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2022.08.09

先生業(サービス業)とは

肩書に先生と付いたり何かを教えることになる職業である先生業(サービス業)は、基本的に無形の商品を取り扱います。 そのため、サービス内容や質などがお客様に伝わりにくいという特徴があります。 たとえ、まったく同じサービスの提供であっても、提供する人によりその質が大きく異なることや サービスを蓄積しておくことが困難といった特徴もあります。

一部の業界大手を除き、1人または数人規模の小規模の会社が多い傾向にあります。 多くのサービスでは、人員が増えると提供するサービスの質が維持できないことともに、 同品質のサービスを提供する人材が育成しづらいことや 教育コストがかかることなどが理由にあります。

大きく分けて、サービスの提供が1時間いくらといった時間単価を定めているものと、 このサービスはいくらといったサービスの実施そのものの価格が定められているものに分けられます。 前者は低単価で提供されることが多くなっていますが、後者はサービス次第で低単価から高単価のものまで幅広くなっています。

単価はサービス内容を多くの人が知っているもののほうが比較的、低単価になる傾向があります。 これは、サービスと価格を比較しやすい為です。これに対して、高付加価値のサービスの場合、サービスへの理解があまりないため、広く一般に認知してもらうことが困難です。

 

◆先生業(サービス業)の会計上の特徴とは

先生業(サービス業)は、原価がかからないもしくはかかってもわずかな場合が多く、基本的には「売上=粗利益」となります。 このように原価がかからない半面、サービスの提供は人に頼る必要があるため、一人で実施している場合を除き、人件費が多くなります。

このような特徴から、サービスの単価が上昇しないと売上の増加に比例して人件費が増加していきます。 すでに十分な利益があがる時間単価、サービス単価になっていれば構いませんが、 「単価=人件費+わずかな利益」となっている場合、いかに単価を上げるかが重要な要素になります。

人件費を除く経費の面では、高額な設備等が必要とならない場合が多く、費用を比較的安くすませることができます。 事務所や営業所を構える場合には、家賃等が目立つ費用になります。 そのため、個人のみで実施する場合、初期費用、運転資金等もあまりかからないため、少ない売上でも会社の維持ができます。

経営者の活動時間が、売上、利益に直結しやすい反面、 売上、利益にかかわらない業務を経営者が行ってしまうことが多く、 利益の向上に時間がさけないというスパイラルに陥りやすい業種です。 経営改善の基本として、経営者の時間確保のため、利益につながらない業務を、外部に委託するなどの工夫も重要なテーマになってきます。

まずは、自分が目指す利益を上げるために必要な単価を計算し、目標となる数字を得られるように経営改善することが、とても重要です。

 

◆定期的な確認が重要な3つの理由

経営上の数字は、定期的な確認が必要です。お話を伺うと、「うちはきちんと定期的に確認している」という会社さんでも、小規模・零細企業や個人事業の場合、細かく確認するのは1年に1回、決算のタイミングだけということは珍しくありません。 しかし、1年に1度というスパンでは、現実的にはあまり効果的とは言えません。

① 情報が古い

確認が年に1回では、直近の情報はともかく、それ以外の情報はだいぶ古くなってしまいます。あの時はこうだったけど、今は…。となってしまったら、せっかく振り返っても役に立てることができません。 なるべく新しい情報を活用することが、よりよい経営判断につながります。

② 細かい内容を思い出せない

1年に1度という長いスパンでは、個々の業務の細かい内容を思い出すことができません。例えば、「10か月前に行った業務の良し悪しについて…」とか「このサービスの利益率が…」という問題点などを考えようとしたときに なんだっけ?となってしまいます。現に、今、10か月前とは言わなくても半年前の業務のことを細かく思い出せますか?

