先生業(サービス業)とは
肩書に先生と付いたり何かを教えることになる職業である先生業(サービス業)は、基本的に無形の商品を取り扱います。 そのため、サービス内容や質などがお客様に伝わりにくいという特徴があります。 たとえ、まったく同じサービスの提供であっても、提供する人によりその質が大きく異なることや サービスを蓄積しておくことが困難といった特徴もあります。
一部の業界大手を除き、1人または数人規模の小規模の会社が多い傾向にあります。 多くのサービスでは、人員が増えると提供するサービスの質が維持できないことともに、 同品質のサービスを提供する人材が育成しづらいことや 教育コストがかかることなどが理由にあります。
大きく分けて、サービスの提供が1時間いくらといった時間単価を定めているものと、 このサービスはいくらといったサービスの実施そのものの価格が定められているものに分けられます。 前者は低単価で提供されることが多くなっていますが、後者はサービス次第で低単価から高単価のものまで幅広くなっています。
単価はサービス内容を多くの人が知っているもののほうが比較的、低単価になる傾向があります。 これは、サービスと価格を比較しやすい為です。これに対して、高付加価値のサービスの場合、サービスへの理解があまりないため、広く一般に認知してもらうことが困難です。
◆先生業(サービス業)の会計上の特徴とは
先生業(サービス業)は、原価がかからないもしくはかかってもわずかな場合が多く、基本的には「売上=粗利益」となります。 このように原価がかからない半面、サービスの提供は人に頼る必要があるため、一人で実施している場合を除き、人件費が多くなります。
このような特徴から、サービスの単価が上昇しないと売上の増加に比例して人件費が増加していきます。 すでに十分な利益があがる時間単価、サービス単価になっていれば構いませんが、 「単価=人件費+わずかな利益」となっている場合、いかに単価を上げるかが重要な要素になります。
人件費を除く経費の面では、高額な設備等が必要とならない場合が多く、費用を比較的安くすませることができます。 事務所や営業所を構える場合には、家賃等が目立つ費用になります。 そのため、個人のみで実施する場合、初期費用、運転資金等もあまりかからないため、少ない売上でも会社の維持ができます。
経営者の活動時間が、売上、利益に直結しやすい反面、 売上、利益にかかわらない業務を経営者が行ってしまうことが多く、 利益の向上に時間がさけないというスパイラルに陥りやすい業種です。 経営改善の基本として、経営者の時間確保のため、利益につながらない業務を、外部に委託するなどの工夫も重要なテーマになってきます。
まずは、自分が目指す利益を上げるために必要な単価を計算し、目標となる数字を得られるように経営改善することが、とても重要です。
◆定期的な確認が重要な3つの理由
経営上の数字は、定期的な確認が必要です。お話を伺うと、「うちはきちんと定期的に確認している」という会社さんでも、小規模・零細企業や個人事業の場合、細かく確認するのは1年に1回、決算のタイミングだけということは珍しくありません。 しかし、1年に1度というスパンでは、現実的にはあまり効果的とは言えません。
① 情報が古い
確認が年に1回では、直近の情報はともかく、それ以外の情報はだいぶ古くなってしまいます。あの時はこうだったけど、今は…。となってしまったら、せっかく振り返っても役に立てることができません。 なるべく新しい情報を活用することが、よりよい経営判断につながります。
② 細かい内容を思い出せない
1年に1度という長いスパンでは、個々の業務の細かい内容を思い出すことができません。例えば、「10か月前に行った業務の良し悪しについて…」とか「このサービスの利益率が…」という問題点などを考えようとしたときに なんだっけ?となってしまいます。現に、今、10か月前とは言わなくても半年前の業務のことを細かく思い出せますか?
③ 効果的な改善ができない
スパンが長くなってくると、各サービスの問題点がわかるのは、ずっと後のことになります。そのため、その間は問題が改善されないため薄利で業務が続いたり、損失を出し続けることになってしまいます。 そのうえ、②のように細かいことが思い出せないと、実際に改善すべき根本的な理由がはっきりとしません。その結果、効果的な経営改善につなげることができず、利益が伸び悩んでしまいます。 せっかくビジネスモデルを新たにしようと思っても、情報の活用もできません。
◆月次で振り返りで経営問題確認を
先生業(サービス業)の経営判断を行う上では、毎月1回の振り返りがおすすめです。 各サービスが軌道に乗るには、それなりの時間がかかるため、一歩一歩、目的地に向かっているかの確認が重要です。 このような傾向から、1週間単位では、大きな成果が出てきませんので、週に1回精密なチェックを行うと多くの時間がとられてしまいます。
そのため、日ごと・週ごとの振り返りは、業務の実施内容や進捗状況などの数字確認にとどめ、ざっとした振り返りを行ってください。 月に1回、予算(予想していた数字)と実際の数字との差異を確認し、個々の業務内容や目標管理などの現状の経営問題が浮き彫りになってきますので、そのタイミングで調整を行うと効果的です。