して仕上げることを忘れないようにしましょう。

5-6 実際にAIで作った求人文の失敗と改善例

AIを使って求人文を作ると、「あっという間にそれっぽい文章」が完成します。しかし、それをそのまま掲載してしまうと、逆効果になるケースもあります。実際によくある失敗例をもとに、何が問題だったのか、どのように改善すればよかったのかを具体的に紹介します。AI活用における“落とし穴”を避けるための参考にしてください。

【失敗例①】親しみやすさを狙ったはずが…軽すぎて不安に

作成されたAI文(例):
「とにかく楽しく働きたい方、大歓迎!アットホームでノリの良い職場です★未経験でもバンバン活躍できちゃいます♪」

問題点:
若手層を狙って「カジュアルさ」を意識した文章ですが、過剰に軽い表現が信頼性を損なっています。特に「アットホーム」は、ブラック企業の隠れた常套句として認識されがちなワードです。求職者の間では「上下関係が曖昧」「人間関係が密すぎる」「私語が多いだけ」といったマイナスの印象を持たれることもあります。

改善後の文:
「スタッフ同士の距離が近く、毎日いろいろな相談がとびかう職場です。未経験の方も安心してスタートできるよう、充実した研修制度を整えています。」

ポイント:
「楽しさ」や「雰囲気の良さ」を伝えたい場合も、具体的な行動や制度で示すことで、読者にリアリティと信頼感を与えることができます。

【失敗例②】定型文をそのまま使用し、他社と差別化できない

AI生成文(例):
「やりがいのある仕事を一緒にしませんか?明るく元気な方をお待ちしています!」

問題点:
このような文章は、いかにも「どこにでもある求人文」として読み飛ばされがちです。言葉としては間違っていませんが、内容が抽象的すぎてイメージできない、また企業の個性や仕事の魅力が伝わらないという課題があります。

改善後の文:
「地元の高齢者の方の暮らしをサポートする訪問介護のお仕事です。利用者さん一人ひとりと向き合い、ゆっくり会話を交えながらケアを行います。“あなたが来てくれるのが楽しみ”そんな言葉をいただけるのが、やりがいです。」

ポイント:
AIの出力をそのまま使うのではなく、「自社ならではの特徴」や「実際の現場のエピソード」を盛り込むことで、共感を呼ぶ文章に変化します。

【失敗例③】条件がわかりづらく、スルーされる

AI生成文(例):
「働きやすい環境で、あなたの力を発揮してください!」

問題点:
「働きやすい」という表現はよく使われますが、何がどう“働きやすい”のか具体性がないと、求職者には響きません。特に育児中やWワーク希望者などは、「条件」や「制度」の明示がないと応募に踏み切れません。

改善後の文:
「週2日・1日3時間~勤務OK。お子さんの急な発熱時は当日連絡で休めます。子育て中の主婦も多数活躍中!」

ポイント:
AIは万能ではなく、読み手の関心やニーズを踏まえて肉付けすることが必須です。条件面の具体化は、応募率に直結します。

AIが作成した文章は、ベースとしては非常に優秀です。文章構成も整っており、短時間で“それっぽい”原稿を出してくれます。しかし、そのまま使うのは危険です。読み手の気持ちや、企業のリアルな情報、自社ならではの魅力など、「血の通った言葉」に変換する工程は、やはり人間の役割です。実際、AIが出力した文章には「無難すぎて個性がない」「使い古された表現が並ぶ」「誰に向けて書いているのか不明」といった落とし穴があります。
これを防ぐには、AIに出力させた後に、

  • 表現が軽すぎないか?

  • 抽象的な言い回しになっていないか?

  • 条件は明確に伝わっているか?

  • 誰に向けて書かれているか?

などを人の目で丁寧にチェック・修正することが欠かせません。

また、AIは過去の事例に沿って文章を作成します。求職者ニーズに変化の速い内容などは、AIが出す文章がもうすでに古いということもあり得ます。例えば、先ほどの働きやすい職場事例では、「お子様の発熱時にはスタッフ間で休みを調整しやすい職場です」という一時代前の表現をすることがあります。この表現では確かに休めるかもしれませんが、現実的に考えれば、朝、子供が熱を出して大変な時に、他のスタッフに連絡して調整してもらうのは、手間もかかり精神的な負担も大きくなります。ちょっとこの言い回し時代的に古くないか?という視点で見ていただくのもとても重要です。

AIは強力なツールですが、「人の気持ちに届く言葉」は、最終的には人間がつくるもの。求人票もまた、文章という「コミュニケーションツール」です。AIを上手に使いこなすには、失敗を学び、調整を重ねる“共創”の意識を持ちましょう。

2025.10.16
求人票における「タイトル」と「本文」は、実はまったく異なる役割を持っています。第4章では、いかにしてタイトルで求職者の目を引き、クリックしてもらうかに焦点を当てました。ここで一息、次章に入る前に「そもそも、タイトルの先にある本文はどんな意味を持つのか?」を改めて考えてみましょう。