③ 効果的な改善ができない

スパンが長くなってくると、各サービスの問題点がわかるのは、ずっと後のことになります。そのため、その間は問題が改善されないため薄利で業務が続いたり、損失を出し続けることになってしまいます。 そのうえ、②のように細かいことが思い出せないと、実際に改善すべき根本的な理由がはっきりとしません。その結果、効果的な経営改善につなげることができず、利益が伸び悩んでしまいます。 せっかくビジネスモデルを新たにしようと思っても、情報の活用もできません。

 

◆月次で振り返りで経営問題確認を

先生業(サービス業)の経営判断を行う上では、毎月1回の振り返りがおすすめです。 各サービスが軌道に乗るには、それなりの時間がかかるため、一歩一歩、目的地に向かっているかの確認が重要です。 このような傾向から、1週間単位では、大きな成果が出てきませんので、週に1回精密なチェックを行うと多くの時間がとられてしまいます。

そのため、日ごと・週ごとの振り返りは、業務の実施内容や進捗状況などの数字確認にとどめ、ざっとした振り返りを行ってください。 月に1回、予算(予想していた数字)と実際の数字との差異を確認し、個々の業務内容や目標管理などの現状の経営問題が浮き彫りになってきますので、そのタイミングで調整を行うと効果的です。

 

2022.08.08

◆自社の強みを知る

継続的に安定した経営を行っていくためには「差別化」が必要です。 そのために必要なことは自社の強みをしっかり把握し、その強みを磨いて勝負をすることです。

大手の宿泊チェーンであれば、様々な種類の宿泊施設の展開を行うことで、すべての年齢・性別を対象に商品展開し 全方位的に顧客を集める営業活動もコマーシャルも行うことができます。

しかし、小規模・零細企業や個人事業者は、人・モノ・金・情報のすべてが足りません。 そのため、同じように万人受けする商品を提供して勝負することはできません。

この分野のこのお客様相手なら、どの宿泊施設よりも高い価値を提供できるという部分をみつけ、そこを磨き、そこで戦っていくことビジネスモデルを作ることが最も効果的です。 立地、飲食、効率性等、様々な要素をもとに最も効果的な差別化を模索します。 差別化をして勝負を始めたら、お客様のニーズを聞きながらどんどん修正します。 そうして、より真似しづらく価値の高い差別化に作り上げていきます。

大手にとっては、非常に狭い市場の顧客に特化することは、総合的にマイナスになることの方が多いため真似をする資本があっても真似はなかなかしてきません。

 

◆差別化要因を長期的に磨く

強みをもとに差別化を行うためには長期的な経営戦略が必要不可欠です。 小規模・零細企業、個人事業の宿泊施設では大々的な広告宣伝による集客は困難です。 運転資金をもとに戦略的にビジネスモデルを磨き続ける必要があります。

例えば、飲食で勝負するのか、コンセプトを追求するのか、雰囲気を作り上げるのかで 方針は大きく変わってきます。 しかし、宿泊業の場合、どのような施策においても人が重要となります。 お客様サービスを行う従業員のやる気を引き出し、人を育てることにつながる 差別化プランを長期的な戦略で実施することが重要です。

また、在籍中のスタッフが納得し満足する店舗運営を行うことで新しいスタッフの雇用につながります。 近年、人員不足で廃業する宿泊施設が増えています。働きたい!と思ってもらえる店舗づくりが 人員の満足、売上の向上につながります。

宿泊業では、宿泊施設の効果的な活用と、旅行代理店等の手数料の削減の両立につながるため、 リピート顧客を確保することがとても重要です。 ただし、現実的には、毎年訪れたいような観光地があると言った場合でなければ、 宿泊施設がよいからということでリピートを得ることは困難です。 一般的な傾向として、色々なところに旅行に行きたくなるためです。

このような事実はあるにしても、やはりリピート顧客を得られるような努力はとても有効です。 ただしリピートとして得る効果を、長期的なスパンで検討することや リピートしたくなるほどのサービスが提供することで、口コミの誘発につなげるなど視点を変えることが重要です。

なお、状況が悪くなったからと言って、急激な変化は大きなリスクを伴います。ビジネスモデルを大きく変えた先には、その分野のプロがいて、簡単には勝てません。 新しいビジネスを小さく始め、じっくり育てる長期的な計画が重要です。

 

