前回までで貸借対照表の右側の負債と純資産のお話をしました。
今回は、貸借対照表の左側の部分、「資産」と呼ばれる部分です。
前回までのお話で、貸借対照表の右側はお金がどのように入ってきたのかを
表していることがわかりました。
その入ってきたお金が、どこに使ったのか?が貸借対照表の左側で書かれています。
ただし、使ったお金のすべてが貸借対照表の左側に書かれているわけではありません。
左側に書かれるものにはルールがあります。
そのルールは、次の通りです。
@ 価値が残っていること
A 価値が数字で表せること
このルールに該当するものだけを左側に書くことができます。
少し具体的な例で見ていきます。
例えば、商品を作るための工場を買ったとします。
この場合、工場は売ることができるため、価値があるので@を満たします。
また、いくらで買ったかがわかるので、価値が数字で表すことができ、Aを満たします。
飲食店を立ち上げる時を例にあげてお金の流れを見ながら、
資産について考えていきます。
まず、会社を創った時は、社長が会社に資本金という形でお金を入れます。
そのお金は、銀行に預けられます。
これは、入ってきたお金を銀行預金に使ったと考えることができます。
この時、下の図のようになります。
株主から入ってきたお金が、銀行預金に使われています。
つぎは飲食店を始める準備をしなければいけません。
そのためにやることを次の3つだとします。
T 材料を買う
U 厨房機器を買う
V お店を借りる
まず、Tについて考えます。Tの材料は買った時点では材料が残っているので価値があります。
そのためルールの@を満たします。また、買った値段は明らかなのでルールのAも満たします。
そのため材料は資産に書くことができます。
これはUの厨房機器についても同じことが言えます。
つまりTとUというのは次の図のようになります。
次にVを考えます。Vのお店を借りるには家賃を払う必要があります。
お店を借りた場合、払った家賃の分だけ使うことができますが、
家賃の分は使い切ってしまうので、価値が残りません。
つまりルールの@を満たしません。そのため、貸借対照表に書くことができません。
しかし、飲食店の場合、お店がどこにあるか知ってもらっていることは
とても重要です。そう考えれば、同じ場所にお店を借りているというコトには
価値がありそうな気がします。
では価値があると仮定してルールの@を満たしたとします。
この場合、その価値は数字で表すことができません。
そのため、結局Aを満たさないのです。
同じようなお金の使い方に人を雇った場合があります。
人を雇ったのだから何らかの価値がありそうです。
しかし、払った給料はすでに働いてもらった分なので、
価値が残りません。また、雇った人の価値を数字で表そうとしても
いくらにすればよいのかわかりません。
例えば、スティーブ・ジョブズ氏の価値はいくらだったのでしょうか?
豊田章男氏の価値はいくらでしょうか?
すごく高いとは思うのですが、数字で表すことができないのです。
そのため貸借対照表に乗せることができません。
その結果、Vの家賃を支払った場合などは、下の図のように資産も純資産も減っていきます。
このようなルールで貸借対照表の資産は書かれていきます。
その後、飲食店が成長し、今使っている厨房機器では足りなくなったため
買い換えることにしました。
この時の流れは、
A 古い厨房機器を売る
B 新しい厨房機器を買う
ですよね。この中で特にAというのは、古い厨房機器(資産)を売ることで
お金に換えることになります。つまり次の図のようになります。
その後、変えたお金と銀行預金を使って新しい厨房機器を買う場合は次のようになります。
この考え方、銀行預金の場合でも同じように考えます。
銀行預金という資産は、もう使ってしまったものなので、そのままでは使うことができません。
銀行から一旦引き出してお金に換えることで使うことができます。
例えば、一番最初の材料と厨房機器を買った場合で考えると次の図のようになります。
資産というのは、このようにすでに使われてしまったものという考えがとても重要です。
このように考えることができるようになると、資産と費用というものが
基本的には同じ見方ができることがわかります。
この話は、貸借対照表と損益計算書の関係性の場面で説明します。
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