求職者が求人を探すとき、最初に目にするのは一覧画面に表示されるタイトルです。これは言うなれば“第一印象”のようなもの。ほんの数秒で「これ、気になる」と思わせられるかどうかがすべてです。ただし、タイトルだけで応募が決まるわけではありません。興味を持った求職者は、必ず求人本文を読み込みます。仕事内容、職場の雰囲気、待遇、求める人物像……。ここに“納得感”がなければ、どんなに魅力的なタイトルでも応募には至りません。
つまり、タイトルで得た「関心」を、本文で「信頼」へと変換する。この2段構えがあって、初めて“読まれる求人”から“選ばれる求人”になるのです。
たとえば、タイトルに「在宅勤務OK!柔軟な働き方」と書いてあったのに、本文を読むと「基本は出社、在宅は応相談」と書かれていたらどうなるでしょうか。求職者は裏切られた気持ちになり、すぐにページを閉じるでしょう。これは、単なる記載ミスでは済まされません。「ああ、この会社は応募者を釣るためにいい加減なことを書いているのだな」と受け取られてしまうリスクがあるのです。タイトルと本文の整合性は、思っている以上に重要です。
AIで本文を作成する場合も、「自動で出力される内容に任せきり」では、こうしたズレが起きがちです。タイトルで「自由な職場」とうたっておきながら、AIが生成した本文が「チームワーク重視」「細かいルールあり」のような内容になっていたら逆効果です。実は、本文こそAIが最も力を発揮できるパートです。論理的に文章を構成し、わかりやすく分かち書きをしてくれる点では、人間以上かもしれません。特に中小企業では「文章を書くのが苦手」「表現が毎回ワンパターンになる」といった悩みを持つ方も多いでしょう。そこをAIがカバーしてくれるのは非常に大きなメリットです。さらにAIなら、求職者目線の言葉を意識した表現も得意です。「アピールポイントを入れて」と指示すれば、職場の特徴をうまく抽出してくれますし、「20代向けの文体で」と言えば、それに応じた柔らかいトーンに変えてくれる柔軟性もあります。
ただし、最後の仕上げはやはり人間の役割です。AIがどれだけ自然な文章を作っても、「この言い方はうちの会社っぽくないな」と思う部分はあるでしょうし、「本当はこうじゃない」といった事実とのズレもあるかもしれません。AIを使ううえで大事なのは、「全部任せる」ことではなく、「下書きとして使う」姿勢です。AIが作った叩き台を元に、企業の温度感を反映する表現へとチューニングする。これが“読まれるだけでなく、信頼される求人”に必要な工程です。

2025.10.15

4-1 タイトルが変われば応募が変わる

求人票を書くとき、多くの中小企業経営者や担当者が見落としがちなのが「タイトル(見出し)」の重要性です。ところが実際には、求人タイトルは求人票全体の中でも最もインパクトが大きく、応募者数に直結する要素です。なぜなら、ハローワークでも求人サイトでも、求職者の画面にずらりと並ぶのは「タイトル」だからです。スマホの小さな画面で、一瞬で見比べられる何十件もの求人。目立たなければそもそも読まれません。中身がいくら良くても、クリックされなければ存在しないのと同じ。つまり、タイトルは求人票の「入り口」であり、「命」でもあるのです。

たとえば目を引くタイトルの例をあげると、「製造スタッフ募集」→「未経験OK!土日休み×軽作業」や、「営業職」→「営業未経験からでもOK!ルート中心の法人営業」などです。BeforeのタイトルよりAfterのタイトルのほうが、興味がそそられる可能性が高いですよね。タイトルに「誰向け」「どんな仕事」「メリット(休みや待遇など)」を入れるだけで、読み手の反応は大きく変わります。特に「自分にもできそう」と思わせる要素があると、求職者はグッと引き寄せられます。

それでもなお、求人票のタイトルは軽視されがちです。理由は、「タイトルを考える経験がない」「どうせ他の部分が大事」と思われることもあるでしょうが、一番はその必要性に気づいていないケースです。しかし、これはマーケティングでいうところの「広告見出し」と同じです。チラシでもSNSでも、まずタイトルで引きつけなければ中身を読んでもらえません。スマートフォンに流れてくる広告やYoutubeではインパクトの強いタイトルが多い傾向にあります。これは多くの情報の中で興味を持ってもらうことが目的だからです。このような釣りまがいの行為は良くありません。しかし求職者の立場に立てば、「仕事内容はやさしい?給料はどう?自分に合ってる?」そう考えている時に、「製造スタッフ」や「営業職」だけのタイトルでは、目にも留まらないのです。

ありがたいことに、今はChatGPTなどの生成AIを使えば、魅力的なタイトル案をいくつも出してもらうことができます。例えば、「軽作業×主婦歓迎」「20代活躍中」「地元密着で安心」など、いくつもの要素を組み合わせたタイトル案を、短時間で生成してくれます。

AIは無限にアイデアを出してくれるので、自分の頭だけでは思いつかない表現や、他業種の求人に使われているヒントも手に入ります。しかも、ブラッシュアップも可能です。「もっと若者向けに」「少し真面目なトーンに」など、感覚的な指示にも対応できるのが強みです。

求人票は「文章」ではなく「広告」である――この感覚を持てるかどうかが、求人成功の分かれ道です。広告の世界では、見出しの完成度がその後の反応を9割決めるとも言われています。求人票もまさに同じです。これまで「求人票の内容を丁寧に書こう」と意識していた方も、次の求人ではぜひ「タイトルから始める」という意識に切り替えてみてください。そして、AIという強力な相棒に、見出し作りを手伝ってもらいましょう。

4-2 AIでインパクトのあるタイトル案を複数出す

求人票を作る際、タイトル(見出し)は求職者の目に最初に触れる重要な要素です。そして、この「タイトル案のアイデア出し」において、生成AI――特にChatGPTのようなツールは非常に優秀です。ここでは、ChatGPTを「求人用コピーライター」として活用する方法をご紹介します。