◆SNSによる集客の仕組み

宿泊業はサービスを提供する従業員と宿泊するお客様との関係性が高められる事業であり、SNSによる集客の仕組みを構築することがおすすめです。 どのような顧客を対象とするかにより活用するSNSは変わってきます。 また、拡散性の高いSNSを活用するのか、じっくりと広まるSNSを活用するのかは 店舗経営の方針や戦略などで大きく変わります。 例えば、高級店などはSNSを活用することで、ブランドイメージが棄損する可能性もあります。 店舗にあった集客手段であるかは見直すことが重要です。

SNSの活用は店舗のブランドを構築していくイメージです。 資金に余裕があればプロに相談できると効果的ですが、 余裕がない場合は、どのようなブランドイメージを作り上げたいかを考え 一貫した投稿を行うと効果的です。

ファンとなってくれたお客様と積極的にコミュニケーションをとることが 可能になるというメリットもあります。 店舗のフェアやサービスなどを告知することも可能です。 確保したお客様と継続的な関係性が構築できることも SNSのメリットです。

 

2022.08.07

◆節税を意識しない

税金はできることなら払いたくないという気持ちはとてもよくわかります。税金を払ってもお客さんが集まるわけでもありませんし、経営が改善されることもありません。 しかし、それでも経営者が節税を強く意識することは得策ではありません。

なぜかというと、原則的に、税金を減らすためには利益を減らす必要があるからです。法人の場合、税金は利益の一部(約30%)を国に納めるルールになっています。 つまり、「税金 = 利益×30%」です。そのため、経営者が一生懸命節税を考えるということは利益を減らすことを一生懸命考えることと同じこととなります。

そして、たいていの場合、利益を減らすということは、それだけ経費が増えることであり、経費を増やすためには現金が減ります。 現金が減れば、新しく収益を上げるための原資が減ります。結果的に利益の上がらない負のスパイラルにつながっていきます。

確かに、一部の例外的な施策では利益を減らさず税金が減るものもあります。 しかし、この点でも節税を経営者が目的とすると、例外的な施策のために経営を調整することにつながります。 これでは、利益をあげるための経営戦略のまっとうにつながりません。

また、経営者が経営を考えるべき貴重な時間が、節税という目的のためにどんどん減ってしまいます。どの点から考えても経済効率は良くありません。

 

◆自社の事業構造を知る

利益を下げようという意識をなくせば、あとは利益を上げよう!という意識を強く持つだけです。 そのための戦略策定や、経営判断の根拠として、自社の事業構造を数字の面から知ることがとても大事です。

一口に宿泊業と言っても、それぞれのビジネスモデルは大きく異なっています。 この場合、ビジネスモデルの違いによってまったく数字上の事業構造も違ってきます。例えば、次の3社です。

①宴会・観光まで行う大型観光ホテル

②個人経営の旅館

③宿泊専門のビジネスホテル

どうでしょうか?すべて宿泊業と言われますが、まったく商売が違うと思いませんか? 数字の面から見ても、これらの会社は全く違います。①は粗利益率(売上当たりの粗利益の割合)が高く人件費も高い。 逆に③は粗利益率は低いけど、そのための人件費は少ない ②は粗利益に限界があるので、人件費が抑制される商売になります。

このように同じ市場で商売する会社でも、その特徴がまったく違います。 また、①~③以外にも様々なビジネスモデルがあります。 したがって、小規模・零細企業や個人事業の場合、その事業構造をしっかり把握することがとても重要です。

 

◆自社の改善ポイントを知る

事業構造を把握したら、その事業構造に適した経営戦略の立案や、ビジネスモデルの改善などが必要になってきます。 その時、会計上、行える改善はざっくりいえば次の4つになります。

① 売上を増やす

ここでいう売上を増やすとは、顧客単価を上げることです。

② 粗利益を改善する

ここでいう粗利益を完全するとは、顧客数を増やすことです。

③ 原価を減らす

ここでいう原価を減らすとは、仕入材料や外注等の変動費を下げることです。

④ 固定費を減らす

ここでいう固定費を減らすは販管費等の会社の固定費を下げることです。

数字の点では、この4つが改善ポイントになります。会社の事業構造により、どこに手を打つのが最適かが変わってきます。 自社の事業構造を把握し、どこから改善を着手するかが効果的かを理解し、優先度をつけてビジネスモデルを構築することが効果的です。

 

