『生成AIで世界はこう変わる』
今井 翔太(著)
SBクリエイティブ (2024/1/7) 990円
【感想】
日本のAI研究の第1人者である東京大学松尾豊先生の研究室に所属し、人工知能の強化学習の研究に従事する今井翔太さんの著書。歴史的な技術革命の最先端知識をもとに、AIによる現在・過去・未来についてまとめた本。
本書を読んで、最先端の技術者が想定する生成AIの影響は、一般人が考えるよりもはるかに早く、そして広範にわたっていることを感じました。現在進行形で、AIが様々な創作活動をしています。画像生成からはじまり動画作成をおこなうようになりました。また、品質も利便性も向上し、非常に使い勝手の良いものになりました。生成AIどうしの連携も始まり、ChatGPTリリースの時には考え付かなかったレベルになってきています。このスピード感を踏まえれば今後の5年間という短期間でホワイトカラーが担う事務系統の職業だけではなく、家事や介護のような現場にも入り込む可能性が大きくなってきました。
今後はこれまでにないスピードで成長する生成AIという技術を否定していても世界の流れに置いて行かれます。積極的に活用してトライ&エラーで身に着けなくてはいけません。そのような生成AIの流れを知るためには最先端の技術者がどのように考えているかを知ることが近道です。これからのビジネスに与える大きな影響について知っておくために、ぜひ読んでいただきたい1冊です。
【以下、引用】
生成AIなどの技術による労働への影響を考える場合、その技術が「労働補完型」の技術なのか、「労働置換型」の技術なのか、分けて考える必要があります。
労働補完型の技術とは、人間の労働を補助し、その労働自体を楽にしたり、生産性を上げたり、新しい仕事を生み出すきっかけになるような技術です。一方の労働置換型の技術とは、文字通り人間の労働を完全に置き換え、人間が介在する余地をなくしてしまうような技術です。
・・・
それでは生成AIは労働保管型の技術なのでしょうか。それとも労働置換型の技術なのでしょうか。
人間が介在する余地が残るかどうかは、その仕事のもともとの複雑さに依存します。元の仕事が一定以上複雑な場合、技術を投入しても、その技術自体をコントロールする人材や最終的な出力責任を持って選択する人材は、依然として必要です。