人間がひとりでタイトルを考えると、どうしても視点が固定されがちです。特に中小企業では、毎日の業務に追われ、創造的な言葉をひねり出す余裕などなかなかありません。「とりあえず無難に」「他社もこうしてるし」といった意識で、“埋もれるタイトル”をつけてしまいがちです。しかしChatGPTを使えば、さまざまな角度から、何十通りもの言い回しや切り口を短時間で提示してくれます。 これは、複数のコピーライターを社内に雇ったようなもの。無料または低コストで使えるこのAIを活用しない手はありません。

たとえば、ハローワークで出す「倉庫内軽作業スタッフ」の求人について、ChatGPTに以下のような指示をしてみます。

「20代・30代が多く働く職場で、未経験OK、力仕事少なめ、冷暖房完備、正社員登用あり。そんな求人のタイトル案を10個ください」

すると以下のような案が出てきます。

  1. 【冷暖房完備】未経験歓迎の軽作業!正社員登用あり

  2. 体力に自信がなくてもOK♪力仕事少なめの倉庫スタッフ

  3. 20〜30代活躍中!キレイな倉庫で快適に働けます

  4. 未経験から安定の正社員へ!倉庫内軽作業スタッフ募集

  5. 接客ナシ!モクモク作業で自分のペースで働ける◎

  6. 土日休みOK!プライベートも充実の倉庫ワーク

  7. 倉庫作業=キツいはもう古い!快適職場で働こう

  8. コツコツ派にピッタリ!未経験歓迎の軽作業

  9. 空調完備で快適作業!男女ともに活躍中

  10. 正社員も目指せる!安定勤務の倉庫内ワーク

こうしたタイトルをもとに、さらに「女性向けに寄せた案も」「30代より上を意識して」といった修正も、チャット形式で追加していけます。

求人タイトルには、求職者が検索しそうなキーワードを意識的に入れることも大切です。たとえば「未経験」「土日休み」「正社員登用」「主婦歓迎」「シフト自由」「駅チカ」など。AIにタイトルを作らせる際にも、こうしたキーワードを指定することで、SEO(検索最適化)効果の高いタイトルが生成されます。さらに、「地域名(豊田市・名古屋市など)」や「勤務時間帯(夜勤なし・日勤のみ)」も組み合わせると、よりピンポイントで求職者に刺さります。

ChatGPTから出てきた案をそのまま使うのではなく、複数案から選んで、さらに修正するのがコツです。たとえば、10個のうち3つをピックアップし、次のように指示を出します。

「この3案をベースに、より若年層に刺さる表現に言い換えて」
「“軽作業”の代わりに“かんたん作業”という言い回しにして」
「ハローワークのフォーマットに合うように20文字以内に収めて」

こうしたやりとりを数回繰り返すだけで、自社の求人にぴったりのタイトルが見つかるはずです。

最後に注意点をひとつ。AIは非常に有能ですが、最終的な「OK」を出すのはあくまで人間です。たとえば「目立つけど、やや誇大表現では?」という案も混じってきます。法的に問題がないか、会社の方針に沿っているかなど、判断が必要な部分は人の目でしっかりチェックしましょう。タイトルは、求人の第一印象を決める「広告見出し」です。AIを使えば、センスに自信がなくても、何十通りもの提案をもとに「読まれるタイトル」をつくることができます。

4-3 求職者が検索する条件をどう入れるか?

インターネットで求人情報を探す時代において、求職者が入力する「検索条件」は、求人の“見つけやすさ”を大きく左右する要素です。どれだけ良い職場で、待遇が整っていたとしても、検索結果に出てこなければ意味がありません。求職者の多くは、「エリア × 職種」「条件 × 働き方」など、ある程度絞り込みながら求人情報を探します。
たとえば──

  • 「名古屋市 倉庫 軽作業」

  • 「週3 主婦歓迎 シフト自由」

  • 「正社員登用あり 土日休み」

といった検索条件です。

これは、Googleや求人サイト、ハローワークの検索窓でも共通して言えることで、タイトルや本文にキーワードが含まれていなければ検索結果に出にくくなってしまいます。

キーワードは大きく分けて、以下の4種類に分類できます。

① 地域キーワード

求職者が自宅から通える範囲で探すため、地域名は非常に重要です。

  • 「豊田市」「名古屋市中村区」「○○駅チカ」など

② 職種・仕事内容キーワード

仕事の内容が具体的に伝わる単語を入れましょう。

  • 「軽作業」「ピッキング」「フォークリフト」「清掃」「接客」など

③ 働き方キーワード

ライフスタイルに合う条件で探す求職者に刺さります。

  • 「週3~OK」「シフト自由」「土日休み」「残業なし」「日勤のみ」など

④ 特典・制度キーワード

働くメリットを短く伝える要素も重要です。

  • 「未経験歓迎」「正社員登用あり」「交通費支給」「冷暖房完備」「服装自由」など

ChatGPTなどの生成AIに「求人タイトル案を作って」と依頼する際、上記のようなキーワードをプロンプト(指示文)に必ず入れてください。 たとえば──

「名古屋市内、軽作業、未経験歓迎、週3日OK、冷暖房完備、20〜30代活躍中という条件でタイトルを10個出して」

このように具体的に条件を伝えることで、AIは自動的にキーワードを盛り込んだ見出しを生成してくれます。逆に、キーワードを指示しないと、魅力的なコピーにはなっても、条件にヒットしない見出しができてしまうことにもつながります。注意したいのは、キーワードを羅列しすぎると、逆に読みづらくなるという点です。たとえば──