◆従業員に数字で伝える

宿泊業では、提供する食べ物や飲み物の味はもちろん重要ですが、同時にスタッフが提供するサービスが顧客満足度に大きな影響を与えます。 そのため従業員のモチベーションが経営成果に与える影響が大きくなります。

このような現場では従業員のやる気を高めるために、従業員に数字で伝え、数字が理解できる従業員を育成することが、とても重要です。 多くの小規模・零細企業や個人事業では、社長の「頑張れよ!」という声掛けや「ガンバロー!」という朝礼などはあっても 経営指示が具体的な数字に落とし込まれていることは稀です。

残念ながら、従業員は社長のために働いてはくれません。従業員は、自分のために働いています。 従業員が納得いくように数字に落とし込み、満足できるように数字でメリットを伝えることで 自分から動くモチベーションを提供することができます。 「ガンバロー経営」から脱出し「未来会計」を活用した経営が効果的です。

 

2022.08.06

◆宿泊業は効率的な設備投資を行うことが重要

宿泊業は、原則的に日々の売上がそのまま現金にかわる日銭型の商売です。 また、顧客ごとの単価が大きく変動することがないため、一定の売上を継続することができれば、資金繰りに困ることはありません。

このような傾向にあるため、一般的に運転資金が必要とならない業種であり、金融機関から運転資金を得ることが難しいため業種です。 そのため運転資金のための自己資金の確保が非常に重要です。

これに反して、宿泊施設の開設のための設備投資は非常に高額になります。そのため、投資費用の回収がなかなか行えず、長期にわたる傾向にあります。 設備投資に当たっては、本当に必要であるかをよく検討し、必要なものにだけ投資を行うようにして、極力資金流出を抑えることで、 早期の回収が可能になります。投資資金を早期に回収することで、利益の積み増しが容易になり安定した経営が可能となります。 しかし、必要な経費を抑えてしまうと、後の収益につながりません。戦略にのっとったビジネスモデルをもとに合理的な判断が重要です。

宿泊業が投資資金を回収できない最大の理由は、初期の設備投資額に対して、顧客一人当たりの利益が伸びないことにあります。 そのため、起業時に思っていた以上に利益を積み重ねることが困難です。 また、客数の急激な低下がおきづらく、客数低下により急激に経営が悪化しにくい半面、短期に収益を上げづらいため、急激な回復が難しい業種です。 その結果、少しずつ資金繰りが厳しくなる傾向にあるため、他の業種と比較して強い危機感が出にくく、経営改善も起きにくい傾向があります。

 

◆銀行との信頼関係を高める

先に述べた通り、宿泊業は運転資金を借りることが難しい業種です。 特に開業後に、資金繰りが悪化した場合の借り入れは容易ではありません。 それは、宿泊業が開業後に必要とする運転資金の借り入れは赤字の補填の場合が多いからです。 金融機関に対して、回復までの具体的なビジネスモデルの提供が必要などハードルが高くなります。

これに対して、開業前の運転資金の借り入れは他の業種と比較して特段困難というわけではありません。 金融機関の納得するビジネスモデルをもとに、開業前により多くの資金融資を得て運転資金を得ることが重要です。

運転資金は借りにくい業種ですが、設備投資資金は借り入れることができます。 老舗などの古さを売りにしている宿泊業を除き、 経年劣化により設備が古くなってくると収益に影響が出やすい傾向にあります。 そのため、定期的に改修や新設が必要となり、このような資金を設備投資資金として金融機関より借り入れることとなります。 金融機関からなるべく良い条件(必要な資金を、なるべく早く、低利率)で融資してもらうためには、金融機関との信頼関係を高めることが重要です。 「銀行さんは、晴れの日に傘を貸して、雨の日に取り上げる」と言われますが、それは、金融機関との信頼関係がないことが最大の理由です。

金融機関との信頼関係は、財務諸表の数字、経営者の姿勢、資金の使用状況、返済実績、取引振りなどを通じて高めていきます。 全く利益が出ていないのに、新規開拓や営業努力が見られない期間が何年も続けば、金融機関としては信頼することができません。 他にも、資金を事業以外へ流用している、約束が守られない、利率だけでころころ借入先が変わる等があると信頼関係は崩れます。

金融機関はお金を貸し、貸した先の業績を好転させ、利息を払ってもらい利益を得る営利企業です。 返してもらえる当てがない、利息が払ってもらえない、そんな会社に資金を融資することはできません。 「あの自動車会社、ただで車くれないんだぜ、ケチだな!」とは言いませんよね。 「あの銀行、返せる確率が低い金、貸してくれないんだ、ケチだな!」と言っていませんか?

