
『宗教は地理から学べ』
宮路秀作(著)
SBクリエイティブ(2025/3/27) 1,870円
【感想】
著者は代々木ゼミナールで地理講座を担当する名物講師です。「なぜそうなるのか」を読み解く独自の授業で高い支持を集めています。日本地理学会企画専門委員会委員。著書に『経済は地理から学べ!』『現代世界は地理から学べ』『宗教は地理から学べ』など多数。単著25冊、累計発行部数31万部超。2017年度日本地理学会賞(社会貢献部門)受賞。Yahoo!ニュースオーサーとしても活動し、地理学の視点から国際情勢や経済をわかりやすく解説しています。本書はそんな著者が2025年に地理の視点から宗教にフォーカスを当てた書籍です。
近年、地政学という言葉を耳にする機会が増えました。政治や経済が地理の影響を受けるのは当然ですが、本書を読むと、宗教もまた地理的条件に大きく左右されてきたことが分かります。
例えば、過酷な砂漠地帯だからこそ唯一絶対の神を求める一神教(ユダヤ教・キリスト教・イスラム教)が発達したという見方や、生き物にあふれた地域だからこそ輪廻転生の思想(ヒンドゥー教・仏教)が生まれたという考え方は非常に興味深いものでした。もちろん、その後の宗教の発展には地理だけでなく政治的要因も大きく関わっています。しかし、「なぜその地域でその宗教が広まったのか」という視点を持つことで、歴史や国際情勢の見え方は大きく変わります。
現在の中東情勢を見ても、宗教的背景を理解せずに本質を捉えることは難しいでしょう。その意味で本書は、世界の主要な宗教を地理という切り口から俯瞰し、地理・歴史・政治を結び付けて考えるための優れた入門書だと感じました。
宗教の解説書というよりも、世界情勢や国際政治を理解するための教養書として読む価値のある一冊です。今後の世界経済やビジネス環境を考えるうえでも、宗教と地理の関係を知っておく意義は大きいと思います。
【以下、引用】
現代では、宗教法人である神社本庁が全国の神社を管理しています。各都道府県には神社庁が置かれ、神社庁単位でYoutubeチャンネルを開設するなど、意外と「ナウい」運営がされています。
信仰を深めるかどうかは各自が選ぶことですが、日本の分化を理解するために、神道を学ぶことは不可欠であるように思えます。…「信仰していないけど神頼みする」というのも良いですが、漫画「シャーマンキング」(武井宏之著)に出てくる主人公の、「神頼みじゃなくて、自分に誓いを立てること」という初詣に対する考え方が粋な現実解に思えます。
初めのほうは血縁がつながっているかボヤっとしているとはいえ、今上天皇で126代という、人間の寿命では気が遠くなるくらい永い年月をかけて、先人たちが神道という日本の文化的な遺産を守ってきました。
これをもって「愛国心がどうの」というつもりはありませんが、タイムマシンで歴史を改ざんするくらいでないと他の国が真似できない天皇という存在と皇室制度が、日本ではいまだに続いています。少なくともこれは日本固有の価値であり、強みであると思います。ビジネス用語で表現するなら、これは明らかに日本のコアコンピタンスの一つです。この価値を理解して将来の日本へつないでいくことは、昨今叫ばれるグローバル社会の中で、日本の生存戦略の一つとしてかなり有望ではないでしょうか。