「名古屋市 軽作業 週3日 未経験歓迎 主婦歓迎 冷暖房完備 駅チカ 正社員登用あり」

といったタイトルは、検索には強いかもしれませんが、ユーザーの目には“スパムっぽく”映ってしまいます。この場合は、本文内にキーワードを散りばめ、タイトルは2~3語に絞るなど、バランス感覚が求められます。

求人媒体の検索傾向を見ると、最近では「やさしい言葉」で検索する人も増えています。

  • 「かんたんな仕事」

  • 「しずかな職場」

  • 「一人でできる」

このような曖昧なキーワードは、求人票には書かれにくいですが、ChatGPTに「そうした検索ニーズに対応した言葉選びをして」と指示することで、案外的確に対応してくれます。どれだけ魅力ある職場でも、求職者の検索に引っかからなければ存在していないのと同じです。AIにタイトルや本文を作らせる際には、「キーワードを意識する」ことを必ず忘れずにプロンプトへ組み込みましょう。

4-4 タイトル案のブラッシュアップ法

求人票において「タイトル」は、いわばお店の看板です。読まれるかどうか、応募されるかどうか。その入口となるのがタイトルです。だからこそ、タイトルは「1回で確定しない」ことが重要になります。

ステップ①:まずは複数案をAIに出させる

タイトルは「一発勝負」ではなく、まず10〜15案をAIに出してもらうのが基本です。
たとえば以下のようなプロンプト(指示文)で依頼します。

「名古屋市での軽作業、週3日勤務OK、未経験歓迎、冷暖房あり。こういった条件で、求人票のタイトル案を15個考えてください。求職者の目を引くようにしてください」

このように、条件・特徴・希望するトーン(インパクト重視、親しみやすさなど)を伝えると、AIはバリエーション豊かな見出しを生成してくれます。

ステップ②:案ごとに“人間の目”でチェック

AIから出力された複数のタイトル案は、以下の4つの観点で評価すると効果的です。

  1. 視認性:目を引く言葉が使われているか

  2. 検索性:求職者が検索するキーワードが入っているか

  3. 訴求力:働きたくなる魅力が伝わっているか

  4. 誤解がないか:事実とズレた誇張がないか

この評価は、社内の別のスタッフや友人に見てもらっても構いません。「実際にこのタイトルだったら応募しそう?」という視点が大切です。

ステップ③:「なぜ良いのか/悪いのか」をAIに伝えて再提案

良さそうな案があれば、それをベースにAIに「もっと改善して」と依頼しましょう。
たとえば──

「タイトル案①の“コツコツ作業”という言葉は良かったです。これを軸に、他の要素も入れて5案出してください」

あるいは──

「このタイトルでは仕事の内容が曖昧なので、“商品の仕分け”と明記して再構成してください」

このように「フィードバックを与えてから再依頼」することで、AIの出力精度が一段と上がります。

ステップ④:「比較用」のタイトルを作ってテストしてみる

最終的にタイトル案が2〜3本に絞られたら、どれを掲載するか悩んでしまうかもしれません。その場合は、2つ以上の案をA/Bテスト的に使ってみるのも手です。

  • ハローワーク用のタイトルと、インディード用のタイトルを変える

  • タイトルだけ変えて、本文は同じまま1週間ずつ様子を見る

  • 自社サイト内でタイトル別クリック率を比較する

このようにして「実際の反応」を見ながら、最も応募に結びついたものを正式採用するといった判断もできます。タイトルの選定は非常に重要です。ポイントとしては、

  • 「親しみやすくする」だけでなく「見つけてもらえる」こと

  • 「何の仕事かが5秒でわかる」こと

  • 「ターゲットに刺さる言葉」が入っていること

等を意識してください。生成AIは、このプロセスを一緒に試行錯誤してくれるパートナーです。最初の出力が気に入らなくても、対話を通じて修正を重ねれば、かなり実用レベルのタイトルが生まれます。AIは優秀ですが、最初から完璧なタイトルを出してくれるわけではありません。複数案 → 評価 → 再生成 → 比較 → 決定というプロセスを踏むことで、より良いタイトルに育っていきます。「AIは指示次第」という原則を理解し、“上手なフィードバック”を与える人こそ、AI時代の求人作成で大きな成果を出せる人です。

4-5 タイトルに“NGワード”はあるか?

求人タイトルには、その一言で応募の流れが決まるほどのインパクトがあります。これまで「AIを活用してタイトルを出す方法」「求職者の検索キーワード」「ブラッシュアップのプロセス」などを見てきましたが、最後に注意すべき点がもうひとつあります。

それが、「使ってはいけないNGワード」です。実は、一見するとポジティブに見える言葉でも、応募者にとっては“地雷ワード”として敬遠されるものがあるのです。

求人の定番ワードとしてよく見かける「アットホームな職場」ですが、実はこの言葉、求職者の間では“ブラック臭”のする言葉として知られています。なぜなら、「アットホーム=プライベートにも踏み込まれそう」「なれ合いの職場=上下関係が曖昧そう」「仲良し=馴染めなければ居心地が悪そう」など、ネガティブな想像をされてしまうからです。さらに言えば、アットホームという言葉は何とでもとれる「よさげな言葉」でもあるからです。明確に数字で表現すると変更ができません。でも、もやっとした抽象的な言葉はあっているのか、間違っているのかが断定できません。使いやすいがために嘘くさいというイメージにつながります。本当に温かい雰囲気の職場であっても、「アットホーム」という抽象的な表現では伝わらないどころか、かえって誤解を招く恐れがあります。どうしても伝えたいのであれば、「週1でランチ会があります」「社員旅行が毎年あり、家族も参加OKです」など、具体的なエピソードに置き換えるほうが良いでしょう。もしくは、後で出てくる画像・ビジュアルで本当にアットホームなんだなということが伝わるようにするという方法もありです。