◆支払利息は必要経費

宿泊業は必要な運転資金は日々の売上で確保できるため、多店舗展開を行う予定がないのであれば、 金融機関から必ずしも運転資金での融資を得る必要がありません。

これに対して修繕や改修などで、定期的に設備融資を得る必要があるため、継続的な関係性の構築が必要です。 金融機関も、今までに取引したことのない会社に、お金を貸して!と言われても、すぐに融資することはできません。 融資のための審査にかなりの時間がかかります。

しかし、常日頃から、金融機関とのお付き合いがあれば、この問題点を回避しやすくなります。 運転資金や設備資金などで長期の借り入れがあれば、そのままの状況で金融機関とのお付き合いができています。

経営が順調で、もしすべて返済してしまいそうなら、返済満了に合わせて、お付き合いで少ない金額を長期で借りることをお勧めしています。 返済満了から次の借り入れまでが1~2か月程度なら、あまり問題になりませんが、半年、1年と空いてしまうと、 次の借入時には、もう一度、審査が必要となります。 その場合、融資に時間がかかってしまう場合があります。

300万円の借入を5年返済、年利1%なら、年間利息は3万円未満です。 もちろん財務状態や資金の使用状況など、金融機関が当たり前に必要とする環境づくりは必要ですが、 年3万円(30%の税金なら負担額は2.1万円)で融資が受けやすくなるのなら 必要経費と割り切ってみてはどうでしょう? ちょっとした接待交際費と考えれば、多くはないと思います。

 

◆財務体質を改善し(実質)無借金を!

資金繰りを良くするうえで、金融機関の信頼を得ることはとても重要です。 そして、そのためにまず行う財務状態の改善は、そのまま良い財務体質を作り上げることと同じです。 どのような財務状態を作りたいのか、明確な目的を定めて戦略的に行うことがとても重要です。

基本的な目安として、預貯金が総資産の30%以上、自己資本比率30%以上という指標があります。 運転資金に使える現金・預金を合わせた合計が、全資産(現金・預金含む)の総額の30%以上というのが「預貯金が総資産の30%以上」になります。 また、純資産の部という資本金やこれまでの利益の合計が、全資産の総額の30%以上というのが「自己資本比率30%以上」になります。 この数字が絶対というわけではありませんが、一応の目安となります。

なお、純資産の部がマイナスになる債務超過は資金を考えるうえで、様々な点で問題が生じますので、債務超過となっている場合、まずは純資産の部をプラスにすることが重要です。

先に述べた通り、金融機関との取引をなくしてしまうとつなぎの融資をすぐに得たいときや、景気後退にともない一時的な運転資金の融資を受けたいときなどに困ることがあります。 必要に応じた設備投資を効果的に受けるためにも、全ての借金を返済しきる無借金経営ではなく実質無借金経営を目指すことが望ましくあります。実質無借金経営とは、「現預金の総額 > 借入金の総額」となっている状況です。

2022.08.05

◆宿泊業とは

宿泊業とはホテルや旅館などが一般的で、人々の旅行や出張をサポートするための業種です。 ビジネスホテルなど都心のビジネスマンを対象としたものでは飲食が提供されない場合もありますが、 宿泊業にとって、提供する飲食物は大きな意味を持つことが多くなっています。 宿泊設備の規模によっては宴会部門を有していることもあり、結婚式などを行っている施設もあります。

観光地では観光産業と密接なかかわりを持つ宿泊施設も多く、観光地でのアクティビティや 他業者との連携、自社でアクティビティの提供を行っている宿泊施設もあり、 規模に応じて事業内容に幅があります。

