『生成AI時代の「超」仕事術大全』
保科学世, アクセンチュアAIセンター
東洋経済新報社 (2023/11/1) 1,980円
【感想】
著者は、アクセンチュアにてAI・アナリティクス部門の日本統括、およびデジタル変革の知見や技術を結集した拠点「アクセンチュア・イノベーション・ハブ東京」の共同統括を務める。AI HUBプラットフォームや、業務領域ごとに体系化したAIサービス群「AI POWERED サービス」、需要予測・在庫補充最適化サービスなどの開発を手がけるとともに、アナリティクスやAI技術を活用した業務改革を数多く実現。厚生労働省保健医療分野AI開発加速コンソーシアム構成員などを歴任。一般社団法人サーキュラーエコノミー推進機構理事。大局的な将来のAI時代を予測する一冊です。
アクセンチュアの分析によると、全労働時間の40%がLLM(大規模言語モデル)の影響を大きく受けるとされています。業種による違いはありますが、事務作業においては63%が強い影響を受け、さらに小さな影響を含めるとその割合は77%に達します。一方で、法務では強い影響を受ける割合は44%にとどまるものの、小さな影響を含めると100%に及びます。このように、LLMだけでも影響の範囲は少なくありません。さらに、その他のAI技術が加われば、影響の範囲はさらに広がるでしょう。また、近年ではAIが物理的な環境とのインターフェース(例えばロボットアーム)を持つようになり、AIが業務に与える影響は想定以上に広がる可能性があります。こうした背景を踏まえると、AIを業務に取り込むだけでなく、AIと対立するのではなく活用する新たなビジネスモデルへの変革が必要です。それは未来の課題ではなく、まさに今取り組むべき重要な課題であると感じられます。
【以下、引用】
MELDASフレームワーク
マインドセット:従来とは根本的に異なるアプローチを考え、あるべき業務プロセスを想像する
エクスペリメント:従来通りの業務プロセスだと生成AIによる効果の果実を最大限に得ることができない
リーダーシップ:人間とAIの協働を促進し、AIの責任ある使用にコミットする
データ:最新の注意を払ってデータを取り扱う
スキル:人間とAIが融合するスキルを開発する
ホワイトカラーの仕事はデスクワークからフィールドワークにシフトするだろう。調査やレポート作成といったデスクワークは、生成AIの力を借りてできるだけ効率化し最小限にし、それよりは現場に出て課題を五感で拾うべきである。世の中のトレンドや社会課題に対するアンテナの高さ、精度の高い五感センサーとしての洞察力や、討議や周知のためのコミュニケーション能力、人を動かすリーダーシップ、物事を動かす情熱、最終判断・意思決定に必要となる倫理性、それらは人間しか持っていないものであり、そういったことにより多くの時間を費やす。課題を設定するのは人である。そして、生成AIと共同して“知”の融合・開発が起こることにより、高い生産性・創造性で様々な社会課題を解決していけるだろう。