「未経験でも歓迎」は、間口を広げる意味では必要な表現です。しかし、タイトルにストレートに書くと「誰でもできる=やりがいがなさそう」「簡単=成長できなさそう」と感じる人もいます。特に、スキルアップやキャリア形成を考えている若手には、「未経験OK」が“退屈な仕事”のように映ることもあります。この場合も、「研修制度が充実」「先輩社員がマンツーマンで育てます」など、安心して働ける環境があることを伝える表現に変えると、印象が良くなります。

「急募」もありがちな言葉ですが、「人がすぐ辞めたのかな?」「人手不足で忙しそう」といった疑念を生む可能性があります。もちろん、事実としてすぐ人が必要なこともあるでしょうが、それを求職者に“焦らせる表現”で伝える必要はありません。むしろ、「採用が決まり次第締切」「すぐに働きたい方歓迎」など、受け手の希望に寄り添う形で表現した方が安心感につながります。

AIにタイトルを考えさせる場合も、「避けたいワード」をあらかじめ指定しておくことが重要です。たとえば、プロンプト(指示文)に

「“アットホーム”“急募”“未経験OK”といった表現は使わずに、魅力的なタイトルを10案考えてください」
と書いておくだけで、避けたい表現を使わずにAIが工夫してくれるのです。さらに、「具体的な働き方」「教育体制」「雰囲気が伝わる一言」を加えるように指示すれば、より応募者の心に刺さるタイトルが生まれやすくなります。

NGワードを避けることは重要ですが、それだけでは不十分です。大切なのは、どんな言葉なら応募者に“伝わる”のかを考えることです。
たとえば、

  • アットホーム → 「休憩中はゲーム談義で盛り上がる職場」

  • 未経験OK → 「入社半年でリーダーに昇格した先輩も」

  • 急募 → 「今月から一緒に働ける方を探しています」

など、「理由」「背景」「具体例」がセットになれば、同じ意図でもまったく違った印象になります。

AIはとても優秀ですが、「よく使われる言葉=良い言葉」と判断してしまうことがあります。だからこそ、人間側が“避けるべき言葉”を教えてあげることが必要なのです。タイトルは求人の顔。NGワードで損をしないために、常に“応募者の視点”で見直すクセをつけておきましょう。そして、AIにタイトルを考えさせるときは、「こういう言い回しは避けて」と具体的に伝えることを忘れずに。そのひと手間が、応募数を大きく左右します。

2025.10.14

生成AIを活用して求人票を書くといっても、全体を丸ごとAIに任せられるわけではありません。現実には、「AIが得意な部分」と「人間が考えるべき部分」がはっきりと分かれています。この節では、実際にハローワークの「求人票作成シート(以下、ハロワシート)」を使ったとき、どの項目がAIに向いているか、逆にどの項目は自分で記入すべきかを線引きしておきましょう。
まず、自由記述欄や説明文を書く項目は、AIの得意分野です。以下は特に活用しやすい項目です。

  • 仕事の内容(業務内容)
    → 実際の作業内容や1日の流れなどをAIに聞きながら整理すると、わかりやすくまとまります。

  • 会社の特徴・PR欄
    → 「どんな社風か」「どういう人に合うか」などをAIに言語化してもらえます。

  • 求める人物像や適性
    → 前章で述べたとおり、人物像の抽出や文章化はAIの活躍ポイントです。

  • 待遇や福利厚生の説明文(数字ではなく“言葉で伝える”部分)
    → 固定的な条件だけでなく、社内の雰囲気や働きやすさを伝える文章なども、AIで生成可能です。

これらは、企業側が「言葉にしにくい」と感じやすい項目であり、逆にAIに任せれば、読みやすく整った文章をスムーズに作成できます。一方で、労働条件や法令に関わる具体的な数字や選択項目については、人間が責任をもって記入すべきです。以下は、どのような数字にするとよいか?という壁打ち的な利用をする分にはかまいませんが、AIに丸投げするべきではない部分です。

  • 賃金、就業時間、休日数、残業時間などの数値
    → 実際の社内ルール・就業規則・雇用契約をもとに正確に記入する必要があります。

  • 労働条件に関する選択項目(雇用形態、試用期間の有無など)
    → 法的な要件を満たすかどうかを確認するため、AIではなく人間が直接確認すべきです。

  • 加入保険、福利厚生の制度的項目(例:厚生年金、雇用保険など)
    → こちらも法律に関わるため、間違いがあるとトラブルにつながる可能性があります。

  • 採用までのフロー(選考方法、面接回数など)
    → 実際の運用と合致させる必要があるため、自社の人事担当者(零細企業の場合、基本的に社長)が決めて入力するべきです。

なお、AIで書けるかどうか迷ったときの判断基準はとてもシンプルです。

  • 「厳格に決めごとがあること」や「はっきりした数字」→人が書く

  • 「伝え方を工夫すべき説明文」や「印象を左右する表現」→AIに書かせる

この線引きを意識することで、AIに頼るべきところと、自分でしっかり考えるべきところを混同せずに、効率よく求人票を作成できます。
あくまでAIは、「最初のたたき台」や「文章整形の補助ツール」です。求人票の全責任を任せるのではなく、自分の考えを整理したり、伝わる表現に変換してもらう“ライティングの相棒”と考えるのが正解です。

2025.10.10

3-1 そもそも「生成AI」って何?