業務はフロント業務や接客業務が一般的にイメージされますが、厨房での料理の製造や、清掃など 宿泊を支える部分でも多くの人員がかかわっています。 また、大規模な宿泊チェーンになると全体を管理する会社等があることもあります。

このように多様な面があるため、施設維持や主要業務以外に外部業者を活用する場合もあります。

 

◆宿泊業の会計上の特徴とは

宿泊業は、宿泊設備が資産の大部分を占めます。また、定期的な改修により設備が増強されることもあり 、設備の使用内容等に合わせた適切な会計処理を求められます。

集客は旅行代理店経由が多く、その手数料が大きな負担となります。 近年はインターネット上の集客サイト等も充実しており、 集客サイトへの手数料も増加傾向です。 インターネットでの集客が増加してきたため、自社サイト等の活用により これらの手数料の抑制が利益に大きな影響を与えます。

経費上の重要な項目に人件費があります。 経営戦略やビジネスモデルにもよりますが、多くの宿泊業は接客が重要な要素となっており人員の確保が重要です。 そのため、人件費が多くなる傾向にあります。 飲食を提供しないビジネスホテル等では、人員を極端に抑えることができる場合もあります。

売上は、宿泊料が最大の収入源です。また、飲食を提供している場合には、飲食代も売上に大きな影響を与えます。 総売上額は、「宿泊収入×顧客数」または「(宿泊収入+飲食収入)×顧客数」でおおむね表すことができます。 そのため、宿泊における顧客単価がいくらなのか?飲食における顧客単価がいくらなのか?いくらに設定できるのか?が 利益をあげるうえで非常に重要な要素となります。

現場や事業内容、ビジネスモデルなどにより、個々の会社ごとの数字は異なってきます。 まずは、自社の情報をもとに、正しい原価計算を行い、経営改善に活用することが、とても重要です。

 

◆定期的な確認が重要な3つの理由

経営上の数字は、定期的な確認が必要です。お話を伺うと、「うちはきちんと定期的に確認している」という会社さんでも、小規模・零細企業や個人事業の場合、細かく確認するのは1年に1回、決算のタイミングだけということは珍しくありません。 しかし、1年に1度というスパンでは、現実的にはあまり効果的とは言えません。

① 情報が古い

確認が年に1回では、直近の情報はともかく、それ以外の情報はだいぶ古くなってしまいます。あの時はこうだったけど、今は…。となってしまったら、せっかく振り返っても役に立てることができません。 なるべく新しい情報を活用することが、よりよい経営判断につながります。

② 細かい内容を思い出せない

1年に1度という長いスパンでは、個々の業務の細かい内容を思い出すことができません。例えば、「10か月前に行った集客イベントの利益について…」とか「この月の利益率が…」という問題点などを考えようとしたときに なんだっけ?となってしまいます。現に、今、10か月前とは言わなくても半年前の業務のことを細かく思い出せますか?

③ 効果的な改善ができない

スパンが長くなってくると、経営上の問題点がわかるのは、ずっと後のことになります。そのため、その間は問題が改善されないため、利益を思ったほど得られなかったり、損失を出し続けることになってしまいます。 そのうえ、②のように細かいことが思い出せないと、実際に改善すべき根本的な理由がはっきりとしません。その結果、効果的な経営改善につなげることができず、利益が伸び悩んでしまいます。 せっかくビジネスモデルを新たにしようと思っても、情報の活用もできません。

 

◆月次で振り返りで経営問題確認を

宿泊業の経営判断を行う上では、毎月1回の振り返りがおすすめです。 一般的には頻繁にイベント等を行い集客を活性化するような、宿泊施設からのアクティブ活動は少ないため、週に1回精密なチェックを行うと多くの時間がとられてしまいます。

そのため、日ごと・週ごとの振り返りは、業務の実施内容や進捗状況などの数字確認にとどめ、ざっとした振り返りを行ってください。 月に1回、予算(予想していた数字)と実際の数字との差異を確認し、個々の業務内容や目標管理などの現状の経営問題が浮き彫りになってきますので、そのタイミングで調整を行うと効果的です。

時期的な集客の波がある場合、集客シーズンの開始当初に、集客の試みを行う場合には、短期間での収益や利益の状況の確認は必要です。

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