◆飲食業とは
飲食業は、一部の大手企業の運営するチェーン店と、その他多くの零細企業や個人が経営する小規模な数多くの店舗が存在します。 ひとくくりに飲食業といっても様々なジャンルがあり、近年ではその多様性がますます広がっており、各店舗の店長の強い個性がうかがえるお店もあります。
一部の高級店を除き、一人当たりの売上は数百円~数千円程度であり、事業の継続には客数をいかに確保するかが非常に重要です。 飲食という生活にとって欠かせない業種であり、様々な集客の手段を効果的に活用することで、反応を得やすいことが特徴です。 そのため各事業者は、各店舗ごとの特長を出し、趣向を凝らした集客手段を行っています。 その結果、繁盛店が出る一方で、特徴のない店舗や特徴を伝えられない店舗は、認知が低く収益が伸び悩む傾向にあります。
多くの顧客に対してサービスを提供するため、多くの人員を必要とします。 これまではアルバイト等の安価な労働力を活用することで対応してきましたが人手不足により 人員単価があがり経営は苦しくなってきています。
◆飲食業の会計上の特徴とは
飲食点の多くは、比較的低単価で多くの顧客に飲食を提供する形態であり、個々の顧客の原価計算を適切に行わないと 多数の顧客に飲食を提供してもなかなか利益を得ることができません。 顧客により良いものを提供しようとすると容易に原価が上昇する傾向にあり、
顧客ニーズを満たすこと / 調理人の納得のいく商品を提供すること / 利益を得ること
のバランスをとるのが難しい業種でもあります。近年、物価上昇にともない材料費が上昇していることも踏まえ、 最低でも店舗の維持費を賄うだけの粗利益が出せるよう、細かい数字の積み重ねが重要です。
店舗の維持費としては、人件費、店舗家賃、減価償却費が多く、水道光熱費も高くなる傾向にあります。 地域によっては駐車場の確保が必須であり、駐車場家賃も安くはありません。 車での移動が一般的な地域では、客単価向上の重要品目である、酒類の販売に制約が出やすく 客単価が上げにくく、粗利益が得にくい会計上の特徴があります。
そのため、適切な売値(各商品の売上)はいくらなのか、適切な仕入れ値(原価)はいくらなのかを知らなくてはいけません。 しかし、事業内容、ビジネスモデルなどにより、個々の会社ごとの数字は異なってきます。
まずは、自社が提供している飲食の情報をもとに、現状の原価を把握し、目標利益を出せる原価計算を行ったうえで、正しい原価に向けた、売値、仕入れ値を検討することが重要です。 個々の情報を正しく管理し、経営改善に活用することが、とても重要です。
◆定期的な確認が重要な3つの理由
経営上の数字は、定期的な確認が必要です。お話を伺うと、「うちはきちんと定期的に確認している」という会社さんでも、小規模・零細企業や個人事業の場合、細かく確認するのは1年に1回、決算のタイミングだけということは珍しくありません。 しかし、1年に1度というスパンでは、現実的にはあまり効果的とは言えません。
① 情報が古い
確認が年に1回では、直近の情報はともかく、それ以外の情報はだいぶ古くなってしまいます。あの時はこうだったけど、今は…。となってしまったら、せっかく振り返っても役に立てることができません。 特に飲食業の場合、新商品の提供など、かなり短期間で状況把握する必要がある場合があります。 また、様々なイベントによる影響が非常に大きく日々新しい情報が必要となる場合があります。 なるべく新しい情報を活用することが、よりよい経営判断につながります。
② 細かい内容を思い出せない
1年に1度という長いスパンでは、個々の業務の細かい内容を思い出すことができません。例えば、「10か月前に行ったこのメニューについて…」とか「この月の利益率が…」という問題点などを考えようとしたときに なんだっけ?となってしまいます。現に、今、10か月前とは言わなくても半年前の業務のことを細かく思い出せますか?
③ 効果的な改善ができない
スパンが長くなってくると、各試みの結果ががわかるのは、ずっと後のことになります。そのため、その間は提供したイベントが成功したのか失敗したのかを客観的に正しく把握することができません。 そのうえ、②のように細かいことが思い出せないと、実際に改善すべき根本的な理由がはっきりとしません。その結果、効果的な経営改善につなげることができず、利益が伸び悩んでしまいます。 せっかくビジネスモデルを新たにしようと思っても、情報の活用もできません。
◆月次・週次で振り返りで経営問題確認を
飲食業の経営判断を行う上では、毎月1回の振り返りが必要です。 また、個別のイベントや季節メニュー、新しいチャレンジなどを行った場合には、限定的な情報でよいので、毎週振り返り問題点等を短期的に確認することが効果的です。 全体の傾向としては、月に1回、予算(予想していた数字)と実際の数字との差異を確認し、個々の業務内容や目標管理などの現状の経営問題が浮き彫りになってきますので、そのタイミングで調整を行うと効果的です。