 生成AIで実際に作成される前に、一応生成AIについて簡単な説明をします。知ってるよと言う方は読み飛ばしてください。

最近よく耳にする「生成AI(ジェネレーティブAI)」という言葉。その代表例が「ChatGPT」です。AIというと、これまで専門家や一部の業界でしか使えない印象がありましたが、今ではスマホやパソコンさえあれば、誰でも使える身近な存在になっています。では、そもそも生成AIとは何をしてくれるものなのでしょうか。ざっくり言えば、「質問に対して、言葉や文章、アイデアを人間のように考えて返してくれる道具」です。これまでの機械的なQ&Aとは異なり、人間が話すような自然な文章を作るのが得意です。たとえば、「求人票の冒頭文を考えて」といった曖昧な依頼にも、それらしい文章を即座に提示してくれます。

ChatGPTは、OpenAIという会社が開発した生成AIの一種で、大量のテキストデータを学習しています。インターネット上の文章や本、ニュース、ブログなど、ありとあらゆるテキスト情報をもとに、「次にどんな言葉が来るか」を予測して文章を組み立てています。だから、たとえば「明るく元気な職場です」と打てば、それに続く自然な表現もスラスラと返してくれるのです。

ただし、注意が必要な点もあります。ChatGPTはあくまで“確率的に自然な文章を作る”ためのツールであり、「正しい情報を作る」わけではありません。たとえば法律の要件や助成金の条件など、正確性が求められる内容をそのまま信じてしまうのは危険です。法律や制度に関する部分は、必ず専門家や公的機関に確認しましょう。AIは文章を整えるのが得意でも、真偽の判断までは得意ではないのです。

また、ChatGPTは「指示の仕方」によって大きく精度が変わります。「良い感じにして」といった曖昧な言葉では、出力結果もあいまいになります。逆に「ハローワークの求人票の冒頭文として、明るく親しみやすいトーンで、求職者に安心感を与えるような表現で書いてください」など、具体的な要望を伝えることで、より意図に近い文章が出てきます。このように、ChatGPTはうまく使えば非常に便利なパートナーです。特に文章を考えるのが苦手な方、時間をかけずに求人票をブラッシュアップしたい方には、大きな助けになります。ただし、「使い方」と「目的」をしっかり押さえることが、AIを活用する第一歩です。

3-2 “準備8割”がAI活用の分かれ道

AIを活用する上で、もっとも大切なことは何でしょうか?それは「準備」です。特に、ChatGPTのような生成AIを使って求人票を作成する場合、「どのような情報を、どのように渡すか」が成否を大きく左右します。生成AIは、魔法の杖ではありません。「〇〇して」といった指示だけで、こちらの意図を完全に汲み取ってくれるわけではないのです。むしろ、こちらの入力が曖昧であればあるほど、AIの返す答えもぼんやりした内容になりがちです。

たとえば、「うちの会社の魅力を伝えてください」とだけ指示したとします。AIはどんな会社かを知りません。最近は優秀なので、どのような会社ですか?と確認するケースも多いですが、無理やり表現してもらっても、どこにでもあるような一般的な表現、たとえば「社員同士のコミュニケーションが活発で、働きやすい職場です」などと返してくる可能性が高いでしょう。しかし、これでは多くの求人票に埋もれてしまい、差別化ができません。

一方で、こんな準備をしておけばどうでしょうか。

  • 「創業20年、地元密着の工務店。社員数は10名。20代~60代がバランスよく在籍」

  • 「社員旅行では家族同伴OK。チームワーク重視」

  • 「職人の高齢化が進んでおり、20代を積極採用中」

このように事前に具体的な情報を整理し、AIに「この情報をもとに、20代の求職者に響くような紹介文を書いてください」と指示すれば、内容はグッと実用的になります。つまり、AIは「よき相棒」ではあるけれど、「指示待ち人間」でもあるのです。こちらが何を期待し、どの方向を目指しているかを丁寧に教えることで、初めて本領を発揮してくれます。ここでポイントは、きれいな文章でなくても良いということです。箇条書きにしておいて、「うちの会社は以下のような特徴があります。この情報をもとに…」としても、きちんと箇条書きの情報から内容をくみ取ってくれます。

そして、この「準備」の中には、会社の現状を整理するという副次的な効果もあります。強みや魅力、改善点、求める人物像を改めて言葉にすることで、経営者自身が自社を見つめ直す機会になるのです。求人票づくりとは、採用のためだけではなく、「会社の棚卸し」でもあります。見つめなおすときにアイデアが出ないときには、そのアイデアのヒントも出してもらえます。例えば、「土木業で主に市役所の仕事を受けている会社です。従業員は社長を含めて4名で小規模ながらも丁寧な仕事を心がけています。このような会社だとどのような特徴があると思いますか?」と聞けば、こうではないですか?という回答が返ってきます。その回答があれば思いつくこともたくさんありますし、「○○と××はうちの特徴です。これを踏まえて他には何があると思いますか?」と確認すればさらに深堀できます。

AI時代において、「早く」「効率的に」作ることは確かに重要です。しかし、スピードだけを求めて準備を怠ると、見当違いな文章ができあがり、かえって手間がかかってしまうこともあります。だからこそ、AIを使う前の段階で、どれだけ質の高い情報を用意できるかが、結果を大きく左右します。求人票作成において「準備が8割」。ここをおろそかにしないことが、AIを使いこなす最初の分かれ道なのです。

3-3 AIを使う前に準備しておくこと

生成AIを活用して求人票を作成するには、ただ「使うだけ」では不十分です。より効果的に活用するためには、事前の“3つの準備”が重要になります。それが「ツールの選定」「入力のコツ」「セキュリティ意識」の3つです。

1. ツールの選定:何を使えばよいのか?

