◆節税を意識しない
税金はできることなら払いたくないという気持ちはとてもよくわかります。税金を払ってもお客さんが集まるわけでもありませんし、経営が改善されることもありません。 しかし、それでも経営者が節税を強く意識することは得策ではありません。
なぜかというと、原則的に、税金を減らすためには利益を減らす必要があるからです。法人の場合、税金は利益の一部(約30%)を国に納めるルールになっています。 つまり、「税金 = 利益×30%」です。そのため、経営者が一生懸命節税を考えるということは利益を減らすことを一生懸命考えることと同じこととなります。
そして、たいていの場合、利益を減らすということは、それだけ経費が増えることであり、経費を増やすためには現金が減ります。 現金が減れば、新しく収益を上げるための原資が減ります。結果的に利益の上がらない負のスパイラルにつながっていきます。
確かに、一部の例外的な施策では利益を減らさず税金が減るものもあります。 しかし、この点でも節税を経営者が目的とすると、例外的な施策のために経営を調整することにつながります。 これでは、利益をあげるための経営戦略のまっとうにつながりません。
また、経営者が経営を考えるべき貴重な時間が、節税という目的のためにどんどん減ってしまいます。どの点から考えても経済効率は良くありません。
◆自社の事業構造を知る
利益を下げようという意識をなくせば、あとは利益を上げよう!という意識を強く持つだけです。 そのための戦略策定や、経営判断の根拠として、自社の事業構造を数字の面から知ることがとても大事です。
一口に飲食店と言っても、それぞれのビジネスモデルは大きく異なっています。 この場合にはビジネスモデルの違いによってまったく数字上の事業構造が違ってきます。例えば、次の3社です。
①個人経営の天ぷら専門店
②ビュッフェ形式の洋風レストラン
③多店舗展開の居酒屋
どうでしょうか?すべて飲食店と言われますが、まったく商売が違うと思いませんか? 数字の面から見ても、これらの会社は全く違います。①は粗利益率(売上当たりの粗利益の割合)が高く人件費も低い、しかし客数は少ない。 逆に③は粗利益率は低いけど客数が多く、そのための人件費が多い
このように同じ市場で商売する会社でも、その特徴がまったく違います。 また、①~③以外にも様々なビジネスモデルがあります。 したがって、小規模・零細企業や個人事業の場合、その事業構造をしっかり把握することがとても重要です。
◆自社の改善ポイントを知る
事業構造を把握したら、その事業構造に適した経営戦略の立案や、ビジネスモデルの改善などが必要になってきます。 その時、会計上、行える改善はざっくりいえば次の4つになります。
① 売上を増やす
ここでいう売上を増やすとは、顧客単価を上げることです。
② 粗利益を改善する
ここでいう粗利益を完全するとは、顧客数を増やすことです。
③ 原価を減らす
ここでいう原価を減らすとは、仕入材料や外注等の変動費を下げることです。
④ 固定費を減らす
ここでいう固定費を減らすは販管費等の会社の固定費を下げることです。
数字の点では、この4つが改善ポイントになります。会社の事業構造により、どこに手を打つのが最適かが変わってきます。 自社の事業構造を把握し、どこから改善を着手するかが効果的かを理解し、優先度をつけてビジネスモデルを構築することが効果的です。
◆従業員に数字で伝える
飲食業では、提供する飲食物の味はもちろん重要ですが、同時にスタッフが提供するサービスが顧客満足度に大きな影響を与えます。 そのため従業員のモチベーションが経営成果に与える影響が大きくなります。
このような現場では従業員のやる気を高めるために、従業員に数字で伝え、数字が理解できる従業員を育成することが、とても重要です。 多くの小規模・零細企業や個人事業では、社長の「頑張れよ!」という声掛けや「ガンバロー!」という朝礼などはあっても 経営指示が具体的な数字に落とし込まれていることは稀です。
残念ながら、従業員は社長のために働いてはくれません。従業員は、自分のために働いています。 従業員が納得いくように数字に落とし込み、満足できるように数字でメリットを伝えることで 自分から動くモチベーションを提供することができます。 「ガンバロー経営」から脱出し「未来会計」を活用した経営が効果的です。