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2025.11.04
ブックレビュー (2025年11月)

『WHYから始めよ!』

サイモン・シネック(著)

日本経済新聞出版(2012/1/25) 1,760円

 

【感想】

サイモン・シネックは、アメリカの著作家であり、リーダーシップや組織文化に関する世界的な講演家です。広告代理店での経験を経て独立し、企業やリーダーに「なぜ(Why)」から始める重要性を説いた本書で注目を集めました。彼のTEDトーク「優れたリーダーはどうやって行動を促すか」は史上最も視聴された講演の一つとして知られています。その後も『リーダーは最後に食べる』や『無限ゲーム』など、組織と人間の可能性を探求する著作を多数発表。現在は「The Optimism Company」を設立し、より良い社会を築くための教育・発信活動を続けています。

本書は、一般的なビジネス書に多い「How to」ではなく、物事の“原点”を静かに問いかける一冊です。著者は「人は“何をするか”ではなく、“なぜそれをするか”に共感して動く」と語り、この考えをもとに「WHY→HOW→WHAT」という“ゴールデンサークル”理論を提示します。Appleやマーティン・ルーサー・キングといった、強い信念を持つリーダーたちの行動原理を通じて、成果を生み出す組織や人に共通する核心を明らかにしています。私自身もそうですが、日々の業務や判断の中で「なぜそれをやるのか」という問いを置き去りにしてしまうことがあります。本書は、その当たり前の問いを思い出させてくれる本です。目的を明確にすることで、人も組織もエネルギーの方向が揃い、長期的な成果へとつながる。その大切さをあらためて感じました。特に、日々迷いや停滞の中で経営判断を重ねる零細企業の経営者にとって、本書は答えを与える本ではありませんが、“考えるきっかけ”を与えてくれる一冊です。本書を読んで、自分の「なぜ」を探してみませんか?

 

【以下、引用】

顧客が顧客でありつづけている理由、あるいは社員が社員であり続けている理由を、大半の企業がきちんと把握していないのであれば、就職希望者を増やす方法や社員の忠誠心を育てる方法など、わかるはずがない。実際のところ、大半の企業は自社のビジネスを駆り立てているものの正体がわからないまま、不完全な前提や、もっと悪いことに完全に誤った前提に基づいて決断を下している。

人間の行動に影響を及ぼす方法は、ふたつしかない。操作(マニピュレイト)するか、鼓舞(インスパイア)するか、だ。…操作はごくありふれた策略だ。なにしろ私たちはたいてい、子供の頃から操作を経験してきている。例えば、「きみの親友になるよ」という約束は、その見返りに望みのものを仲間からせしめようと、何世代もの子どもたちが利用してきた有効な交渉術だ。親友になって欲しいと思い、相手に飴を手渡した経験のある子どもならだれでも、こう証言するはずだ。効果あり、と。

ビジネスから政治まで、あるいはセールスからマーケティングまで、どんな世界でも操作がはびこっている。・・・自社の顧客がずっと顧客でありつづけている理由を明確に把握していない場合、企業は望みのものを手に入れようとむやみやたらに操作をおこなう。操作にすっかり依存してしまうのだ。無理もない。操作には効果があるからだ。・・・・・・こんにちの世界では、操作が標準になっている。これが、現実。

だが、べつの選択肢もある。

 

 

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