まず、どの生成AIを使うかを決める必要があります。現在主流なのは、OpenAIの「ChatGPT」や、Googleの「Gemini」などです。本書ではChatGPTをベースに説明しますが、基本的な考え方はどのAIにも共通しています。ChatGPTには無料プランと有料プランがありますが、求人票を作る程度であれば無料版でも十分です。ただし、安定性や性能を重視するなら有料版の導入も検討してよいでしょう。ブラウザからの利用が一般的ですが、スマホアプリでも利用可能です。使いやすい環境を整えることが、長く活用するための第一歩です。使い方は様々なHPで紹介されていますし、本もたくさんあります。また、ChatGPTにアクセスして聞いてもらえば教えてくれます。

2. 入力のコツ:AIは“言われた通り”に動く

生成AIは、魔法の道具ではありません。曖昧な指示をすれば、曖昧な答えが返ってくるのは当然です。したがって「入力(プロンプト)の質」が結果の質を決めるカギになります。

たとえば、「求人票を書いて」ではなく、「20代の求職者向けに、地元密着で社員10人の建設会社が、施工管理職の魅力を伝える文章を書いてください」といったように、対象・目的・会社の状況などを具体的に伝えることで、精度の高い出力が得られます。

会話形式でAIとやりとりすることに最初は戸惑うかもしれませんが、実際は非常に柔軟で、指示の出し直しも簡単です。「ちょっと柔らかく書いて」「もっと端的に」「漢字を減らして」など、自然な日本語で指示すれば反映してくれるのが大きな魅力です。

3. セキュリティ:大事な情報は入力しない

最後に、見落としがちなのがセキュリティの配慮です。生成AIは便利ですが、外部サーバーに情報を送信して処理しています。そのため、個人情報や機密情報を入力するのは絶対に避けましょう。たとえば、「従業員のフルネーム」「具体的な給与明細」「顧客情報」などをAIに入力するのは厳禁です。求人票作成においても、応募者が特定できるような記述には注意が必要です。法人契約やセキュリティ強化されたバージョンであれば、情報の扱いもある程度担保されますが、基本的には「AIには公開しても問題ない範囲の情報しか渡さない」という姿勢が安全です。生成AIは、準備さえ整えれば誰でも使える強力なツールです。ツール選定・入力の精度・セキュリティ意識という3つの視点を持って臨むことで、失敗や不安なく、求人票作成の強力な味方として活用することができます。

3-4 AIに渡す情報は、まず“誰に来てほしいか”から

生成AIに求人票の文章を考えてもらう際、最初にやるべきことは「どんな人に来てほしいか」を明確にすることです。これはAIに限らず、どんな求人手段を使うにしても避けて通れない工程ですが、AIを使うことでより一層、情報の具体性が求められます。

多くの企業がやりがちな失敗の一つに、「理想の求職者像を空想で描きすぎる」ことがあります。たとえば、「経験10年以上で即戦力」「若くて元気でコミュニケーション能力が高く、なおかつ専門スキルも高い」など、実在するのかも怪しい“完璧な人材像”を求めてしまうのです。

しかし現実には、そんな人材はまず応募してきませんし、してきたとしても他社との争奪戦になります。中小企業が限られた条件の中で人を採用するには、「理想」よりも「現実」に目を向ける必要があります。そこでおすすめしたいのが、「自社の今いる従業員」をベースに考える方法です。たとえば、現場で活躍しているAさん。最初は未経験だったけれど、真面目にコツコツ頑張って今では頼れる存在になっている――そんな人がいるなら、そのAさんこそが「欲しい人材」のモデルです。性格や価値観、入社時のスキル感など、できる限り具体的に思い浮かべてみてください。

AIに人材像を伝えるときには、抽象的な表現よりも、具体的なエピソードや数値を使う方が、意図が正確に伝わります。たとえば、「まじめな人」ではなく「毎朝10分早く来て現場の掃除をしてくれるような人」や、「コミュニケーションが得意な人」ではなく「新人の面倒を見てくれるような先輩タイプ」など。これらの表現のほうが、AIは適切な文章に落とし込みやすくなります。また、「未経験でも半年で基本業務を覚えられる」「残業は月10時間以内」といった数字も、求職者に安心感を与えるだけでなく、AIに対する情報提供としても有効です。

さらに、NGパターンをあらかじめ伝えておくのも非常に有効です。「細かい作業が苦手な人には向いていません」「外作業が多いので、体力に自信がないと厳しいかもしれません」など、ネガティブな面を隠さずに伝えることで、応募後のミスマッチを防ぐことができます。

AIにこうした情報を与えておけば、「こんな人は活躍できる」という前向きな表現にうまく転換してくれることもあります。

「どんな人に来てほしいか」を考えることは、求人票づくりの核心です。しかもそれは、経営者や現場責任者にしかできない“人を見る目”の領域。AIに求人票を任せるからこそ、その土台となる情報は人間が責任をもって与える必要があります。

3-5 人物像に困るときは「こんな人は困る」を出発点に

「どんな人に来てほしいか」を明確にすることが、AIに求人票を書かせるうえでの第一歩であることは前節で述べました。しかし現実には、「理想の人物像を言語化してください」と言われても、なかなかスラスラとは出てこないものです。ましてや、普段から人材育成や評価に慣れていない中小企業の現場では、なおさらです。そこでおすすめしたいのが、逆転の発想です。つまり、「こんな人に来てほしい」という理想像ではなく、「こういう人は来てほしくない」という“困る人物像”からスタートする方法です。

実際、過去に採用して後悔した人や、面接で違和感を覚えた人の特徴は、記憶に強く残っていることが多いものです。

「時間にルーズで毎回ギリギリに出社していた」
「電話応対が苦手でお客様とトラブルになった」
「こちらの指示を受け入れず、自己流で仕事を進めたがる」

――など、こうした“NG人物像”は、理想像以上に具体性をもって語れるはずです。このような情報は、AIにとっても非常に役立ちます。ChatGPTなどの生成AIに対して、「○○のようなタイプは避けたいです」と伝えることで、逆に「○○でない人=理想像」に近づいていけるからです。

ある程度ネガティブ情報が集まったら、AIに人物像の生成を依頼しましょう。たとえば次のような投げかけが効果的です:

「弊社では、指示をきちんと守って動ける人を求めています。一方で、マイペースで自己判断が強すぎる人は合いません。そうした職場に合う求職者像を文章で表現してください。」

するとAIは、ネガティブ要素を前向きな表現に変換し、「チームの一員として協調性を大切にしながら、自主的に動ける方に向いている職場です」といった、ポジティブで読みやすい文に仕上げてくれます。その際出てきた人物像に納得がいかなければ、すかさず修正依頼を出しましょう。例えば、「“自主的に動ける方”ではなく、“上司の指示に従える方”に表現を変えてください」のようなやり方です。このように細かく依頼を重ねることで、理想に近い人物像が整っていきます。

最後に、もう一つ大切なポイントがあります。AIに人物像を考えてもらう際、「つい理想を追いすぎる」という罠に陥りがちです。たとえば、

「営業経験10年、即戦力でコミュ力抜群。かつ若くて柔軟性のある人材」

「現場経験15年、○○技師2級を持っていてリーダー経験がある人材」

――などと無意識に“スーパー人材”を求めてしまうと、AIは忠実にその通りの文章を返してくれます。けれど、そんな人材は自社に応募してこない可能性が高い。無理な理想像をそのまま使えば、結果的にミスマッチを招くことになります。そこでAIに対しては、あらかじめこう伝えておくのがおすすめです。

「もし条件が現実的でない場合は、“その人材は応募してこない可能性が高い”と指摘してください」

AIは時に“都合のいい嘘”をつくこともあります。だからこそ、厳しめのフィードバックもしてもらえるように頼んでおくことで、より現実的で実行可能な求人文章に仕上がるのです。

3-6 働き盛りのフルタイム勤務社員という夢を捨てる

「働き盛りの30代男性を正社員フルタイムで雇って、長く安定的に働いてもらいたい」──これは、昭和から平成にかけて、多くの企業が持っていた理想的な人材像かもしれません。令和の今でも変わらない気がします。しかし、今やそれは「夢」と言ってもいいほど、現実から離れた幻想になりつつあります。高齢化と少子化が進む日本。地方では若手がごっそり減り、都市部でも人手不足は深刻です。特に中小企業にとっては、「良い人材を雇いたい」と思っても、そもそも“良い人材”が市場にいない、あるいは大企業に取られてしまっているのが実情です。

現在の労働市場は、もはや「フルタイム正社員」だけを中心に考える時代ではありません。パートタイム、時短勤務、副業OK、在宅勤務、高齢者──これらが選択肢として当たり前に並ぶようになり、求職者は「自分に合った働き方ができるか」を重視して職場を選ぶようになっています。かつては「この条件で来てくれる人」を探していた企業も、今は「この人が働きやすい条件をどう作れるか」を考える必要があります。つまり、“雇用のミスマッチ”を防ぐためには、企業側の意識転換が不可欠なのです。

そのため「週3日、4時間だけなら働ける」「子どもが熱を出したら急に休むかもしれないけど、日中は戦力になる」「60歳を過ぎていても、PC入力は得意です」──こうした人たちを“戦力外”として除外していては、採用できるはずの人材をみすみす逃してしまいます。

求人票を作る際、「フルタイムが理想」だとしても、それを押し付けるのではなく、「パート勤務応相談」「柔軟に対応可能」などの表現を使うことで、より多様な人材にアプローチできます。特にAIを使って求人票を作る場合、こうした柔軟な姿勢や受け入れ可能な働き方の幅を事前にAIに伝えておくことが重要です。でなければ、従来型の「完璧なフルタイム人材」を前提とした、現実離れした求人が生成されやすくなります。

これからの採用は、条件の合う人を「待つ」のではなく、条件を「合わせていく」姿勢が求められます。求人票を作るときには、「何曜日の何時なら対応可能か」「どの作業を任せたいか」など、一部戦力として活かせるポイントを明示し、それに合う人に向けたメッセージにすることが、結果的に応募数を増やすことにもつながります。AIを活用すれば、「フルタイムでがっつり働く人向けの文章」だけでなく、「時短勤務希望者向け」「副業・ダブルワーク希望者向け」など、ターゲット別の求人文を複数バリエーションで生成することも可能です。

人手不足が進むこれからの時代、「フルタイム勤務の働き盛り社員」を理想とし続けるのは危険です。多様な人材をどう活かすか、そのためにどんな条件を提示できるか。この視点を持つことが、求人戦略のカギとなります。AIはその戦略を実行するツールとして、大いに力を発揮してくれるはずです。

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